【アルバム紹介】City of Caterpillar、USヴァージニア州のスクリーモ代表格

 2000年にアメリカ・ヴァージニア州リッチモンドで結成されたポストハードコア・バンド。PG.99のメンバーを擁し、USポストハードコア/スクリーモ界隈で話題のバンドとなる。

 02年にリリースした1stアルバム『City of Caterpillar』はシーンにとって重要な一枚と評価され続ける作品です。03年にはenvy招聘のもとで来日ツアーを行いました。しかし、3年という短い期間で燃え尽きるように解散してしまう。

 2016年に活動再開を発表し、アメリカ国内を廻る。17年にフェスを含めたヨーロッパ・ツアーを敢行。その最中にあったチェコのFluff Festにてheaven in her armsと親交を深め、翌18年4~5月の再来日ツアーへと繋がっています(わたしは名古屋公演へ行きました)。同タイミングで3LAからキャリアを総括する2枚組CD『Complete Discography』をリリースしました。

 2022年9月末にRelapseから20年ぶりとなる2ndアルバム『Mystic Sisters』を発表。本記事は2枚のフルアルバムについて書いています。

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アルバム紹介

City of Caterpillar(2002)

 1stアルバム。全7曲約44分収録。当時に唯一残したフルアルバムにして、00年代からのポストハードコア/スクリーモ(海外でいわれるリアル・スクリーモ、Skramzを指す)に大きな影響を与えたと言われています。

 ここに分類されるバンドは短尺で畳みかけるスタイルが主流とは思いますが、CoCは8~9分の長尺曲が3曲あることからもわかる通りに、静と動のダイナミクスを表現しています。

 激烈なハードコアとして秒でジェット噴射するラッシュもあれば、制御不能のまま叫び倒し、冷涼としたアルペジオの反復や轟音の圧で屈服させることもある。

 いわゆるポスト系として定型化する前の不協和な集合体の切れ味が存在する一方で、暗鬱でシネマティックな表現にも長けている。前面にはenvyやSleepytime Trioがいるとしても、その奥には当時聴いていたというGY!BEやMogwai、The Cureといったバンドが控えているのが頷けます。

 それでも、変化球なのに剛速球のように思える体感は、その圧倒的な熱量と即効性のなせる技でしょうか。wikipediaによると、”ポストスクリーモ”と言われたりもするとか。

 Treble Zineが2022年10月に発表した”The 50 Best Hardcore Albums of the 21st Century“にて第38位にランクイン。MogwaiやSlintのようなポストロックとクラシックなSkramzの融合と評される。

 なお、本作を含む一連の作品が2018年の来日直前に3LAから2枚組『Complete Discography』としてリリース。リマスター&歌詞対訳付きなので購入する場合はそちらをオススメします。

メインアーティスト:City of Caterpillar
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Mystic Sisters(2022)

 2ndアルバム。全8曲約45分収録。2016年からライヴ活動は再開していたものの、本格的なリリースは約20年ぶり。ミックスとマスタリングはJack Shirleyが担当。

 全8曲中半数が6分を超える尺、不穏な緊張感とダイナミクスの妙、刹那の爆発。20年前の苛烈さは無いにしても、変わるものと変わらないものの狭間で思索と表現に磨きをかけています。

 もともとスクリーモを基本軸に他ジャンルを接続することで、拡がりあるサウンドスケープを生み出すことには定評がありました。それでいて本作は国内盤の解説にある通りに、These Arms Are Snakesのような変則性とユニークさが感じられます。

 以前から静と動の単純往復ではないですが、全景が見通せない複雑さを持ちながらもムードを重視。アンビエントの増加、叫ぶよりも”歌う”に向かい、少しのヴァイオリンや電子音も加えています。

 暗く静かなトーンから混沌を極めていく#4「Mystic Sisters」やうねるグルーヴとコーラスワークを聴かせる#8「Ascension Theft」は実験の趣が強い。本作は前作以上に何が飛び出してくるのかわからない。

 それでも絶えず変化をする構造を用いる中で、抑制の効いた作品というのが一番の特徴かもしれません。往年のファンが喜ぶことを多数投下するわけでもなく、メロディックになるわけでもなく、20年の先に進化と開拓の姿勢を示している。

 本作は国内盤解説によると21年11月に急逝したPlanes For Mistaken Starsのギャレッド・オドネルに捧げられています。

アーティスト:City of Caterpillar
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