ドイツ・バイエルン州の端っこ、ヴュルツブルク出身のインスト・スラッジ/ポストメタル系バンド。2005年から2014年まで活動。2000年代後半から10年代前半に隆盛を誇ったDenoavli Recordsから作品をリリースしており、Lentoを思わせる重音リフとポストロックのドラマ性を併せた作風が特徴でした。
本記事は活動中に残したフルアルバム2作品について書いています。
アルバム紹介
Geisterstadt + Kalt(2007)
1stアルバム。全6曲約44分収録。タイトルの”Geisterstadt”は英訳するとゴーストタウンを意味します。
00年代後半は轟音系ポストロック/ポストメタルが群雄割拠の時代でした。リリース元のDenovaliはそういったバンドからエクスペリメンタル系までリリースしており、耳の早いリスナーにとって”Denovaliが認めた”は強力な免罪符になっていたのが懐かしい。
Omega Massifは例えるならインストゥルメンタル・スラッジと表現すべきバンドであり、バンド自身がいうダウンテンポの中で重音リフの応酬、ポストメタル的なソフト~ラウドのセクションによって聴き手を”ねじふせる”。この手のバンドに多いカタルシスへのお導きとはまた違うスタイルだといえます。
#1「In Der Mine」からその破壊力に屈服。近しいのは同じDenovaliから作品をリリースしていたLentoであり、ブルドーザーと化すリフの波状攻撃は鼓膜への許してにゃんも通じません。ゴリゴリのフィジカル派ではあるものの、静パートの荒涼とした雰囲気やメロウな質感は担保していて、落ち着く瞬間はちゃんと用意されています。
特に強力なのは#3「Nebelwand」と#4「Under Null」。前者は10分を超える楽曲でアコーディオンの導入という珍しさを体現しつつ、剛健化したGY!BEのような雰囲気を持つ。後者は結成して間もなくつくられたデモ音源からの再録ですが、動→静→動をスリリングに表現する佳曲です。
Karpatia(2011)
2ndアルバム。全6曲約47分収録。引き続きDenovaliからリリース。タイトルはカルパチア山脈からきていると思われます。バンドは自然や山からインスピレーションを受けていることを明かしており、wikipediaによると”ひとたび山に登れば、そこは別世界。音楽はこの状態を描写している“という言葉を残す。
前作と比べて明らかな飛躍があり、重さ・速さ・容赦なさの三拍子を研ぎ澄ましています。Pelicanの1stアルバム『Australasia』を思わせるゴリゴリの重低音、饒舌なまでの静と動のダイナミズム。その上で鼓膜粉砕型の威力と険しく過酷な雰囲気が存在する。
#1「Aura」の冒頭から100秒後にスイッチが入ってからの怒涛のヘヴィネスは強烈ですし、オオカミの群れが追いかけてくるようだからという理由でタイトルがつけられた#2「Wolfe」の圧縮ラッシュは前作になかった新機軸。#4「Im Karst」ではYear of No Lightに待ったをかける重低音地獄が訪れます。
逆に異質なのがラストを飾る#6「Steinernes Meer」でバンド史上最もポストメタルをしているドラマティックな展開で魅了。それでもバンドからは余計な脂肪は全てそぎ落としているストイックさを感じさせるもので、4人の演奏を最大出力するための美学が貫かれる。それが自然の猛威を具現化したかのような強力さに繋がっています。
そんな本作はUFOmammutやLentにも勝るとも劣らないドイツの怪物、ここにありを証明する重い快作。しかし、バンドは3年後に解散。中心メンバーは自らのスタイルをウィンター・ドゥームと評する新バンド、Phantom Winterを結成して活動中。