【作品紹介】ef、スウェーデンのオーケストラル歌ものポストロック

 スウェーデン・ヨーテボリを拠点に活動するポストロック5人組(同名のバンドが他にもいますが、本記事で扱うのはスウェーデンのefです。)。2003年に結成。90年代後半~00年代初頭のポストロックに影響を受けたサウンドを軸とする中でストリングスやホーン、アコーディオン、メロディカ、グロッケンシュピールといった多彩な楽器をオーケストラ風味に混交。またインディーロック風味の歌ものを融合させていることが特徴。

 2006年に発表された1stアルバム『Give Me Beauty… Or Give Me Death!』は00年代ポストロックの隠れた名盤として評価されている作品。当時の日本では2010年に発表された3rdアルバム『Mourning golden morning』までは国内盤がリリースされていました。ただ、来日までには至ってない記憶(間違ってたらご指摘ください)。

 2018年のPelagic Festを境に活動休止状態となっていましたが、2021年に再起動。2022年にPelagic Recordsから9年ぶりとなる5thアルバム『We salute you, you and you!』をリリース。Pelagic Fest、Portals Festival、Dunk!Festといったヨーロッパのポスト系フェスティバルにも出演を果たしている。

 本記事はこれまでに発表されているフルアルバム5作品について書いています。

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作品紹介

Give Me Beauty… Or Give Me Death!(2006)

 1stアルバム。全8曲約63分収録(本記事は25年11月にPelagic Recordsからリリースされた20周年記念盤を基に書いています(この再発がPelagic Recordsの通算300枚目となるリリース)。

 ”美をください、あるいは死をください”となんとも観念的なタイトルですが、歌と多種楽器のハーモニーを堪能できること。それがefの肝となる部分だと思っています。基本的には轟音系ポストロックといわれる骨格の中で大胆なオーケストラ・アレンジが入り、インディーロックに通ずる歌ものとしての近寄りやすさが特徴です。

 導入部となる#1「Ett」から丁寧な構築を試みる中で徐々に盛り上がっていき、ホーンセクションとトレモロ・ギターと重なり合うクライマックスへと向かう。続く#2「Misinform the Uninformed」は躍動感と色彩鮮やかなサウンドを土台に、男性ファルセットによる湿っぽさと合唱団にも似たコーラスの昂揚感が対比される。Sigur Rósに近い清廉さや美に対しての献身を多種楽器で行っているものの、神聖なムードよりも肌や心に優しい親密さに惹かれます。付け加えるならこの1stアルバムは闇堕ちしない光のポストロック感が強い印象。

 本作には10分を超える楽曲が3曲収録されていますが、なかでも#4「Hello Scotland」はバンドの代表曲として名高い。ホーンやストリングスに加え、グロッケン、ピアノ、それに男女ヴォーカルが仲睦まじげに手を取り合う。豪勢な音の盛り付け。そして強弱のクレッシェンドが完璧な調和を成しています。

 轟音系ポストロックのお手本的な展開を繰り広げる約15分の#7「Tomorrow My Friend…」は、20周年記念盤では1分長くなっており、激情系ハードコアにも通ずるスクリーム・パートの追加する驚きを用意。そして最終曲#8「…We’ll Meet in the End」の終盤にて祝祭的なホーンからしっとりとしたピアノの音色で幕を閉じる。1stアルバムにしてefの代表作といって差し支えない作品。人生の経験値で補完された20周年記念盤をぜひチェックしてほしいものです。ちなみに『ポストロック・ディスク・ガイド』にも掲載されています(P122)。

efの物語は主に友達、あるいは家族として、一緒にいることについてです。曲は失恋、希望に満ちた変化、季節の移り変わり、それに伴う気分や精神的な病について歌っています。efに何か意図があったわけではありません。バンドを使って政治的な見解やメッセージを広め、人々に影響を与えようとしたこともありません。efは人々の心の琴線に触れる音楽の場であり続けたいのです

ef『Give me Beauty… or Give me Death! (20th anniversary)』Informationより
メインアーティスト:ef
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I am responsible(2008)

