The End of the Ring Wars(1998)
90’s EMOバンドとしては、数少ない現在進行形バンドであるThe Appleseed Castの記念すべき1stアルバム。インディ系御用達レーベルである、Deep Elm Recordsから1998年にリリースされています。っていうか90年代EMO界隈の短命さは残念だけど、それが評価に繋がっている側面もありますし。
透き通るような美しい旋律で引き込み、突如として爆発するエモーショナルな歌唱で持っていく#1「Marigold & Patchwork」からこれだよ!これ!!と思わず昂ぶってしまうエモぶりで最高です。聴いた印象では、Mineralの1stアルバム『Power Of Failing』に近い感触を持っているように思うし、根っこの部分にはハードコアであるということも十分に伝わってきます。ディストーション・ギターを掻き鳴らしての疾走#2「Antihero」、当時のエモ界の雰囲気が伝わる#7「The Last Ring」などの攻めの曲をもちろん用意。
しかしながら、彼等の場合はもう少しポストロック方面に沿った叙情的な音作りなのが特徴的。鮮やかな花弁をつけたかのようにメロディアスな曲調を丁寧に綴っており、その中でも特に#5「Stars」が秀逸。藍色の夜を彩る情熱的なサックスとピアノの音色に、感傷的な歌声が重なっていくことで豊かなスケールを表現。
90’s EMOでありながらも音響派と呼ばれる所以は、端整な音配置と空間の彩り方にあるかと思います。最終曲の#11「Untitled 1/2」もまた、サックスがムーディーに物語性を高めており、胸が締め付けられるような感動的なラストが待っている。
聴いていると、90年代末期という時代性も伝わってくるのだが、やはりこの頃のエモ界というのはどこか独特の感傷を持っているからでしょうか。1stアルバムにして最高傑作の評価も頷けます。あと、飾っておきたくなるジャケットが至高ですよね。