2023年から活動するフランスのモダンメタル/プログレッシヴメタル系バンド。フレンチ・メタルNarakaのフロントマンであるThéodore Rondeauを中心に結成され、内省的な歌詞と現代メタルからのインスピレーションを基にした音楽を奏でる。
本記事は2024年9月にリリースされたデビュー作『Janis』について書いています。
作品紹介
Janis(2024)
1stアルバム。全11曲約58分収録。AlcestのNeigeが1曲ゲスト参加していると耳にしたならば、チェックせざるを得ないわけでして。同じフランスの新鋭バンドによるデビュー作は、ポストブラックの領域にもはみ出していますがプログレッシヴ・メタル/Djentといった流れにある作品です。
”制限を設けず、メタルのさまざまなジャンルからエクストリームミュージック以外の他の音楽スタイルまで、何年も自分を養ってきたすべてのものから引き出しました”とはNEW NOISEのインタビューより。
Alcestのフェアリー感とプログレッシヴメタルの高め合いが肝となっている印象を受け、攻撃性と叙情性のバランスが上手くコントロールされています。”ポスト”とか”ゲイズ”といわれる類の性質をそつなく融合しながら、メタル的な強度をしっかりと出せるやり方を選択しているといいますか。
クリーンからデスヴォイスまでを優雅に操るのは肝のひとつですし、Djent風リフからメタルコアのモッシュパート、ポストブラックの加速がなめらかに取り込まれています。それでいて月明かりのような哀愁と幻想的な品格をアトモスフェリックなパートでこしらえ、美しいハーモニーによって心をなびかせる。
ANTICHRIST Magazineインタビューから引用すると、”Janisというタイトルはうつ病で自ら命を絶ったジャニス・ジョプリンに敬意を表したもの“とあります。アルバム全体を通してメンタルヘルスとの闘いを描いており、カタルシスの旅として機能するように曲と歌詞は特定の順序で書かれたとのこと。
そんな本作の目玉となっているのは2部構成となる#5「Automne Part.1」~#6「Automne Part.2」。後者にはNeigeが参加していますが、2曲ともにAlcestの公式が大正義にして大勝利を体現。『Kodama』に寄せてる#10「Envol de l’Âme」もありますしね。
もちろん照準はそこだけではありません。現代メタルを中心としたインスピレーションを源に、様々なスタイルを打ち出すことで幅広い層にアピールできる。”さまざまなジャンルの音楽が絡み合ったメドレーです(ANTICHRIST Magazineインタビュー)”という発言もうなずけるしたたかなデビュー作。