1993年にアメリカのコロラド州デンバーで結成された4人組バンド。エモ黎明期に活躍し、隠れたレジェンドとして後続のバンドに影響を与え続けている。
1994年に6曲位入りのEPを発表し、1995年にはJimmy Eat WorldやBoys Lifeとのスプリット作をリリース。1997年に唯一のフルアルバムを残しましたが、バンドは解散。その後は2007年、2014年と瞬間的な再結成を果たしています。
本記事では2作品について書いています。
アルバム紹介
First LP (1994)
1st EP。全6曲約28分収録。1994年にFreewill Recordsからリリース。2013年にMagic Bullet Recordsからリイシューされています。次作(通称:Stereo)がCFDを代表する作品として名高いですが、本作における力強さと繊細さ、初期衝動もまた聴き手を惹きつける魅力あるものです。
#1「Turn」の冒頭での高鳴り続けるギターに”予感”を覚え、バーストするサウンドと感情的なヴォーカルに、確かな昂揚感が湧き上がる。ハードコア~オルタナ寄りの厚みのある音、勢いが重視されている印象は強いですが、その狭間でメロディが揺れ、哀愁が押し寄せる。
次作ほどに洗練はされていない。ですが、重なり合い渦巻くギター、飛び道具のような終盤の絶叫、そして荒々しい疾走感を持つ#3「Long Out」が存在するのが本作の強みといえます。
#2「Dyed On 8」や#4「Lot」における静と動のバランス感覚は以降でさらなる追求がなされますが、CFD節は確立されている。パワフルな情熱がまき散らされる#6「Dirt」は必聴。
同じ年にSunny Day Real Estateの1st『Diary』が発売されていますが、CFDの本作は隠れさせてはいけない作品のひとつです。
Christie Front Drive(1997)
1997年にCaulfield Recordsからリリースした唯一のフルアルバム。通称”Stereo”と呼ばれています。全10曲約32分収録。90’s EMOに分類されるバンドの中でも、飛び抜けた美エモ・バンドとしてその名を馳せた彼等。
ピアノを交えながら丹念に織り上げ、静寂と轟音を鬩ぎ合わせながらエモーションを高めていく#1「Saturday」からして胸がギュッと締め付けられます。
ゆったりとしたミドルテンポに、透明感のあるアルペジオや枯れ気味の歌声を乗せて感情的に仕上げる手法は、ここでしっかりと形になっている。1st LPと比べて疾走感やラウドなサウンドは抑えめ。
静と動が丁寧にコントロールされ、じわじわと心の内側に浸透していく感じが強まりました。渋い歌心とメロディを核にして、徹底的に叙情的サウンドを磨いています。#4「November」にそれは特に当てはまる
それに蒼いフィーリングを持ったエモ特有の切なさと刹那さがあります。哀愁たっぷりの#7「About Two Days」を聴いてると、青春時代が走馬灯のように駆け抜けていくかのよう。
10曲中4曲もインタールードがあるので実質的には6曲ですが、実験的ともいえる音響的な間の繋ぎ方も実践していて、当時から先を行っていた事を伺わせます。
後のポストロック的な感性やインディーロック風情もあり。エモーショナルに爆発する#9「Seven Day Candle」はもう完璧。
Mineralの大名盤『Endserenading』にも繋がっていく(と思われる)であろう本作は、美エモの先駆者としての実力を十二分に知らしめるものです。90’s EMO重要作のひとつ。