FUJI ROCK FESTIVAL ’22(以下フジロック)へ行きました。実に3年ぶり。20年は中止。昨年は参加を見送り。でも、今年は行きました。理由は何だろう。コロナ禍以降2年半ぶりに海外アーティストが見れる出演陣なのか(20年2月末にRussian Circlesをみて以来となります)。それとも、これまで参加してきたからなのか。
自分にとってフジロックは、初めて行った音楽フェスだから特別感があります。最初が2009年で12年まで4年連続で行き、4年空けて16、17、19と参加してきて今回の22で8回目。16年以降は最終日の日曜1日だけ行くというスタイルが定着。
ここ数年はオフィシャルのツアー・バスにて参加。夜行の往復便。しかし、例年に比べて今年は行き便の人数がとても少なかった(帰りはほぼ満席だったけど)。最小人員を割っていたのではないだろうかというぐらい。20人もいたかどうか。相席もせずに2つの席を使えた。そう、毎年わたしは一人で参加しております。
でも、ほとんどが一人参加でカップルやグループで来ている方は3組ぐらいしか見なかった。フジロックは孤独人に錯覚を与えてくれる場所でもある。3か所のPAで休憩と時間調整をしながら、7時過ぎに苗場に着いた。
ピラミッドガーデン付近のツアーバス専用乗降場に降りた瞬間から昂揚感が湧き上がる。3年という空白が余計にそれを増幅させるのか。日常と切り離された場所には来ているが、すでに暑い。山の方に来たというのに、緑の光景が広がっているのに、避暑地でもなんでもなく太陽は容赦なく照り続ける。最高気温は怖くて見れなかった。kiuのレインポンチョを買ったけど、いらねえんじゃ?と思うぐらいの快晴(結果的に雨この日2回降った)
しかし、コロナ禍に突入していろいろとエリアは変わってます。参考までに以下のような違いがある。
場外にあったグッズ売り場はゲート先のイエロークリフという場所へ。朝までにぎわうパレスエリアは無と化していた。変わってる!と現地でその光景を見て痛感するものです。8時過ぎから公式アプリのチェックイン、体温チェック、手荷物検査をパスしてゲートの先へ。
ひとまずグッズ売り場へ。モグワイのTシャツは悪い意味で相変わらずのデザインだったので、エレファントジムのTシャツだけ買った。大きなスクリーンがあるところで休憩する。ここで夜は映画が上映されるとのこと。日陰も無く、直射日光を浴びまくる。水分取ろうが、汗として放出される。早くも泣き言が・・・。
9時過ぎに会場内にイン。この看板を見るとアがる。結局、最強の撮影スポット。
朝イチで入場したてのオアシス・エリア。知り合いのお店でカフェラテを飲む。ちなみに今年は知り合い2人としか話してないし、会話したのは10分も無いぐらい。まさしく孤独フジロック。わたしにとってはそんなもんです。いや、思い出しても3年前も同じ知り合い2,3人しか話してないし、ずっとひとりでいたぞ・・・。
以下、散策の様子を写真にて。
この日は30203歩でした。朝イチで会場の奥まで歩くのが一番心地よい時間だったりする。そして、ドラゴンドラは未だに乗ったことがない状況は続く。
以下からみたアーティストの感想です。こっから文章メイン。
奇妙礼太郎(フィールド・オブ・ヘヴン 11:30~12:20)
ホワイトステージでKroiの高速ビートにノせられてましたけど、切り上げてこちらへ。数曲知ってる程度ですが。7人による小規模なオーケストラっぽい編成でもっと小洒落た雰囲気・・・なのかと思いましたが、そういった質感は保ちつつ、いい意味でロックしてる、迸る熱みたいなのが随所に感じられる。
奇妙礼太郎さんって意外と声を張り上げ、ロックンローラーみたいなノリがあって熱いんですよね。途中で”バーミヤンでウーロン茶”という大人のたしなみというかお茶面な一面というか、新しい呪文を開発したような新曲を披露。ノリとセッションで生まれたような曲っぽいけど、これがなんだか癖になるし、頭の中でその言葉が反芻する。
大声出しちゃダメだけど、ハミングでならコール&レスポンス良くない?ということで、ハミングで一体感を生みだす。なかでも軽やかなグルーヴで開放的な気分にさせられた「たまらない予感」が一番印象に残っています。
鈴木実貴子ズ(ルーキー・ア・ゴー・ゴー 13:10~13:40)
ルーキー・ステージはずっと深夜だったけど、昨年から時間帯が朝~昼に変更されてました。そして、見に行ってびっくりしましたが、苗場食堂ステージとルーキーステージが兼務。かつてよりも大きくなっていますね。
