【アルバム紹介】The National、優しさも力強さも受け止める歌

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High Violet(2010)

   NYブルックリンの5人組、ザ・ナショナルの5thフルアルバム。世界的に高評価を獲得した4th『Boxer』以来、3年ぶりとなる作品です。本作で初めて聴きます。儚く枯れた哀愁、静かに燃え上がるような情熱。その両面が胸を強く打つのが特徴。豊かな情感を湛えたダンディな声が大地に根を張っていく感じが印象に残ります。

 朝焼けを思わせる#1「Terrible Love」のイントロから彼等の音楽に吸い込まれ、それからは完全に虜。全編に渡って胸を焦がしていく。バックの演奏はアメリカン・ロックを基調としていますが、デリケートなメロディと豊かな空間性をもたらすギターが柔らかくも力強いサウンドを構築。リズムの拍動、ピアノの流麗な音色も凛として響いており、またオーケストラやホーンが重層的な広がりをもたらしています。

 程よい隙間を残しながらメランコリックに染みてくる。一聴すると地味に感じられたりする部分もあるが、それもこれもヴォーカルの歌声の磁力を引き出すためのようなもの。儚げな哀歓と生きていく意志、そして渋い魅力が荒野に広がっていく。既に彼らには堂々とした風格すらも漂っている。優しさも力強さも、身をくるんでしまうような包容力を備えた見事な一枚である。先行配信された”Bloodbuzz Ohio”は本作のハイライト。

 なお本作はPitchforkが発表した「2010年代のベスト・アルバム200」のリストで147位にランクインしています。

お読みいただきありがとうございました!
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