
2008年にフランス・レンヌで活動を始めたいマスロック系インスト・バンド。ユーロ・ツアー中だったCaspianからベスト・ローカル・アクトと言わしめたほどの逸材。
初期EPと1stアルバムは轟音系ポストロックといわれる音楽性でしたが、2ndアルバムからは大胆に変化。Enemies等のラインに並ぶマスロックを鳴らしています。
ちなみにバンド名は、宮崎駿監督の『となりのトトロ』に由来しています(こちらのインタビューより)。Alcestのネージュもジブリ作品について語ったりしていましたが、フランス人にはなじむのでしょうか。
本記事はフルアルバム4作品、EP1作品について書いています。
アルバム紹介
EP(2008)

1st EP。全4曲約31分収録。Caspianからも称賛を浴びた轟音系インスト・バンドが、まだメンバーの平均年齢が10代だった頃に制作。過剰な装飾はせず、バンドの生身の演奏のみで表現する音。そこには荒々しくも初々しいエネルギーが秘められており、世界を豪快に切り拓こうとする意志の強さを感じさせます。
哀しみを湛えた切ないアルペジオ、スケールを広げるトレモロ等のツインギターによる連携で物語を構築し、強靭なリズム隊がしっかりとそれに呼応。そして、ポストロック的なアンサンブルを重ねながら美しく壮大なクライマックスへ。
言葉も失うほどの轟音の洪水に身を任せた時は、この界隈を開拓してきたMogwaiやEITSなどといった先人達のカタルシスに近いものを感じさせます。
流麗な組み立てから一気にバーストしていく10分超の#2、情熱を持って叩きつけられる轟音に圧倒される#4とそのコントラストによる効力は絶大だ。また、情感豊かなメロディには気品と滑らかさがあって、耳から体中に染みわたっていく感がある。
Russian Circles辺りが頭をよぎる#3も存在感を放つ。若者が今持てるポテンシャルを発揮して誠実に創り上げた本作、そこからは力強く勇ましいエネルギーに溢れている。
All Glory To John Baltor(2011)

1stアルバム。全4曲約41分収録。弊サイトでお馴染みのTokyo Jupiter Recordsよりリリースされています。彼等の根幹である轟音叙事詩を遥かにパワーアップ。リリカルな旋律が舞い踊り、美しいトレモロが飛翔し、幾重にも重なって厚みを増して彩られていく多幸感ある轟音が降り注いでは、恍惚へ。
Explosions In The SkyやMONO、Caspianといったバンドと比肩するほどのサウンドは、美意識で丹念に編まれたものでさらに詩情豊かで力強いものとなっています。
驚きなのは今までに無かった激情系ハードコア譲りの咆哮が3曲に渡って炸裂していて、新たなエッセンスがその強大な音塊に収斂。メロディアスかつダイナミックな楽曲群はスケールをより雄大にし、ポストロック~激情HCの波を何度も行き交うことで、バンド自体の飛躍にも繋がっています。
先のTokyo Jupiterコンピにも収録された#1ではCaspianに『LOCAL BAND MVPS』と言わしめた実力を大いに発揮する轟音インスト・ポストロックで眩い昂揚感に包まれる。
かと思えば、まさに新境地へと突入した#2ではスクリームを交えながら静と動を丁寧に編み込んで獰猛美麗なストーリーを描き出していく。
続く#3、#4ではあまりに豊かな起伏があり、Pelicanの大名盤2nd『Fire In Our~』が聴かせた壮大なるサウンドスケープに最も接近したという印象すら浮かびました。フランスの新星による4曲40分の本作は、超然と鳴り響く旋律と共に最上の時間を提供してくれます。
バンドとしてこの時代はなかったことにされているのかと思ったら、2025年8月にレコードで初めてリリースされました(Facebookの声明、ならびにBandcamp)。
Home Alone(2014)