鈴木実貴子ズは同じ名古屋民ということもあって見ました。名前はよく見かけるけど、ちゃんと音源は聴いていない。Vo&アコギ、ドラムというツーピース丸腰スタイル。MCで言ってましたが、バンド名を覚えると同時にメンバー名も覚えられるし、鈴木実貴子と”ズ”担当の男性ドラムでやらしてもらっているそうだ。さすがに笑った。
”今この瞬間に音を掻き鳴らすこと=生きること”みたいなライヴでした。切迫感に満ちていて、エモいとか魂の演奏とかそんな言葉で簡単に片付けてはいけないライヴでもありました。アコギを掻き鳴らし、想いを乗せて声を張り上げる。激情型という言葉は浮かびますが、ズさんがMCやドラムで柔わかく支えている印象がありました。とはいえ、人生の酸いも甘いも詞とギターで説いてくる。その想いと音が伝播して、生きていくことに対して襟を正そうとする気持ちが聴き手に生まれる。
鈴木さんは「1週間前からこのステージで演奏することを想像して、この瞬間しか生きてなくて。どうやった鈴木実貴子ズ?大丈夫やった?」と集まった人に問う。でも、曲の途中で起こった手拍子については「手拍子いらないです」とはっきり言う姿勢もみせた。芯のある表現、それが気迫と共に強く伝わってきたステージでした。
ELEPHANT GYM(レッド・マーキー 14:00~15:00)
台湾のバンドは過去にフジロックで2組見ています。2010年にインスト・ポストロック・バンドの甜梅號/Sugar Plum Ferry。2012年にメタルバンドのCHTHONIC(今ではVoの人が国会議員で、昔からオードリー・タン氏と親交がある)。もはや10年以上前のこと。時が経ちすぎてる・・・。
エレファント・ジムはマスロック系インスト・トリオとしてここ日本でも人気がある。toeやLITEに影響を受けたというし、実際にこの日に演奏された「Spring Rain」は中盤まではtoeやPele辺りの影響を強く感じます。それに加えて女性ベーシスト・KTの強い存在感。タッピングしながら歌うのを笑顔であっさりとこなし、サッポロ黒ラベルで水分補給を続ける。特に2曲目に演奏された「Finger」でその技術の高さが伺えます。でも、お酒の飲み過ぎでスマホをグリーンステージで無くすという、音楽面以外では乱れた面も見せる(笑)。
途中にゲストを迎えて、chilldspotの女性Vo.比喩根さんが「Moonset」と「Shadow」に参加。まだ昼間だが、夜のムードに染まるような心地よいビートと歌声が響き渡り、マスロックというのを忘れかける。また最後の3曲を台湾のブラス隊4名(サックス、トロンボーン、トランペット、フルートだったと思う)と共に演奏して、多彩な音が包みこむ。最後の「Galaxy」は特に素晴らしかったです。
「フェスティバルは平和の象徴です。人生を充実させ、音楽を楽しみ、みんながひとつになれる幸せを思い出させてくれます(中略) 台湾のヘンテコなバンドをフジロックに呼んでくれてありがとう」とGtのTellが日本語で読み上げる。自分で何言ってるかわかってないと妹のKTにツッコまれながら(笑)。それでも丁寧に言葉と音を届ける姿勢にえらく感動してしまった。11月に行われる単独ツアーも行きたくなった。お金!お金欲しい!を叶えてあげる意味でも(笑)。
—setlist—
01. Midway
02. Finger
03. Witches
04. Underwater
05. Moonset
06. Shadow
07. Spring Rain
08. Wings
09. Ocean In The Night
10. Galaxy
トミー富岡(ところ天国 青空寄席 15:10~15:25)
エレファント・ジムが終わり、レッドマーキーの外に出ると雨が降っていた。急いでところ天国に向かって何とか間に合わせる。フジロックに来てトミー富岡氏を見ずして帰れん!ということでモノマネ下ネタ替え歌を堪能。子どもたちが聞いていようと関係ない下ネタ・フルコンボ。パプリカの替え歌は完全にアウトでした。深夜の苗場食堂は時間的に無理だったので今年は見れないかなと思ってましたが、こうして見れて良かったです。終わって500円投げ銭しておきました。
Black Country, New Road(ホワイト・ステージ 16:00~17:00)
ほんの1時間前に雨が10分ほど降り、夕暮れが迫ってきたとはいえ、そんなに涼しくもならずにまだまだ暑い状況は続く。そんな中でUKの6人組、BCNRを見ました。数カ月前にメイン・ヴォーカルが脱退したため、6人編成で再出発を発表したばかり。熱心に聴いてるわけではないんですけど、2ndアルバム『Ants From Up There』は予習していきました・・・っが1曲もやらず。
