1992年に結成されて2001年まで活動したヴィジュアル系バンド、マリスミゼル。
1998年にわたしはヴィジュアル系の洗礼を受けましたが、MALICE MIZERは視覚的にも聴覚的にも”ヴィジュアル系”というのを刷り込んだ存在です。
MALICE MIZERはかつてのヴィジュアル四天王のひとつであり、中世ヨーロッパを思わせる衣装、クラシックとロックを融合させたスタイル、ライヴでの表現を含めて”究極のヴィジュアル系”と言われました。
ヴォーカリストとして高野哲氏やGackt氏が在籍したことでも知られる。最終的なラインナップはManaさま、Közi氏、Yu〜ki氏で10年代に入ってからは”Deep Sanctuary”と題したイベントで不定期にMALICE MIZERの楽曲を披露している。
本記事はGackt氏加入後の第2期、そしてGackt氏の脱退とKami氏の急逝を経た第3期MALICE MIZERが残した3枚のフルアルバムについて書いています。
アルバム紹介
Voyage(1996)
1stフルアルバム。全10曲約45分収録。新ヴォーカルにGackt氏が加入し、第2期MALICE MIZERしての初作。衣装協力by宝塚歌劇団ばりの中世ヨーロッパ風の装いに加え、音楽はロックバンドであってロックバンドであらず。
ピアノやストリングスを中心にクラシカルな格式高さを演出し、シンセギターや打ち込み、オルゴールが浮世離れした雰囲気を助長。
そこに乗るGackt氏の歌唱は、低域とビブラートを活かしてメルヘンな物語を的確にリードします。
ガチガチにコンセプチュアルですが、曲調はクラシックやオペラだけでなく、フレンチポップやゴシック、テクノも盛り込まれる。決して一方向からではないアプローチで華美で麗しい世界観を彩ります。
#2「Transylvania」は吸血鬼、#9「死の舞踏」はシンデレラをモチーフにMALICE MIZERらしい過激×歌劇な曲調。かと思えば、#4「premier amour」や#7「claire」にて第2期の特徴である風通しの良いポップさが打ち出されます。
だからといってカジュアルな印象はなし。個と芸術性をひたすらに追い求めていくことでMALICE MIZERの根幹となるものが本作で創造されました。
次作の名盤『merveilles』を生み出すためのプロトタイプという印象は残るものの、重要な作品です。
merveilles(1998)
2ndフルアルバム。全12曲約50分収録。メジャー進出後も快進撃を続け、音楽やファッション、ライヴ表現も含めた芸術性の高さから”究極のヴィジュアル系”と称された彼等。
その個性はメジャーで全く薄まることはなく、過剰に過剰を重ねるヴィジュアル系の美学を貫き、さらに突き抜けました。前作のサウンドを豪華絢爛に装飾し、曲調はさらにバラエティ豊かに。
華麗なるクラシカルロック#2「Syunikiss~二度目の追悼~」から濃厚過ぎるデビューシングル「ヴェル・エール」から衝撃的です。
インダストリアル&サイバーな#4「ILLUMINATI」で奇怪な暗黒をもたらすも、#5「Brise」から#7「au revoir」まで続く上品なフレンチポップ~バラードは美しいエーゲ海を眼下に映しだし、優しく聴き手を包み込む。
クラシックのみならずプログレやデジタルを意欲的に取り入れた実験性を発揮。けれどもポップとの素敵な友好関係がどの曲でも築かれており、全体を通して気品とロマンに溢れています。
エレガントな幻想性と浮遊感をもたらす#10「Le Ciel」、マリスミゼルの代名詞といえる#11「月下の夜想曲」と終盤も見事な流れ。
美を極めんとする総合芸術は、バンドであるという常識にとらわれてないからこそ生まれた最高傑作であり、究極のヴィジュアル系であったことを物語ります。
薔薇の聖堂(2000)
3rdアルバム。全10曲約51分収録。Gackt氏の脱退、Kami氏の急逝を受け、3人編成となった第3期MALICE MIZERの唯一のフルアルバムにして最終作。
ミレニアムの鐘の音、大聖堂で繰り広げられるお耽美荘厳のクラシカル×ゴシック×ロック暗黒舞踏。
後に3代目ヴォーカリストとして加入するKlaha氏が数曲でサポートするものの、メインヴォーカル不在を前提に制作しており、インスト曲が約半数をしめます。
作風としては『Voyage』に回帰したような印象があり、パイプオルガンやストリングス、聖歌隊を多用してクラシック~オペラ要素を強めています。
Gakct氏脱退の影響で歌謡・ポップス要素を撤去。フランスの街並みを軽やかに歩くような聴き心地を期待した方には肩透かしでしょう。
聴き手にこびない徹底したゴシック芸術としての完成度を追求しており、統一された重みが作品全体に通底しています。そびえたつ第3期マリスとしての重厚な世界。
終盤の楽曲には特に圧倒されます。#8「破滅の果て」は中盤から獰猛なスピードメタルへと飛躍。
#9「白い肌に狂う愛と哀しみの輪舞」~#10「再会の血と薔薇」にはMALICE MIZERが究極のヴィジュアル系と呼ばれた由縁が詰まっている。
前作『merveilles』が大名盤なのは確かですが、本作を隠れた名盤としておくには惜しい。
どれを聴く?
MALICE MIZERはどれから聴けば良いの?
ヴィジュアル系の最重要盤のひとつといえる『merveilles』がオススメです。美と芸術よ、ここに極まれり。サブスクにはないので、ぜひとも盤で入手をお願いします。