2ndアルバム。全8曲約33分収録。前作での轟音系ポストロック~激情系ハードコアのダイナミックなサウンドから一転、本作では清涼感あるマスポップへと変化。ネコバスに乗せられて山奥で何かが起こったのでょうか。PeleやEnemiesといったラインに並ぶ、軽やかでメロディアスなインストを聴かせてくれます。
ツインギターが複雑に絡み合い、急激な加速が一気に突きあげる表題曲#1「Home Alone」、Enemiesライクな#2「Chevalier Bulltoe」で序盤を飾り、小気味よく駆け抜けるインスト・ポストロック#3「Tonton Alain Mitchel」でさらに昂揚感を誘う。この大胆な変化にこれまでTotorRoを聴いてきて驚かない人はいないと思います。
Caspianがマスポップの洗礼を浴びたかのような#5「Motte-Rock」、緩急と強弱のコントラストが鮮やかな#6「Osao San」辺りのインパクトを経て、最終曲#8「Tigers & Gorillas」がこれまでの音楽遍歴を還元するような壮大な轟音インストを響かせて、全8曲約33分を締めくくります。
「こんなのTotorRoじゃない」と言う人よりも絶賛が多かったこともうなずける。スタイルの変化に対しての批判を黙らせるだけの作品を作り上げています。同時に新しい層へも大いにアピールする、これが新しいTotorRoなんだと。
また本作より国内盤のリリースがTokyo Jupiterではなく、Friend of Mine Recordsからとなりました。確かにレーベル・カラーを考えると理解できます。
Come To Mexico(2016)

3rdアルバム。全11曲約46分収録。インストのマスロック路線を継続し、90秒の短編から8分までの長編に及ぶ時間を優雅に操っています。変化に富むギターアプローチとリズムパターンで魅了。
マスロックといっても彼等の場合は無機質/硬質さやマニアックさとは距離が遠く、親しみやすいメロディとカラフルさがある。それこそChonばりのオシャレさと”夏”感を伴ったインストという印象。96秒を軽やかに駆け抜ける#1「Brocolissimo」がまさしくそうですし、そのまま4曲目までのコミカルさとドライブ感は聴いてて清々しく心地よい。
テクニカルであっても口ずさめるフレーズであり、変則的であっても明るい振る舞い。#2や#4における軽快さが顕著ですが、TotorRoの持ち味が存分に発揮されているように感じます。
後半はアプローチの変化が激しく、一番忙しない#7「Tomate Pollisson」だったり、列車から見える風景のように移ろっていく8分越えの#8「100% Repos」だったり、空間的なアプローチと歌に活路を見出す#9「Clara mystere」だったりが控えています。しまいにはMVが製作されている#10「Gerard Blast」で一気にブラックゲイズ化の波が押し寄せる。それでも不思議と耳への感触はソフト、明快という特性は消えません。
締めくくりには快活なインディーロック#11「Come To Mexico」を用意。アイデアを様々に形にしつつ、音楽としての聴きやすさは最後まで貫かれます。マスロック化が板についてきた中で、多彩さと創造性を十分に発揮している作品であり、前述したような軽やかな聴き心地と夏感による間口は広い。
Sofa So Good(2025)

4thアルバム。全9曲約39分収録。2018年からしばらくの活動休止期間を挟んで、9年ぶりのフルアルバムとなります。プロデュースとミックスはBirds In RowのドラマーであるJoris Saïdaniが担当。休止期間中にはメンバー3人がメロディックパンク・バンドのDo It Laterで活動していたり(2025年3月に1stアルバムをリリース)。
TotorRo自体は長い空白期間を挟もうが、新型コロナ等で世界の変化を経験しようが、前2作品の流れを汲むインストゥルメンタルを継続。序盤3曲#1「Bang Bang」~#3「New Music」までの流れを聴けば、帰還を喜ぶ声が多数あがることでしょう。軽快なツインギターと歯切れ良いリズムが息の合ったパスワークのように絡み合い、鼓膜から心地良く入ってくる。特にMVが公開されている#3「New Music」のクリーントーンはたまらない。
さらには#4「Destiny’s Chives」や#7「Bernard Guez」でマスロックの性質と轟音系ポストロック的なダイナミクスを組み合わせ、ドラムレスの表題曲#5「Sofa So Good」は110秒の中で眠りを促す静かなサウンドに浸れます。
前作よりかは全体を通してバリエーションを減らして、声や他の楽器を使ったりもしていません。4人のコンビネーションを重視した結果、カラッとしてストレートな聴き心地に仕上がっているのは特徴。そんな中でも#6「Sensation IRL」の山あり谷ありの展開を軽やかに越えていく辺りはさすがです。9年もの空白を埋めるには十分すぎるほど、TotorRoに求めることが本作には詰め込まれ過ぎている。
