バンクーバー出身のシンガー・ソングライター、Dan Bejarが90年代に始動したソロプロジェクト。本記事は9thアルバム『Kaputt』について書いています。
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アルバム紹介
Kaputt(2011)
9thアルバム。全9曲50分収録。過去作は全て未聴ですが、これが実に心のツボを突いてくる作品で気に入りました。
AORに接近する風にそよぐような柔らかい歌声に、シンセ・ポップ~最近のチルウェイヴにも通ずる心地よい解脱感、そしてジャズ/フュージョンが溶け合い、親しみやすいサウンドを生み出します。
スティーリー・ダンやロキシー・ミュージック辺りが引き合いに出されているけど、よりモダンにして渋い躍動感やふわっとした浮遊感をプラス。インディーロックという枠組みを越えた懐の深さを示しています。
組み立て・展開はとてもスムーズで、さらにアダルトチックなドラマ性やほのかなノスタルジーをきっちりと盛り込んでいるので涙腺がゆるみます。
そうしたすみずみまで神経の行き渡ったメロウな構築ぶりに耽溺していると、情熱的なサックスが火を吹き、ソウルフルな女性ヴォーカルがまた切ない哀愁を書き加えていく。
とろけるような#1から始まって、本作を象徴するようなアダルトなムードと芳醇な音色が溶け合う#6、柔らかく壮大なエンディングを紡ぐ10分超の#9と佳曲が並ぶ。
豊かな筆使い、温かみのある歌心、そして知的な構築力で、絶妙なポップさと懐かしさを持った音楽へと飛躍した本作。聴き手の胸を優しく打つ事は間違いない逸品です。
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