【アルバム紹介】あさき、幻想と怪奇の京都メタル

 BEMANIシリーズで活動しているゲームミュージックの作曲家。本人自身が『ヴィジュアルではなく京都メタル』『湿っぽい感じのフォークソング』『プログレメタルに近い』と述べる独創的な音楽は、聴く者を圧倒します。

 これまでに自身の名義では2作品をリリース。本記事はその2作品について書いています。

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アルバム紹介

神曲(2005)

 コナミ系ゲームミュージックの作曲家である、あさき氏の初のフルアルバム。「京都メタル」と提唱する”プログレッシヴ・メタル × 90’sヴィジュアル系”の音楽性で独創的な世界を創造

 参加ミュージシャンには同業者が多くクレジットされている中で、淳士氏(SIAM SHADE / BULL ZEICHEN 88など)の参加が嬉しいところです。また、本作は2012年にリマスター盤として再発済み。

  個人的には2nd『天庭』→1st『神曲』と作品を遡る形で聴いています。しかし、1stアルバムにしてこの異常なまでの完成度の高さに驚き。#1 「蛹」の序盤から驚きで、ヘヴィなリフの切れ込みからタッピングで攻めます。

 ダークなヴィジュアル系と精微なプログレッシヴ・メタルの混成が織りなす世界。そこにしのばされる和情緒、耽美なメロディ、これらがまた何ともいえない味わいを残す。

 導入されているストリングス、キーボード、アコギにしても妖しさと湿っぽい叙情性を加味しています。全体的には、MALICE MIZERや陰陽座、SIAM SHADE、Dream Theater辺りが組み合わさって、本人の提唱する”京都メタル”に昇華。

 ここまで幻想と怪奇、奥ゆかしい和を巧みに表現できるのが恐ろしい。それでも、あさき氏のヴォーカルはヴィジュアル系のクセのある歌い方なので、好き嫌いは別れるところ(苦笑)。

 各曲にフォーカスすると、ギター/ドラム/ヴァイオリンが攻撃に特化した状態で複雑に転がり暴れる#4「この子の七つのお祝いに」、MALICE MIZERが和をコンセプトにしたバラードを作ったという印象の#5「子後の音」、90年代ヴィジュアル系の薫り漂わす幻想的疾走チューン#8「雫」が強烈。

 さらには表題曲である#9「神曲」の狂いプログレ舞踏会に、ぐうの音も出ない。1stアルバムにしておそるべき作品。

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天庭(2013)

 2ndアルバム。”ヴィジュアルではなく京都メタル”や”プログレメタルに近い”と自身で述べている音楽性は変わりませんが、この密度・濃度には参ります。

 初期のLa’cryma ChristiやJanne Da Arc、そこに近年のDIR EN GREYや復活以降のDEAD ENDが示すような重く妖艶な世界観が交わったような強烈なインパクト。

 10分を超える表題曲#2「天庭」からして圧倒的。牙を剥くギターにもの悲しくも攻撃的なストリングスが絡み合い、ポップさを上手くミックスさせながら闇を駆け抜けていく。『このアルバムは,「天庭」がすべてです。』と本人が語るのもうなずけるほど 彼の音楽的要素が凝縮。

 MORRIE御大に強く影響を受けていそうな歌い方や詩世界、薫り過ぎる90年代のヴィジュアル系。ロックからシンフォニック・メタルや舞台音楽、クラシックといったものまでが様々に顔を出し、おぞましい音世界に異型の煌きを与えているのは大きい。また陰陽座っぽく徹底的に”和”を重んじている点も彼のセンスの成せる技。

 #5「つばめ」みたいなエピックなシンフォ系ヴィジュアル系メタルから、暗黒舞踏会を繰り広げるかのような9分半の#8「まほらぼ教」のような楽曲に加え、遊び心を入れながらも緊張感を損なわない短尺のSEまでが飛び出してくる。

 ”愛とひと”をコンセプトに据えた天庭の世界観に全くブレはない。作り手の信念を隅々にまで感じさせる15曲75分の超大作、聴き応えは十分すぎます。

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