フランス・リヨンを拠点に活動するポストメタル4人組。メインコンポーザーのJulien Gachet(Vo&Gt)とAlexandre Covalciuc(Gt)、Thibaud Bétencourt(Ba)という幼なじみ3人の活動に、ジャズのバックグラウンドを持つドラマーAdrien Bernet(Dr)が2020年に加入して本格的に活動。
USポストメタル~アトモスフェリック・スラッジの流れを汲むスタイルで、ISIS the Band、SUMAC、Intaronautらに影響を受けている。結成当初から制作していたという1stアルバム『3H33』をKlonosphere Records / Season of Mistから2024年5月にリリース。
なおバンド名の由来は、LOUD TVのインタビューによるとフランスのプログレッシブ・メタル・バンドのKlone「Immersion」の歌詞に由来し、自身を掘り下げることが重要という意味合いでつけられている(動画:3分45秒付近)
本記事は1stアルバム『3H33』について書いています。
作品紹介
3H33(2024)
1stアルバム。全6曲約34分収録。”Thinking Man’s Metal”という言葉が世の中から薄れゆく中でも、ポストメタルの灯を絶やさない存在は時たまに現れる。フランス・リヨンを拠点に活動する4人組の初陣を飾る本作からはその意志が見て取れます。
どっしり分厚いリフとCult of Luna直系の唸り声を基調に作り上げる重苦しい雰囲気。対してクリーントーンやシンセサイザーが美的な洗浄を施すことで、清濁静動のバランスを保つ(ただし、ヴォーカルはキレイに歌い上げるパートなし)。
まさしくThinking Man’s Metalの系譜を行く#1「The Order of Things」~#2「Collective Dissonance」の序盤から程よく呼吸できるスペースやメロディックな性質を守っており、全体を通しても品位や知的さを感じさせる内容です。
”ISISやSUMAC、Intronautに影響を受けている”とはバンド公式の紹介文より。まさに王道的なポストメタルがInner Landscapeの基盤にあります。その上でジャズやプログレといった要素と交差。ジャズ畑にいたというドラムは特にそれを感じさせるもので、ゆったりとしたテンポを維持する中でなめらかにセクション間を接続している。
なお本作の主題は”家族の崩壊”であり、メインコンポーザーを務めるJulien Gachetの体験がベース。”私が経験した感情やその時代のサイクルを反映してできたと思います。それぞれの楽曲は家族の崩壊、病気、死別などを含む10年にわたる物語のちょっとしたカプセル”だと述べています(こちらのインタビューにて)
特に表題曲#6「3H33」は繊細から破壊までのトーンを移り行く中で父親の死を描き、虚無と内省に浸ります。内なる風景を見つめる中に表現したい核が浮かび上がる。2020年から長きに渡って制作し、完成に至った『3H33』はその実践の結果です。