 2ndアルバム。全6曲約57分収録。プロデュースは同郷のエレクトロニカ・アーティストのPatrik Torsson。2012年にリミックス/リマスター版が発売されており、担当したのはMagnus Lindberg(Cult of Luna)。ちなみに前作と本作はInpartmentから国内盤がリリースされています。

 Pretty Noiseのインタビューを参照するとefが主に影響を受けた5つのアーティストは、Godspeed You! Black Emperor、Do Make Say Think、Mogwai、Cult of Luna、Sigur Rós。付け加えるならExplosions In The Skyもおそらく含まれるレベルのアーティストでしょう(2022年のSounds VeganのインタビューではEITSに加え、初期にはLoghの影響もあったと語っている)。

 本作を前作と比較するならば、明るい雰囲気や躍動感は少し控えめになった印象。ホーンの音色を引き連れて朗らかなムードを紡ぐ#2「Två」を序盤に置くものの、以降は明暗が交互に顔を出すような感じを受けます。また歌で引き込もうとするパートは減り、ストリングスやホーンもバンドサウンドの補助輪程度の扱いに留めている。

 静と動のダイナミクスには引き続き重点が置かれており、約16分30秒を数える大曲#3「Bear」と#4「Thrills」には対比と調和の美学を堪能できる仕上がり。また#3「Bear」にはコロンバイン高校銃乱射事件の音声が用いられているようで(参照:Bandcamp)、本作においてはスピーチサンプルの使用がトピックのひとつでしょう。ただし、efは政治的なメッセージを発するよりも感情を優先して楽曲制作していることを留意しておく必要があります。

 ぶっちゃけるとefのカタログでは影の薄い作品ではあるのは事実。ですが、侘し気なギターフレーズから始まり、お約束のような麗しき轟音の大団円へと導かれる#6「A Tailpiece」は、至福のひとときを味わえる楽曲かと思います。

メインアーティスト:ef
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Mourning golden morning(2010)

 3rdアルバム。全8曲約58分収録。現状では最後の国内盤リリース(亡きXTAL Recordsより)。Magnus Lindberg (Cult of Luna)がミックスやマスタリングのみならず、プロデュースも兼任しています。

 amazonの商品説明欄に”本作は、前回より少し年を重ねた数人の仲間が、言葉ではなく音で感情を探求し解放しながら、最小限の言葉で壮大な物語を紡ごうとした結果だ。これまでで最も集中し、自分たちらしさに忠実な作品だと感じている“とバンドの声明が載っている。

 本作は5→3人編成となって制作された作品ですが、人数減によるef特有のダイナミクスや多種楽器を用いた豊かさは損なわれていません。実質のオープニング曲#2「Sons of Ghosts」からピアノやストリングスを絡ませて優雅に駆け上がり、男女ヴォーカルを中心とした繊細な面を盛り込み、ホーンを中心とした晴れやかなクライマックスへと繋がっていく。その様はタイトルの”黄金の朝”を奏でるかのようです。

 しかしながら、光輝に満ちているのはこの曲ぐらい。行進曲風のドラミングと激しいギターの主張が印象的な#3「K-141 KYPCK」のような轟音系ポストロックもあれば、Hammockやepic45辺りを思い出す郷愁がにじみ出る#5「Fyra」もあり。efのナイーヴさ、激しさ、麗しさ。それらを混交しながら美しい楽曲へと昇華しています。

 また前述したように歌が入ってる曲が最も少ない作品でもあります。そんな中で9分超の#4「Longing For Colors」は男女ゲスト・ヴォーカルを起用。、Rebecka Mariaによる歌声をフィーチャした前半から、しんみりと歓喜の爆発を交互に渡り歩く構成がお見事です。

メインアーティスト:ef
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Ceremonies(2013)

