1997年に結成されたアメリカ・カリフォルニア出身のメロディック・ハードコア5人組。日本では”叙情派ハードコア”と呼ばれ、Shai Huludと共にシーンを牽引しました。2004年に発表した『Between Two Unseens』は最高傑作と評されています。
2004年に解散。CIRCA SURVIVEやMIKOTOといったバンドでメンバーは活躍する。2015年に再結成を果たし、2018年に14年ぶりのカムバック作『With Regard To』を発表。2019年と2023年に来日公演を敢行。
本記事では全5作品について書いています。
アルバム紹介
Finding Solace In Dissension(2000)
1st EP。全7曲約31分収録。叙情派ハードコアの雄として数多くのフォロワーを生んだ彼等の初作。全カタログ中で最も攻撃的なサウンドを鳴らすものの、フィジカルのゴリ押しに頼らない技巧派の面を発揮しています。
警告のようなギターリフが不穏さを撒き散らし、たまのブラストビートがやたらと心拍数を高め、”泣き”の入った激情型のスクリーム。その割に抜きのポイントがあり、日本では”叙情派”と呼ばれる所以の美メロがそっと入り込んできます。
また型にはまらない個性があり、#3「Pacifier」にはジャズチックな間奏が入り、#5「Open Roads」では静動緩急の迷路で惑わします。
ニュースクール系ハードコアとも言われる彼等ですが、わたしとしてはConvergeの影響を感じ、それを後のスクリーモ勢と繋げていくよう姿勢も見られます。
8分近いラスト曲#7「The Best I had」では90’s Emo辺りに通ずるイントロから一気に加速し、サビで一体となるコーラス、終盤はピアノでしっとりと締めくくる。他のバンドにはないセンスをTakenはすでに本作で聴かせつけています。
And They Slept(2002)
1stフルアルバム。全9曲約31分収録。冒頭の#1「Never An Answer」から猛烈なハードコアの突進とムーディーな哀愁漂うパートが住まいを共にするように、基本的に前作の延長上にある混沌とした作風です。
ハードコアというカッチリとした型に収めず、変則的なギターフレーズや緩急に富む展開を駆使。それでも情熱と哀愁がだだもれになるのがTakenというバンドです。
また、アコギのアルペジオとピアノによる麗しい旋律に彩られたインスト#6「Beauty In Dead Flowers」を作品に組み込んでこれるのがTakenの強み。
終盤は#7「Overused History」のハンドクラップを用いてのポップな揺さぶりがあり、#8「Overshadowing at 100 East」では叙情の波紋がさらに広がっていきます。
ラストの#9「What’s Best Right Now」は澄んだ旋律とコーラスワークの一体感で感情を引き上げ、激走。決して肉弾戦上等なだけではない、叙情性と独創的なアイデアが盛り込まれています。
Between Two Unseens(2004)
2nd EP。全5曲約24分収録。レコーディング&マスタリングはSAOSINのBeau Burchellが担当。解散前のラスト作にして、Taken節を確立した最高傑作。
持ち味といえるハードコアの暴力性や突進力は受け継がれるものの、本作の特徴はメロディの完全開花です。Explosions In The Sky辺りを彷彿とさせるインスト・ポストロックが盛り込まれ、予想だにしない美麗サウンドの応酬に面喰らいます。
それが感情むき出しの叫びや硬質なサウンドとマッチ。加減速自在の展開も手伝って、独特の破壊力と透明感のある叙情性を有している。
代表曲#1「Arrested Impulse」の冒頭の加速から完全に持っていかれ、そこから#2「The Duke」が奏でる美旋律に撃たれるドラマへ。これぞTakenといえる泣きと哀愁が詰め込まれます。
静と動のなめらかな流動も特筆すべき点で、激しさと麗しさのコントラストが抜群。EPが最高傑作というのは珍しいですが、本作においてTakenは完全に自らのスタイルを確立。しかしながら、惜しくも解散の道を辿りました。
Carry Us Until There Is Nothing Left(2015)
上述した3作品をまとめたディスコグラフィー盤。当時は全ての作品が廃盤となり、入手困難でした。全21曲約86分収録。Takenと縁の深い札幌のevylockのレーベル、Falling leavesからのリリース。
解散(復活していますけど)から10年経っても色あせるどころか影響力を増すTakenのサウンドを全まとめされている本作で聴きましょう!!!
With Regard to(2018)
3rd EP。全5曲約19分収録。レコーディング&マスタリングはSAOSINのBeau Burchellが引き続き担当しています。約14年ぶりの新作、路線は『Between Two Unseens』からの地続き。
カムバック作としては申し分なく、叙情派ハードコアとしての威厳を示すダイナミックな楽曲が揃っています。重量感のあるリフ、メロディアスな旋律、軽やかな疾走、泣きを誘発するスクリームのパッケージング。
しかしながら、本作にはVo.レイ・ハーキンズの妻が2016年後半にガン宣告を受け、それに対して彼がどう向き合ってきたかの軌跡が描かれていて(参照:KILL YOUR STEREOのインタビュー)、非常にセンシティヴな内容です。
暗闇の中をもがくような#1「Regret(後悔)」に始まって、Reflect(内省)、Realign(再編成)、Repose(安息)を辿って最後は#5「Rejoice」の歓びへつながっていく。
これぞTakenというサウンドの中に興奮を見出すと同時に、パーソナルな痛みと愛情が伝わります。