東京・西荻窪を中心に活動する4人組。2017年頃に結成し、2019年秋に現体制へ。ブルータル・ブラックゲイズを標榜して活動中です。
20年に1stアルバム『憧憬』、23年4月に『冷刻』をリリース。23年5月には、Gillian CarterやHexisといった海外バンドのサポートを担当する。
本記事は1stアルバム『憧憬』、2ndアルバム『冷刻』について書いています。
アルバム紹介
憧憬(2020)
1stアルバム。全6曲約18分収録。短いインタールード2曲を含みサイズ的にはEP。
”ブルータル・ブラックゲイズ”を掲げており、女性ヴォーカル・亡無さんを擁しているので、音楽的にOathbreakerやSvalbardを彷彿とさせる部分があります。
シャープな切れ味とゴリゴリの重厚感の双撃に、背筋を凍らせるひんやりとした冷たさがセットになってラッシュをかける。#2「他壊心操回路」からその無遠慮な残忍性は発揮されています。
亡無さんのヴォーカルはグロウルや高音スクリームを用いて肉を嚙み切ったかと思えば、感情を殺しての試読で物憂げな雰囲気を助長していく(いずれヘドバン誌が”叫ぶ女”で特集しそうな気がする)。
バンド名通りに”和”の要素が強く、ジャパニーズホラーを主にヴィジュアル系や鬱ロックに通ずる痛みと暗黒要素がミキサーにかけられます。
その上で作品は一貫して冷たさがあり、ポップには潔いまでに背を向けている。淡い幻想を抱かせないのは暗い現代社会の写し鏡のよう。
日本人だからリンクできる要素を盛り込みつつ、亡無さんが書く詩は徹底して日本語へこだわっています。#4「kairai」は”思考停止したまま生きているのか”と冷涼なクリーントーンの狭間から聴こえてくる詩読に精神を削られる。
kokeshiならではの個性を早くも感じさせる内容であり、ラストを飾る#6「憧憬」は地獄の瞬間が連続して4分にわたって圧倒。唇が真っ青になる悪寒と狂気のダーク・ハードコア/ブラックゲイズを展開しています。
こちらの過去インタビューもご参照あれ。ライヴを見た時に思いましたが、亡無さんはあのお方の影響が強かったことを改めて知れました。
冷刻(2023)
2ndアルバム。全9曲約41分収録。赤い糸が結ぶ、虚ろと衝撃。前作から続くブラッケンド・ハードコア~ブラックゲイズを中心軸にニューメタル、オルタナ、メタルコアといった彩りが呪いの装備として躍動します。
急加減速の滑らかな駆動によるシャープな切れ味、トレモロ~クリーントーンで表出する凍りついた美と醜。変わらずにひとり全役スタイルで牽引する亡無さんは、慄くほかない鬼神のごときパフォーマンスで圧倒する。
そして貫かれる日本語詩と”冷・和・呪”の三原則。安定剤としてのメロディは配さない静パートは、精神を冷たく蝕む狂怖を与える。さらには猛烈な動パートと相乗効果で心身のバランスを崩しにきます。
アルバムからのリード曲1「胎海」と#9「彼は誰の慈雨の中で」は呪詛・凍結・哀苦・猛烈・絶叫のコンボで打ちのめす。
#5「わらべうた」は子どもに聞かせられないブルータル童話となり、#8「Into My Darkness」はゲストVoのDeepa氏を迎えてDeftonesを彷彿とさせるヴォーカル・ワークと轟音のカーテンに包みます。
CD帯に書かれた“私はまだ、人のカタチをしていますか?” は#4「報いの祈り」の一節。戦禍に向かったひとりの人間が生き延びるために殺戮兵器となった自らを嘆き、まだ人間でいるかを確かめている(詩からのわたしの解釈)。
暗闇なのに感じるまぶしさ、零下なのに感じる熱。いくつかの激音系をパッケージングしただけではない日本人としての、日本人でしか生まれない音楽。それを感じさせるのが何よりも素晴らしい。
ご購入はバンド公式通販、リリース元のTokyo Jupiter Records、さらには3LAさんなどで買えます。