東京を拠点に活動していた国産ポストメタル系バンド。バンド名の由来は、”ユキ”という彼女にフラレタ友人への嫌がらせから。
ISIS~Rosetta~envy~Explosions In The Skyといったポストメタル/ポストロックをベースに、国産のポストメタル・バンドとしての可能性を示した稀有な存在でした。
活動期間中に2枚のデモ音源とAnriettaとのスプリット作品をリリース。現在は活動を終えています。
本記事では2ndデモ音源、スプリット作『Lakshmi』について書いています。
アルバム紹介
2nd Demo(2009)
2ndデモ音源。全2曲約25分。当時、国産のポストメタル系バンドがほぼいなかった中で現れたのがjukiでした。ISISやRosetta、envy、Explosions In The Skyといったポストメタル/ポストロックの先鋭たちへの憧憬をそのままパッケージした、そのイメージがまず浮かぶ。
基本的には全編英詩を咆哮し(スラッジ系に加え、叙情派ハードコアからの影響も感じせる)、ミドル~スロウテンポでスラッジメタルの大海を重たく突き進む。潤いのあるアルペジオやポストロック風の浮遊感が絡むところもポイントです。
物寂しいグロッケンの背後からPelicanを彷彿とさせる津波のような轟音が問答無用で襲い掛かる#1「sight that will be」。神秘的な静パートを基調とした展開を維持しつつ、後半で一気に爆発。光と闇をダイナミックに往来しながら果てない情念を駆り立てていく。
そして14分超にも及ぶ#2「the story between the 12th & 13th stair」。Mouth of the Architect辺りのポストメタル~スラッジを思わせる重厚な前半から8分過ぎにEITS辺りを想起させるアルペジオが端正に連なり、宇宙までも羽ばたいていけるかのような飛翔感を演出する後半の展開が見事。
先人達からの影響の強さを感じさせても、jukiが刻む音楽に一切の迷いはない。国産のポストメタル・バンドとしての矜持。本作で体感する壮絶で美しいヘヴィネスは、これからに大きく期待をふくらませました。
Lakshmi(2010)
東京のポストロック5人組Anriettaとのスプリット作品。Anriettaが2曲約11分、jukiが2曲約26分で合計4曲約37分収録。
jukiは約1年ぶりの新音源で約9分の#3「Carved」、約17分の#4「Linear」を提供。美醜硬軟のコントラスト、静・動の豊かな起伏で練り上げられた楽曲は、劇的に高まったドラマ性を有して聴き手の五感に迫ります。
鬼神のような低音スクリーム、地に裂け目をもたらすかのようなリズムが重たい牽引力を担っていますが、前作よりもツインギターがアトモスフェリックと表現できそうな空間性を伴っているのが特徴です。
轟音による歓迎から静と動の大きな落差を武器に壮大な音絵巻をつづる#3「Carved」。叙情性に主導権をわたしながらも天地を逆さにするような巨大な渦が随所に襲いかかる#4「Linear」。
例えるならPelicanとRosettaとExplosions In The Skyの合成獣といったところ。”キレイ目スラッジ”と表現できそうな領域にまで踏み込んでいます。
大らかで有機的に昇華されたそのサウンドは洗練されたといえますが、静と動が共鳴してひとつになっていくことで力強さと美しさを呼びよせています。