2019年から活動するLAのドゥームゲイズ3人組。自ら”Fairy Doom”と名乗り、暗鬱なドゥームにポストロック/シューゲイザーの雰囲気をミックスさせたスタイルで人気を得ており、Spotifyの月間リスナー数は17万人を誇る(執筆時:2024年8月現在)。2022年に発表した1st『Remnants of the Vessel』が好評。
本記事は1stアルバム『Remnants of the Vessel』について書いています。
アルバム紹介
Remnants of the Vessel(2022)
1stアルバム。全10曲約50分収録。”フェアリー・ドゥーム”を自称する当時は4人組のデビュー作。しかしながらフェアリーと言うものの、妖精がお花畑で戯れている雰囲気とは程遠いです。
Electric WizardやNeurosis、Chelsea Wolfe、King Woman辺りが混成したような陰りと煙たさがサウンドの根幹にあり、むしろ魔女的なホラーやオカルト感の方が強い。
ファズ・ギターがもたらすくぐもりから夢見心地のクリーントーンを要所に用い、ヴォーカルは優しい子守歌から人間であることを忘れたかのようなケダモノの叫びまでを響かせます。ゆっくりといきわたる狂気と官能に支配されていくようであり、おぞましくもその深淵を覗きたくなる魔性は魅力的。
またBrooklynVeganにて本作の全曲解説を行っていますが、曲単位でバベルの塔の神話、1972年の日本アニメ映画『哀しみのベラドンナ』などさまざまな切り口を設けながら、”愛憎”というテーマを描いていることが伺えます。
ロマンチックな情緒とドゥームの暗鬱が交互に現れる#2「Echolalia」からストリングスを用いたメランコリックな葬送#10「Saturn Devouring His Son」まで。妖精が魔法をかけたりしないが、悪夢にはきっちりとうなされる曲を揃えている。
なお、本作はBandcampによる”Blissful Noise, Bad Vibes: A Doomgaze Primer“というドゥームゲイズ入門10選の1作品に選ばれています。とはいえドゥームゲイズのドゥーム成分強め。