イングランド東部エセックス州を拠点にしていたドゥームメタル・バンド。1994年にヴォーカル兼ギタリストのPatrick Walkerを中心とした4人組として活動。
解散と再結成を繰り返す活動期間の中で2枚のフルアルバムを残しており、特に2ndアルバム『Watching from a Distance』はKerrang!が発表した【The 13 bleakest rock and metal albums ever】にてトップを飾っている。
なお2009年の解散後、Patrick Walkerは新プロジェクトの40 Watt Sunを立ち上げて今もメインで活動中です。Warningは2017年に2度目の復活を果たし、Roadburn Festival 2017年に出演。『Watching from a Distance』完全再現をステージで披露しました。
本記事は彼等が発表したフルアルバム全2作品について書いています。
作品紹介
The Strength to Dream(1999)
1stアルバム。全5曲約50分収録。カルト的な人気を誇ったUKドゥーム・バンドのデビュー作です。Warningは2ndアルバムが高く評価されておりますが、もちろん本作も聞き逃したくはない作品。
音楽的にはブラックサバスを下敷きにした模範的なリフ、ひたすらにゆっくりとしたテンポを中心としたもの。しかしながら重量勝負みたいなことはしていませんし、ストーナーのように煙たさと酩酊感にフォーカスしていく感じでもありません。
特徴的なのは陰鬱な哀歌としての強度でしょうか(声はオジー・オズボーン系)。ドゥームメタルのフォルムを借りた歌もの、それが一番しっくりきます。ゆえに叙情派ドゥームなる形容をされることにも合点がいく。
楽曲は7分から13分台までと平均10分という尺が基本。大衆が敬遠しそうな長さに加えて、起伏が少ない展開でギターソロ等は入ってない。#2「The Face That Never Dies」の5分30秒前後の少しだけ速いパートやアコースティックなセッションが組み込まれたりしていますが、のっぺりとしている感じは否めません。
だからこそPatrick Walkerの詞と歌唱にどれだけのめり込めるかが鍵。#1「The Return」から忍耐を美徳とする姿勢で、諦めの感情が先だった歌が響き渡っています。
Watching from a Distance(2006)
2ndアルバム。全5曲約50分収録。前作リリース後の2001年に解散しますが、2005年に再結成を果たしての作品となります。とはいえ2009年にまた解散。これがラスト作です。
基本的なスタイルはそのままで、繰り返しを基調にゆっくりのっぺりした暗めのドゥームです。尺も相変わらず平均で10分。その中で変化といえるのはギターリフが叙情性を増したこと、加えてPatrick Walkerの歌がとても情熱的になったこと。
それらがシンプルながらも調和が取れており、恋に破れし男が抱える孤独と喪失感を示す詞を誠実に吐き出しています。ただその表現に言葉や感情のバーゲンセールをしている感はなく、決して安っぽさや嘘はない。特に#2「Footprints」の絶唱には心を動かされるものがあり、取り残されたひとりの男の苦悩が迫ってくるかのよう。
相変わらず浮き沈みは少なくシンプル。アルバム全体が一貫性をもったつくり。ですが、前作以上にドゥームの体を成した切実な歌のアルバムとしての魅力を放っています。暗くて憂鬱、そんな表現がされることの多い本作についてPatrick Walkerはのちの2022年のインタビューでこう述べている。
“私はただ美しい音楽を作りたいだけだ。Watching From A Distanceでは、憂鬱な音楽を作ろうとはしていなかった。生きていることを感じられる美しい音楽を作りたかった。曲や音楽を作りたくなるような経験は憂鬱なものではなく、複雑なものだ“(DISTORTED SOUNDインタビューより)
また本作は先述したようにKerrang!が発表した【The 13 bleakest rock and metal albums ever(最も暗いロック/メタルアルバム13選という意味合い)】にて第1位に選出。また表題曲である#1がMetal Hammerが発表した【最も悲痛なドゥームメタル曲10選】に選ばれています。
2017年にはRoadburn Festivalに出演するため短期の再結成。同フェスにて本作を完全再現しており、それは『Watching from a Distance – Live at Roadburn』としてリリースされています。