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アルバム紹介
Melancholie(2008)
ドイツのGeorg Borner氏の独りアンビエント・ブラックメタル・プロジェクトの1stフルアルバム。体温が奪われ、身体が凍りつく悲愴な音世界。音が鳴った瞬間から周りが零下へと冷え込み、大地だけでなく空気までも氷で覆っていくかのようです。
トレモロとキーボードによって背筋の凍るような冷たさが醸しだされ、そこへ内なる狂気を開放した怒涛のブラストビートと狂おしい絶叫が入り込み、ブラックメタル特有の暗黒色を付け加えていきます。ジャケ通りのぼやけた灰色、イメージはそれでしょうか。
本作でも随一のインパクトを残す#1は無情な吹雪そのもの。絶え間なく流れる絶対零度の空気と憂鬱は如何ともしがたく、聴き終わった後は虚無感だけが残る。その後は哀切と叙情といった色合いが強くなり、聴き進めるごとに切なさに精神が壊れていく。ただ、そこに温もりはありません。
冷たい激情が渦巻いており、破滅的。全く救いようが無い。しかしながら、手触りとしては殺傷力よりもじわじわと効いてくるような感じが強く、メランコリックな甘美さも携えているのが独特な味となっている。
#3や#6といったアンビエント・ナンバーが加わることで神秘性や浮遊感を晒しているのも特徴。他のブラックメタルとは一線を画す。もろバンド名通りの凍えるような世界とタイトル通りの美しいメランコリーに彩られた屈指の作品、そう表現しても過言ではないかと。
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