UKのポストブラックメタル・バンド。2006年結成。Alcest、Amesoeursと並んでポストブラックメタルという言葉が無い時代から活躍するバンドのひとつ。イングランド東部のウォッシュ湾の沿岸にある昔の湿地帯(The Fens)がバンド名の由来。
現在までに6枚のフルアルバムをリリース。精力的な活動は続きます。
本記事では初期2作品『The Malediction Fields』と『Epoch』について書いています。
アルバム紹介
The Malediction Fields(2009)
1stフルアルバム。全7曲約58分収録。ポストブラック系列で初期にあたるバンドのひとつ。
Fenを初めて耳にした時はWolves In The Throne Roomを聴いた時と同じ衝撃を受けました。WITTRはブラックの強烈な部分を基本軸に静と動を生かした壮大かつドラマティックな感じ。
対して、Fenは薄いもやがかかったかのような幻想性とノスタルジックな叙情性の抽出に重きに置いているような印象。ヴォーカルこそ禍々しい邪気を放出するブラックですが、その割に曲調に合わせてしっとりと歌い上げる部分もはまっています。
透明感のあるサウンドスケープとドラマ性があり、 随所ではブラストの炸裂を合図に凶暴なアグレッションで畳み掛ける部分もあり、たおやかな静パートと燃え盛る炎の如し激パートのダイレクトな交錯には身震いを覚えてしまうほど。
IsisやNeurosis等のスラッジ/ポストメタル勢に影響を受けたというのも納得の奥行きと広がりも凄い。あくまでメロディを重視した塩梅。
ですが、谷底に突き落とされるような残酷感から天へと召すようないたわりで魂を抜き取ることまでどっぷりと浸かれる作品でしょう。魂にまで響く慟哭にやられました。
Epoch(2011)
2ndアルバム。全8曲約64分収録。Alcest、Amesoeursと並んでこのジャンルの雛形の造形に大いに貢献した存在ですが、本作ではさらに叙情感覚が強まっています。
全体を柔らかく包む淡いクリーン・ギターにアルペジオ、Neigeを思わせるウィスパー・ヴォイスも絡めるなどしたクリーン・パートが温かみのある詩情を忍ばせます。
また、冷たくも神秘的なオーラを加えるシンセの意匠、ストリングスっぽいアレンジも導入してのスケール感の助長が前作以上に堂に入っており、セピア色の哀愁と繊細な脆さが常に作品を通底。
ポストロック/シューゲイズ的アプローチを増やすことで、よりメランコリックに美しく研磨されている。
しかし、ブラストビートを合図に激走するドラムに、精神的にキツイ邪悪な絶叫が、激烈なアグレッションをしっかりと支えます。陰惨な景色を描き出す暴虐パート、前述した神秘性も湛えた美麗パートの対比が実に巧く手を取り合っている。
天上界から奈落への極端すぎる転換は、間違いなくFenの夢幻なる世界の奥行きを一層深いものとしています。前作から順当なアップデートのもとで、美しい世界観を表出してみせた完成度の高い一枚。