アルバム紹介
Hollow Realm(2010)
UKのポストロック/マスロックの新鋭6人組の1stフルアルバム。これまたスゴいバンドが出てきた!と初聴したときにかなり感心と驚きを覚えました。
6人編成でツインギター、ベース、ドラムにさらにヴァイオリンが2本という編成がまず特徴に挙げられます。その編成だと物静かで荘厳なポストロックっていう先入観がつきまとう人も多そうですが、このバンドは真逆の破壊力を有している。
クラシック調の厳かな調べから獰猛に夜空をかける旋律までを感情豊かに表現するヴァイオリンを核に据え、ストイックな緊張感が貫かれたバンド・サウンドが豪快なまでに轟きます。
荘厳なイントロを駆け抜けると同時に強引な牽引力によって導かれる爆音狂騒#1からしてしてやったり。鮮烈に空気を裂き、野獣のような攻撃力を存分に発揮していて、ハードコア・ヘヴィメタルに軽々と足を踏み入れている印象を受ける。
物悲しげなフレーズも穏やかな凪のように訪れ、琴線に触れるメランコリーもまた重要な構成要素のひとつ。それらをマスロック的な知的かつ複雑に算段された展開で花開かせていく。静と動の両軸に振り切れた迫力ある作風は日本のsgt.を思わせます。
チェロでヘヴィ・メタルするApocalyptica超えようとする#5「Iris」には参ったし、続けざまに放たれる#6「Impara」のテクニカルな展開と狂騒からクライマックスの極まった歓喜への橋渡しにも興奮を覚えてしまう。
核である2本のヴァイオリンを軸に、構築美の追求とスリリングな演奏によって圧倒的なドラマが生まれる10分越えのラスト曲#8「Hollow Dept」は圧巻。激しいだけではない、穏やかで味わい深い世界もここにはあります。
鋭くも分厚い攻撃力、深みのある叙情、楽器陣の見事な調和が成された本作は、真っ白なキャンパスに数多の色彩と未曾有の衝撃を与えるデビュー作。勇壮な強さと野心に満ちています。