2013年に結成された岐阜県羽島市発の3人組バンド。初期はハードコアとマスロックの混合を主体とした音楽性から、現在はさらに実験的なアプローチを取り入れて新たな領域へ踏み出している。
2018年に編集盤『町の鈴生り』、2021年に1stフルアルバム『もう少しの暦』を3LAからリリース。
2018年には台北のDIYインディーミュージックフェス、BeastieRockFes(巨獸搖滾音樂祭)に出演。わたし自身の記憶をさかのぼると2015年のSHIZUNE、2020年のRUSSIAN CIRCLESの来日公演で彼等を観ていたりします。
本記事は1stアルバム『もう少しの暦』について書いています。
アルバム紹介
もう少しの暦(2021)
1stアルバム。全14曲約38分収録。quiquiの音楽を語る上で本作に#2「Skramz jazz」という紐解く言葉を持つ曲が用意されています。
日本でいえば”激情系”という風に解釈されるSkramz(リリース元である3LAさんの解説が参考になります)、そして言わずもがなのJazz。
前者についてはLa Quieteのカバー#4「*」を披露していたり、56秒で駆け抜ける#12「時間」等で明確なルーツとして表現。ターボをかけて小刻みに変動し、自らを制御することなく叫び散らかしています。一方で後者については私の知識不足が大いに関係していますが、はっきりとわからない。
むしろミニマルやプログレッシヴといった言葉の方がしっくりくるアプローチが多い。特に#10「Progressive」はタイトル以上に狂っており、素っ頓狂な叫びとサックスによって理性のネジをぶっ飛ばします。
アルバム全体を通すと1~3分前後のショートチューンが多く、シリアスな緊迫感が通底する中で場面を頻繁に切り替える。フィールドレコーディングや音響処理を挟んで戸惑いを与え、増量したインスト・パートで抑圧と翻弄を重ね、パターン化できない音楽として混濁を深めていく。
例外なのが入口として一番適しているのに一番異質なリード曲#13「もう少しの暦」。まるで台風の目に入り込んだように穏やかな歌もので、二度と帰らないあの日々をしみじみと懐かしむ。
このように包括しているものが幅広くても雑多という印象にはならず。削いで研いでを重ねた前衛性を発揮。そして迂闊に精神的な距離感を詰めさせない何かが潜む。#2「Skramz jazz」を聴いていると特にそう思うわけです。