カナダ・トロントを拠点に2004-2007年まで活動した実験的スラッジ/ポストメタル・バンド。メンバーはタイマー・セムリック・パーマティアー(Vo,Gt)、ロブ・ショーティル(Ba)、ケイラブ・コリンズ(Dr)のした3人組(カタカナ表記は国内盤ライナーノーツ参照)。
本記事は唯一の音源となる1st EP『Mare』について書いています。
作品紹介
Mare(2004)
1st EP。全5曲約25分収録。唯一残るEPは、かのHydra Headからのリリース。FACT Magazineが2015年に発表した『The 40 best post-metal records ever made(歴代ポストメタル・レコード TOP40』において名だたるバンドを抑えて第3位を記録した作品です。
といわれると何が凄いんだ?となりますよね。ぶっちゃけると私もTOP3に挙げられた理由がよくわかってません(汗)。Mareはスタイル的にはスラッジメタルが基盤にあり、重低音リフと野太い叫び声、ミドルテンポの進行が主だった部分を担う。
その上でBotchやThe Delllinger Escape Planを思わせるマスコアの変則性がスパイスとなったり、ジャズ的な管楽器やドラムパートを介入させ、(国内盤ライナーノーツによると)ブルガリアン・ヴォイスを取り入れている。楽曲の中で様々な要素に寄り道しながら聴き手の思考と視野を広げる旅路になっていることは、Kayo Dotにも通じています。
そういった形式に抗う点に重きを置いている辺り、”ポスト”メタルとして高く評価されているのかも。美しいヴォーカルハーモニーから不協和音の脅威が訪れる#2「They Sent You」、予測不可能な展開の連続#4「Palaces」、全体の3/4ほどをアカペラで占める#5「Sun For Miles」。これらの5曲25分間を通して”混沌”という解を出しています。
ちなみに翌2005年には1stフルアルバムを準備していたという情報は出回っていましたが、果たされぬまま2007年にMareはそのサイクルを終える。なお本作はPop Mattersが2012年に発表した『10 of Hydra Head’s Best Albums』にも選出。重要作として評価されています。