驚くことに全部新曲で臨んだそう。スタイルも変わっていて、ヴォーカルを何人かで兼任するスタイルへ移行。それぞれが役割に徹しながら、音が戯れ、華やぎのある空間が生み出されている。6人を見ていると大学生の延長上みたいな和気あいあいとした雰囲気が漂っていて、でもその音楽は正直に人々に届くようになっています。Do Make Say Thinkみたいだなとか思いましたが、実際はもっとインディーロック寄りだし、強さと温かみがちょうどよく心の内をほぐしてくれる。
最後は自分達が新しく紡いだストーリーに、ベースの女性(Underworldのカール・ハイドの娘らしい)がもらい泣きしてしまい、みているこっちも胸に響くものがありました。
MOGWAI(レッド・マーキー 20:10~21:10)
小袋氏のライヴ終了後、前方に大挙として押し寄せる轟音ポストロックおじさん&おばさん。既に熾烈な争い。そこに自分も乗り遅れることなく参加したものの、あっさりと敗れる。しかし、前方の中央3列目辺りを確保して待機しました。
モグワイは2011年以来の出演だという(もっと出てる気がするが、通算6回目)。その時は一番大きいグリーン・ステージで演奏していた。今回は初陣を飾った2000年以来、22年ぶりにレッド・マーキーでの演奏。著者自身はメタモルフォーゼ2010の他に名古屋や東京で単独公演をみているし、最後にみたのがHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERというサマソニ’17の土曜日から日曜日にかけての深夜に開催されたもので5年前。ちなみにフジロックでちゃんと見るのは初めてです。
セットとしては21年発表の最新作『As The Love Continues』が5曲と半数をしめる計10曲。古の轟音ポストロックは少なかった。しかし、モグワイは天邪鬼だし、変化し続けているバンド。某日本の大御所の名前をもじった「Ritchie Sacramento」ではスチュワートがヴォーカルを取り、「Ceiling Granny」は軽快さと明るい轟音の両輪で昂ぶりをもたらしてくる。ラスト前の「Remurdered」ではデジタルな表層と音圧が重なって、ジリジリと鼓膜を襲う。
序盤の「 I’m Jim Morrison, I’m Dead」は感動的だった。でも「Helicon pt1」はやってくれよという願いは通じなかった(汗)。ラストを飾ったのが代名詞の「Mogwai Fear Satan」。いつもあんなにタメてたっけ?というほどに音量を落とし、静から動への転換。轟音が全身を襲う。両手を高く広げ、この前に最後を迎えた世界陸上の某俳優による「地球に生まれて良かったー」の声が心の中で上がる(実際に会場ではダメだけど多くの歓声があがっていた)。モグワイの聖域。ドデカイ音は正義。心と身体は無に還っていくようだった。
しかし、60分は短い。90分で体感したかったのが本音です。終演後にアンコールを求める拍手が鳴り止まなかったが、進行に影響出るからさすがに無かった。次々と消されていくアンプの電源。人々は諦めてその場を去っていった。
—setlist—
01. To the Bin My Friend, Tonight We Vacate Earth
02. I’m Jim Morrison, I’m Dead
03. Dry Fantasy
04. Hunted by a Freak
05. How to Be a Werewolf
06. Ceiling Granny
07. Ritchie Sacramento
08. Drive the Nail
09. Remurdered
10. Mogwai Fear Satan
モグワイのステージを終えた後は、他のアーティストを見る気もなんだか無くなり、朝イチから動き回ってたのもあってゆっくりとしてました。23時ぐらいから急に雨が降り始めましたが、最後はピラミッド・ガーデンでテリー・ライリー御大を40分ほど見て帰路につきました。
『”いつもの”フジロック』は声高に叫ばれていました。厳戒態勢だった昨年は参加してないので、比べられませんが前進しているという感じでしょうか。主催者発表によると7月31日の来場者は2万人だったとのこと。19年の半分ぐらいだから快適ではありました。適度に距離感があるし、詰まっている感はなかった。しかし、暑すぎるフジロックもまた良いような悪いような。土砂降りも大変ですが。
また来年も参加したいものです。