【作品紹介】trauma ray『Chameleon』

 2018年にテキサスのカラオケ・バーで初めてslowdiveに出会い、2人のギタリストが絆を深めたことで結成されたというオルタナティヴ/シューゲイザー系5人組(出典:Bandcamp)。本記事は1stアルバム『Chameleon』について書いています。

タップできる目次

作品紹介

Chameleon(2024)

 1stアルバム。全12曲約49分収録。DIASからリリースされたデビューフルレングスは、気鋭のオルタナティヴ/シューゲイザー・バンドの可能性を十二分に示します。すでにSpotifyの月間リスナー数が30万人を超えていることからも期待の大きさを物語る「(執筆24年10月27日時点)。

 ”テーマは死。カメレオンは死と同じように、形を変えて私たちの人生に出入りすることができる“とBandcampの声明にあります。アルバムを通して希望にあっかんべえし、暗鬱と戯れる性質が通底。人生の一瞬一瞬の儚さを90年代のオルタナティヴ・バンドのカタログと共に描いています。

 slowdive、Deftones、HUMなどに影響されたサウンドをトリプルギター編成で演奏。ヴォーカルは実体を隠したウィスパーボイスを中心に漂っている。シューゲイズ・リバイバルに括られているバンドではありますが、参照元は様々でオルタナティヴ・ロックの質感の方が強め。そこにはグランジやポストハードコア、スロウコア、スラッジといった色合いも含まれる。

 Nothing辺りと共鳴するアグレッシヴさと甘さがあるアップテンポな#2「Torn」から、チリの作家であるロベルト・ボラーニョの詩の頭文字をとった#12「U.S.D.D.O.S.」の甘美なラストまで。親しみやすい瞬間と突き放す瞬間のダイナミクスを行使しながら、アルバムのテーマとなる死とそれに伴う変化がつづられる。優雅さと虚無感を備えた重み、それに柔らかな浮遊感。劇薬のように効いてくる。

 なおFLOOD MAGAZINEにてギタリスト2名(Jon PerezとUri Avila)が全曲解説しています。死生観や宗教的な生い立ちが歌詞に反映されていること。また#1「Ember」について”Sunny Day Real EstateとHUMが一緒に曲を書いた世界を作りたかった“、#4「Bardo」では”Sonic YouthやUnwoundがKornの曲を書いたらどうなるだろう?“といったアイデアがあったことを明かしています。

プレイリスト

お読みいただきありがとうございました!
タップできる目次