2018年後半から2019年初頭から活動するUKシェフィールドのポストハードコア4人組。Deafheaven、Oathbreaker、Amenraなどのバンドへの共通の愛情からバンドを結成(HEAVY MUSIC HQインタビューより)。
本記事は2024年11月にリリースされた1stアルバム『Erosion / Avulsion』について書いています。
作品紹介
Erosion / Avulsion(2024)
1stアルバム。全8曲約41分収録。定評のあるChurch Road Recordsから期待の新鋭が登場です。録音とミックスをPijnのJoe Claytonが担当。HEAVY MUSIC HQインタビューで詳細を語っていますが、”全体的にこれは間違いなくポストハードコアです。私たちはポストブラックメタル・バンドとしてスタートしたので、今でもその要素は残っていますが、過去の作品に比べるとメロディやテクスチャーも大幅に増えています”とのこと。
セルフタイトルを冠した前作EPのリリースから4年が経ち、創設者であるヴォーカリストが脱退。そのためにバンドとして軌道を変えざるを得ない状況だったことが伺えます。
本作では楽器隊2名がヴォーカルを兼務する形に着地。ポストブラック寄りの声質だった前任から、ハードコアらしい中域の唸り声とSSW系の伸びやかに歌い上げる場面を2人で切り盛りしています。それに対してサウンドは重厚と叙情を行き交うポストハードコアが下地になっている。
ブラストビートもたまには出てくるとはいえ、6分前後を中心とした尺の中をミドルテンポでじわじわと展開していく手法が目立つ。ポストロックやシューゲイザーのタッチを取り込んで美麗かつ軽やかに空間を彩ることもあれば、スラッジメタルの重苦しさを推進する時もあり、アコースティックの枯れた瞬間も訪れる。そうした多様なガッチャンコを結実したうえで1曲の中でドラマ性を高めに高めています。
再びインタビューから引用すると”タイトルはある種の変化は、それが起こっていることさえ気づかないほどゆっくりと起こり(”Erosion”)、またある種の変化は、何の前触れもなく物事が引き裂かれる(”Avulsion”)という考えを反映している。アルバムの全体的なテーマは衰退と崩壊です“と述べている。
ポストハードコアと自身でいうものの若さゆえのぶっ飛んだ勢いや即効性ではなく、いなすような繊細なパートにこそバンドの本質が表れているように感じます。美しさと激しさの共演で悲痛さが増す#3「Still Sickness」や#8「Haze」は特に心を動かされる。