
2024年にマンチェスターで結成された3人組。本記事は1stアルバム『Shaking Hand』について書いています。
作品紹介
Shaking Hand(2026)

1stアルバム。全7曲約42分収録。プロデュースにDavid Pyeを起用。アートワークは、建築家のRay Kappeが1970年代にロサンゼルスを再開発するため制作した未使用の設計図”People Movers”から引用されている(参照:Bandcamp)。
Shaking Handは初期のポストロックと90年代USオルタナ勢に影響を受けているとのことで、具体的にはWomen、Slint、Sonic Youth、Pavementといったバンド名をあげています(ちなみにWomenに「Shaking Hand」という曲がありますが、ここからバンド名をとったかのソースは確認できない)。その情報通りに地の利があるはずのUKよりもUS寄りの音を鳴らし、現在ではなく90年代後半から00年代前半辺りの雰囲気が漂う。加えてハードコアをそんな通過してないマスロック色がある印象で、鋭さや荒さよりも繊細なニュアンスを汲み取りながら硬軟のバランスで聴かせる感じでしょうか。
オープニングを飾る#1「Sundance」の序盤から中盤にかけては柔らかで明瞭な響きのインディーロックといった趣。ですが、3分過ぎからマスロックに通じるリフをきっかけにアンサンブルがやや熱を帯びる。本作ではギター、ベース、ドラムのみを使用。3分台の曲もあるとはいえ、6分超のわりと長めの尺で反復を基調に微細な変化を繰り返します。ヴォーカルは何かを主張したり声を荒げるようなことはなく、歌で引き込もうとするよりかは、楽器隊を補完するような響きを重視しているように思えます。
先行シングルとなった#2「Mantras」ではのんびりとしたテンポと限られた旋律、曖昧に届く歌声から7分近い時間の中で少しだけヒートアップ。インパクトのあるベースリフで幕を開ける#3「In For a… Pound!」はむしろギターの多彩な音色に耳を奪われますし、スロウコアに近い風情からゆっくりと燃え上がる#6「Italics」なんかはdeathcrashを近しく感じたり。海外だとエモという単語も躍っていますが、言われているほどその傾向は強くないかなと個人的に感じています。
曲によってはキメどころを用意していますが、劇的さや押しつけがましい展開はなく、抑制されたトーンで淡々と紡ぎ続ける。感情も音も過剰にブーストしない、その姿勢が何とも職人肌。常に一歩一線を引いている。8分40秒にも及ぶクローザー#7「Cable Ties」は特に印象的な楽曲で、拍子やテンポを変えながら最後は脱力して穏やかに締めくくる。彼らが影響を受けたバンドを生き写しただけではない、一貫した反復と進行が生み出すこだわりの味がつまった逸品。
