アイルランド・ウィックローのインストゥルメンタル・ロック4人組。2009年に1st EPをtoe主催のレーベルから発売し、2009年には船で何十日も懸けて日本にやってきて、来日公演を敢行。2010年には1stフルアルバム『We’ve Been Talking』を発表しています。
最終的には2016年まで活動を続け、3枚のフルアルバムをリリースしました。本記事は初期2作品について書いています。
アルバム紹介
Alpha Waves(2008)
1st EP。全5曲約36分収録。国内盤は2009年初頭にtoeのレーベルから発売しています。ギター2本、ベース、ドラムというシンプルな編成で、音楽性もtoeやPeleに系譜する柔と剛を兼ね備えたインスト・ロックです。
クリーントーンのアルペジオやタッピングを用いて鮮やかに展開。リズム隊の歯切れ良く小気味よい進行もしなやかで風通しがよくて、伸びやかで躍動感があります。爽やかさと熱気、それが両立しているのはEnemiesの特徴。
ミニマル・ループ的手法で快感を引き出していく巧さもあれば、整備された静・動の爆発までも手中に収めている。それにマスロックの複雑さが煌くところもある。
そんな中でも、クリアなサウンドから荒々しい轟音へと発展して行くポストロックの王道を体現した#1、小気味よい単音ギターの絡み合いから、木漏れ日のような柔らかなベールが包み込む#5の2曲が本作では抜きん出ています。
toe好きにはもろストライクな感じなので、オススメです。toeの山嵜氏に「激しく嫉妬する」と言わしめるエネミーズ、先々が楽しみな存在。
We’ve Been Talking(2010)
1stフルアルバム。全9曲約39分収録。2009年に初来日ツアーを経験済み。そういった経験値を積んだ中で制作された本作ですが、サウンドの大筋は前作から変化はないです。
メロディアス~豪胆なツインギターが小刻みに絡み合いながら音符を豊かに振りまき、主旋律に肉薄するグルーヴィなベース、小技も事細かにいれるドラムが互いに支えあいながらエモーショナルなインストを奏でている。
前に表現したように、toe直系のインスト。本作でより磨きがかった部分といえば、構築の妙とメリハリの部分。Don Caballeroを思わせる金属的で無機質な響きが少し目立ちますが、全体的に滑らかかつシャープに展開が引き締められている。
また前作よりも楽曲が短時間で完結していることからも、静・動の小気味よいメリハリと焦点を定めたことが伺えるはずだ。しかし、緻密でストイックでありながら、頭でっかちなイメージは浮かばず。
カラっとした爽快さが感じられます。それはひとえに流麗な展開もそうだが、メロディの説得力にある。アイルランドらしい冷ややかさも内包したメロディの質感が、どことなく高潔で無垢な色を放っているし、艶やかな叙情性がリリカルな歌心を楽曲に宿している。
新たに採用されたツインドラムというアイデアも良いアクセントになっているし、タッピングのキメっぷりや轟音が召還する嵐も威力十分。
テクニカルなギターの絡み合いから始まって全体を飲み込む轟音へと鮮やかに繋げていく#2、透明感ある旋律の反復から咽び泣く音の雪崩が強烈な#9など注目曲多し。確かな説得力が備わっています。
Embark, Embrace(2013)
2ndアルバム。
Valuables(2016)
3rdアルバム。