”Brian Eno指揮のExplosions In The SkyとIsisによる交響曲” という謎のウルトラ形容が躍った1stアルバム『The Four Trees』のリリースから早9年。そして、結成から12年。ついに、ついにCaspian(カスピアン)が来日を果たしました。まさかのTokyo Jupiter Recordsさん招聘にて。そのTokyo JupiterのKimiさんの話によると、1年前から招聘準備を進めてきて実現に至ったそうですが、近くの国まで寄っているのになんで日本だけ来ないんじゃ!!という状況にようやく終止符が打たれたわけです。ちなみにCaspianの面々、この日は当日に日本入りして休む間もなく公演に臨んだ模様。
1stアルバムから聴き続けている身として、またもう次にいつ日本にくるかわからんので彼等の初の日本公演を見るために向かいました。それにしても下北沢は久々に来ましたが、徘徊カメラガールがかなり多かった気がする。シャレオツ下北。
初っ端に登場したのは、東京のインスト・カルテットのArchaique Smile。わたくしとしてはthisquietarmyの来日公演以来1年半ぶりとなる彼等のライヴですが、ドラマーがポイズンさんから新しい人に交代していました。
途中のMCにて「(招聘の)Tokyo Jupiterとはここ数年一緒に仕事してます。大も小もないですけど、これまでで一番大きな仕事です。」と語っていたが、それを務める重み、ステージに立つ緊張と勇気は相当だったと思います。もちろん、Caspianのサポートに気持ちが昂ぶらないわけはなく、いつも以上にエモーショナルな演奏が染みる。毎回聴いてて思うけど、彼等の音色ってやっぱり真摯で清らかで心が洗われる感じがスゴくします。
2013年リリースの1stアルバムの曲はプレイせず、新曲のみで構成するセットリストというのは変わらず。繊細なポストロックの調べから、時にメタル要素を押し出した曲までを展開し、約30分のステージを務めあげました。
2番手にPresence of soulが登場。まずそのえげつない機材の量(特にGtのYoshiさん)が見るものを圧倒し、ERAのスタッフもセッティングが難航していたという(苦笑)。先月にインタビューをさせていただきましたが、この日初めて彼等のライヴが見れます。
光と闇、善と悪の二極化した世界を表現する演奏と映像。スタジオ音源の比ではないことは予想していましたが、極端な重低音の轟きには衝撃が走ります。機材がえげつなければ音もえげつない。2tぐらいの重量物が垂直に落下してきたぐらいのおぞましさ。中盤で演奏された「Teaching of necessary evil」は一音一音が特にヘヴィで闇が深まるというもの。今まで見たライヴでもここまでの重低音が強烈だったことはあったか?と思い出そうとしたほどです。映像も3rdアルバムのジャケの廃墟を巡るようなものからさまざまに変化。モノクロームの景色が脳裏に訴えてきます。
しかしながら闇が支配していく中でも最後に救いが訪れます。ラストは僕自身が待ち望んでいた「Circulation」。Yukiさんの優しい歌声と麗しい鍵盤の旋律を中心に光量と色彩が増加し、これまでの重い空気を一気に塗り替えていきます。映像もカラーの風景に変わり、壮大で美しいラストを彩っていく。曲の終盤は鳥肌モノでPoSの想いが凝縮されて心の芯に響いてきて、素晴らしいなあと素直に思いました。
そして、アー写が幕末へタイムスリップしたインストの志士、OVUM。かつてXTAL RECORDSというところでCaspianとレーベルメイトだったことは、忘れちゃっている人多そう。しかしながら、あのレーベルのおかげでCaspianもOVUMも知れた人間なので(Maybeshewillもそう)、今ではとても感謝しています。
それはさておき、4ヶ月前に拝見したTJLA FEST 2015でのOVUMの快演は記憶に新しいところです。”Metal-oriented Instrumental Rock”と自身で表現した新スタイルに、完全に度肝を抜かれました。彼等にこれまで無かった”ねじ伏せる”という類の強さ、そして力感と躍動感の大幅アップ。あのステージは見たほとんどの人に衝撃を与えていたと思います。
今宵はリリースされたばかりの3曲入り新EP『Nostalgia』の全曲、そして最後に83秒で完結する「Hell Yeah」の4曲を披露。Tokudaさんを中心とした歯切れの良い鋭いリズムに、メタル寄りのリフが乗る。感じるのはやはりねじ伏せる強さであり、バンドの変化を肯定したくなる強さです。冒頭を飾った「Nostalgia」はあまりに強烈で痺れるもの。時にChibaさんがモニターに片足をかけてギターヒーローのように弾いている場面も見られました。とはいえ、OVUM流の情緒があってこそで、巧みに組み合わさる繊細なメロディの使い方は耳に響く。もう本当に今宵のラインナップに彼等がいて良かったと実感するステージでした。
Caspianの登場は21時過ぎ。会場はというと、もはや移動が困難なほどお客さんでいっぱい。「待望の」という言葉だけでは足りないぐらい待っていたバンドですが、期待以上のライヴでした。Mogwai、Explosions In The Skyに続く轟音系インストゥルメンタルとしてThis Will Destroy You(昨年についに初来日)と並んで活動してきたわけですが、世界を魅了してきたその美しい音の渦は体感してみて素晴らしかったです。
2曲目に飛び込んできたまさかの「Malacoda」にブチ上がり、完全に持っていかれます。トリプルギターを中心としたサウンドの構築は音圧合戦とかいう類のものでなく、不思議と心地よさの方が上回る感じ。MogwaiやEITSをライヴで見た時もこんな感じがしたなあと思い出します。長年に渡って培ってきた美しさ、たくましさはやっぱり群を抜いていますし、だからこそ世界中で支持されているのだなと。MCでは日本語を交えながら話す辺りに、彼等の人としての物腰の柔らかさを感じます。背は超高いけど(笑)。
「Hall of the Summer」の躍動、「Gone in Bloom and Bough」のじっくりと魅了する展開、新機軸となった「Arcs of Command」の激しい情熱と嵐のごときサウンド。彼等の音を浴びれる歓びと感動に乾杯的な気分です。そういった心と体の昂ぶりにさらなるご褒美がきます。ラストに演奏した「Sycamore」です。序盤の美しいギターの音色の果てに、後半はステージ5人によるCaspian太鼓謝恩祭で祝福。言葉にならない歓喜の瞬間の連続に、ここにいられる幸せを噛みしめましたとさ。
‐‐‐setlist‐‐‐
01.Fire Made Flesh
02.Malacoda
03.Hall of the Summer
04.Ríoseco
05.Gone in Bloom and Bough
06.Arcs of Command
07.Sycamore
翌々日のワンマン@渋谷O-Nestではアンコールに「Ghosts of the Garden City」~「Some Are White Light」という1st&2ndアルバムからの名曲を立て続けに演奏していたようで俺涙目。2時間もこんな音を浴びれたら幸せでしょうね。そこに居たかった・・・。ちなみに僕が一番好きな曲は初めて彼等を聴いた1stアルバムの1曲目「Moksha」です。
終演後にはCaspianの『Dust and Disquiet』の日本ツアー記念盤を購入。Tシャツやパーカー等は先のアジアツアーですでに完売したとのことでした。
総括すると、Archaique SmileもPresence of SoulもOVUMもリレーで後者にただバトンを渡すだけではなく、そこに必然的な流れを呼び込んだ上でのというのをすごく感じました。それを受けてCaspianで想いも音も爆発したみたいなところがあります。この4組が揃ったからこそ相乗効果でさらに良い公演になったのは間違いないと思います。