
ギタリスト兼作曲家のEric Kusanagiを中心に結成されたインスト5人組。コロナ禍の真っ只中から活動を開始。トリプルギターを擁する轟音系ポストロックを特徴に、真摯に物語を紡ぐ。Pelagic Recordsと契約しており、22年に1st EP『Wrought』、25年に1stフルアルバム『Wield』を発表しています。
HIROEというバンド名はKRACH finkのインタビューによると、Ericがかつて一緒に働いていた日本人女性の名前からとられている。”HIROEは日本語でどう書くかによっていろいろな意味になるが、”ポスト”という言葉がつくジャンルのように、人によって異なる意味を持つことができるんだ“と説明。
本記事は2025年6月にリリースされた1stアルバム『Wield』について書いています。
作品紹介
Wield(2025)

1stアルバム。全6曲約46分収録。SpotlightsのMario Quinteroによるプロデュース。また、2022年に発表した前EP『Wrought』に引き続いてPelagic Recordsからのリリースです。その間にメンバー5人中3人が入れ替わった中で制作されました。
METAL EXPRESS RADIOのインタビューでEric氏は本作について”Wieldは山あり谷あり、浮き沈みの激しい旅であり、人生そのものを反映している。ミュージシャンとして私たちはいろいろな感情を引き出すために、様々な種類の音楽を演奏するのが好きだ。リスナーをこの感情の旅に連れて行き、彼ら自身の物語のサウンドトラックを提供できればと思った”と話している。
HIROEはトリプルギター編成のインスト・バンドで、ポストロック~ポストメタルの中間辺りをうろつくようなスタイル。澄んだギターの音色を先導役にハーモニーを重視した展開がされる#1「The Calm」、Pelicanばりにスラッジの領域に踏み込みながらも歯切れの良い推進力で終盤を突き進む#2「Tides」が序盤を飾ります。清らかであったもパンチ力を忘れないその様は、If These Trees Could TalkやCaspian辺りを思わせる部分がある。
EPと比べてピアノやシンセを取り入れるようになりましたが、ギター3本を主役として物語を丹念に編んでいく姿勢は変わらない。静と動、軽と重、美と醜。対比を活かしながら内省的な雰囲気、昂揚感をもたらそうと丁寧な構築が成されています。その辺りはIDIOTEQに掲載されているはEricの全曲セルフライナーでも伺える。
本作では、序盤のタッピングギターをモチーフにして起伏豊かに約10分間を駆け抜ける#3「Collider」が特筆すべき楽曲。また締めくくりの#6「I’ve Been Waiting For You All Of My Life」は悲劇を知ってしまったExplosions In The Skyのような趣があります。