 4thアルバム。全8曲約61分収録。3→5人体制に再び戻っての作品となります。Echoes And Dustのインタビューによると、”新たに2人が参加したことで曲作りの考え方が変わった。ヴォーカルを増やしてメロディやアレンジも充実させ、よりポップな方向へと進んだ“と語っている。

 曲が長いのは相変わらず(1曲平均7分超え)。ですが、その言葉通りに1stに次いで入りやすいアルバムだと感じます。なめらかなピアノの旋律から始まる#1「Bells, Bleed & Bloom」からコーラスや多種楽器との共同作業で、華やかな時間を提供。ハーモニーの宝石箱や!と思わず言ってしまいそうになるぐらいです。

 本作最長となる12分の#2「Yield, Heart. Yeld!」の終盤におけるギターとグロッケンシュのユニゾン、そこに絡んでいくストリングス、ラストには勇壮な管楽器が鳴り響く。世界を色彩豊かに満たしていく序盤2曲に対し、ポップを遮るように#3「Lake Vaettern」では、彼らがフェイバリットにあげるCult of Lunaが憑依する場面が散聴されたりするのはおもしろいところ。

 先行EPから引き続き収録された#5「Delusions of Grandeur」はオーケストラル風味+歌入りのMONOといった趣を晒し、本編終曲の#7「Thee Barren Soil Of Messaure」においてはプログラミングビートを交えながらピアノを中心にしっとりと結んでいく。前述した発言ほどポップであるとは感じないものの、心を照らしてくれる温かさと輝きを持つ作品となっています。

メインアーティスト:eF
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We salute you, you and you! (2022)

 5thアルバム。全7曲約44分収録。Tiny Fingersとのスプリット作『Vayu』を2016年に発表していますが、フルアルバムは実に9年ぶり(仕事や家庭の影響で2018年から活動休止していたことが影響している)。4人編成での制作となりましたが、リリース後にまた5人編成になっている。発売はPelagic Recordsから。”今回のアルバムでは、よりダイレクトで一貫性のあるサウンドを目指した“とPelagic Recordsのinformationに掲載されています。

 長期の休止期間を挟んでいますが、ポストロック+オーケストラ+歌による魔法は、活動20年に及んだその効力を失っていません。冒頭を飾る#1「Moments of Momentum」からefに求めるだろう総力戦のお約束と構築美が4分の中に詰め込まれており、待ったかいがあったと思わせるものです。

 これまでとの違いを述べると、歴代のフルアルバムで収録時間が最も短く、10分以上の曲が無いこと(9分台は2曲ありますが)。またメイン使用ではないものの、スクリームがポイントで入っていることが挙げられる。これに関してはメンバーのほとんどが若かりしころにハードコア・バンドをやっていて、その精神が心と体に残っているからじゃないかとSounds Veganのインタビューで答えています。

 そんな本作を象徴する楽曲として挙げられるのは、嵐の海に浮かぶ木造船をイメージして制作されたという#3「Hymn of…」。合唱やオーケストラで紡ぐ穏やかさ、トレモロギターを中心とした荒れ狂う様まで変わりゆく海の姿が描かれる。この曲にはかつてなく重くダークなタッチを盛り込む中で、ラスト付近で放たれるスクリームは悲痛な訴えのように刺さります。ちょうどアルバム・ジャケットに近い色味の暗濁を併せ持っている。

 少女の語りから始まる#6「Apricity」の方が讃美歌というタイトルにふさわしいのではないかと思えるぐらいに、後半はハーモニーの麗しさが引き立つ。締めくくりの#7「Chambers」は、ノーベル文学賞を受賞したペール・ラーゲルクヴィストが1944年に発表した『The Dwarf』に影響を受け(参照:Sounds Veganのインタビュー)、その困難な生の物語を大きな落差を持ったサウンドで表現している。9年をかけた総決算ではなく、全てを受け止めた上で影の部分へより踏み込んだ作品へと昇華。新たな一面を聴かせる意欲作です。

メインアーティスト:ef
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プレイリスト

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