【アルバム紹介】SEX MACHINEGUNS、燃え続けるヘヴィメタル魂

 ANCHANG(Vo&Gt)が大学在学中の1989年に結成したバンドをルーツにもつ日本のヘヴィメタル・バンド。バンド名はSEX PISTOLSよりもスゴいバンドを目指す意図でピストルよりもマシンガンにしたと言われています。

 メンバー交代を経て第3期といわれるラインナップだった1998年にメジャーデビュー。王道的なメタル・サウンドとコミカルな歌詞を武器に人気を獲得。

 2ndアルバム『MADE IN JAPAN』ではチャート9位を記録し、日本武道館公演や大阪城ホールといった会場でもライヴを成功。しかしながら、人気絶頂だったマシンガンズは2003年8月に解散してしまいます。

 その後は第4期マシンガンズとして復活 → 活動休止。再び復活して第5期~現在の第6期とANCHANGを核に活動を継続中です。2023年にはメジャーデビュー25周年を迎えています。

 本記事ではメジャーデビューして以降の第3期~第4期マシンガンズのオリジナル・アルバム6作、ライヴアルバム1作、SEX MACHINEGUN名義で発表したANCHANGのソロ作の計8作品について書いています。

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アルバム紹介

SEX MACHINEGUN(1998)

 1stアルバム。全10曲約56分収録。当時のラインナップはANCHANG(Vo&Gt)、SUSSY(Gt)、NOISY(Ba)、SPEED STAR SYPAN JOE(Dr)の4人編成。

 日本のヘヴィメタル音楽誌”BURRN!”にて”歌詞がフザけ過ぎているため「?(評価不能)」”とされたことで知られる作品です。

 またマシンガンズは1998年のデビュー当初はヴィジュアル系最盛期にあやかろうと、ヴィジュアル系メタルバンドみたいな売り出し方をされていました。

 しかし、音楽はガチのヘヴィメタル。スラッシュメタルから北欧メロパワ、メロスピ等の多くのエッセンスとオマージュを含んだ本格派のサウンドを轟かせています。

 そこに乗っかかるANCHANGの突き抜けハイトーンもバーニングファイヤーしている。反面、歌詞はやたらとコミカルで腹をかかえて笑ってしまう部分も多い。ここがメタル有識者からけしからんと批判を受ける部分ではありました。

 お米とメタルで強くなれることを歌う#2「JAPAN」、だいの大人が全力で”ワン!ワン!”叫ぶ#8「犬の生活」など本気か?と初聴時は思ったものです。そして本作には代表曲#5「桜島」と#7「ファミレスボンバー」を収録。

 ヘヴィメタルという鋼鉄の牙城をコミカルな歌詞で簡単にアクセスできるようにする。それができたのはバンドに熱いメタル魂と笑いへの愛、バカを本気でやる心意気があったからこそです。

 マシンガンズといえば本作を入門編にして最高傑作に挙げる方が多い。手始めにまずこのデビュー作をおすすめします。

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MADE IN JAPAN(1999)

 2ndアルバム。全11曲約53分収録。レコーディング途中でJOE氏が脱退したため、数曲はそうる透氏や後に正式メンバーとなるCLUTCH.J.HIMAWARI氏が叩いています。

 ”給食食べなきゃ遊びに行けない”と子どもたちの気持ちをBPM200超えのスピードに乗せた#10「ONIGUNSOW」が先行シングル曲ですが、前作に比べるとスピード違反上等&鋼鉄度マシマシ。

 爆速メタル・チューン#2「TEKKEN Ⅱ」や#3「illusion city」の切れ味は前作よりも勢いを感じさせ、#7「Iron Cross」では緩急を活かしながら速さがさらに主張してきます。

 コミカルな歌詞と寸劇が入るのは変わらずとも前作より真面目にはなっている。逆にその分は本格派メタルとしての芽生えがあったのかもしれません。とにかく”速さ”が主張しているアルバムという印象が強い。

 その中で#1「Progressive おじいちゃん」や#6「Secret Killer」といったミドルテンポの凝った変化球を放ってきますが、愛の拳とメタル魂でお灸をすえられるから聴く際は気をつけてほしいですね。

 1stアルバムと並んで人気と完成度の高さを誇る作品。なお本作はオリコンチャートで初登場9位を記録。セールスでもマシンガンズが支持されていたことを物語っています。

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Barbe-Q★マイケル(2001)

 3rdアルバム。全12曲約54分収録。CLUTCH.J.HIMAWARIが正式メンバーとして加入。マシンガンズにもヘヴィロック化の波がきたとされている作品です。

 グルーヴ&ヘヴィネスで圧す#1「S.H.R.~セクシー・ヒーロー・レボリューション~」が先行シングルになったことで予兆はありました。

 ただ、言うほど王道メタル的な曲が少ないわけではなくて、イントロのリフでガッツポーズしたくなる「みどりのおばちゃん」やメタリカのバッテリーといわれまくる#8「とうちゃん」、インディーズ時代の曲を再録した隠し玉スラッシュメタル#11「Fire」と期待通りの曲はそろっています。

 むしろ『Barbe-Q★マイケル』というタイトルのわりに食べ物の曲がなく、歌詞はわりと恋愛ものが多め(浮気とかですけども)。

 歌詞の思いきりの良さは”恥ずかしいほどペロペロ”という口に出しにくい日本語を歌う#「食べたいなめたい危険地帯」では発揮されていますが、ややパワーダウン。

 それでも、ANCHANGのサラリーマン経験からきてる#9「サラリーマン嵐」の”会社〇uck、社長〇uck、出張Fire、残業Fire”の歌詞が全労働者に刺さりまくる。

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Burning Hammer(2001)

 ライヴアルバム。全17曲約78分収録。燃える筋肉 is ヘヴィメタル(ジャケットの腕はプロレスラーの小橋健太氏)。

 初期のベストアルバムという選曲に加え、オリジナルアルバムには未収録となっている2つの代表曲「みかんのうた」と「German Power」を収録しています。

 スタジオ音源よりもスピードと熱量を増した臨場感あふれるライヴの模様、ご当地ごとに代わるコール&レスポンス、MCがトラック分けされて収録されていることわかる”しゃべり”の重要性。

 マシンガンズの真価はライヴにこそありを証明する作品であり、入門編としてもオススメできます。

 コミカルな歌詞と本格派のサウンドでヘヴィメタルを多くの人たちに浸透させ、売上げチャートも軒並み上位を記録し、日本武道館や大阪城ホールでも公演。やはりマシンガンズが残してきた功績は大きい。

 「German Power」は全盛期のメンバー編成ではスタジオ音源がなかったのですが、「みかんのうた」は本作の初回盤DISC2にスタジオライヴ音源が収録されています。

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IGNITION(2002)

 4thアルバム。全13曲約59分収録。ギタリストにサポート期間を経てCIRCUIT.V.PANTHERが正式加入。7弦ギターと5弦ベースを数曲で採用しており、モダンロック~グルーヴメタル的なスタイルを取り入れています。

 ご存知のようにメタル村の基準に”速い”という項目が存在するわけですが、暴走ロッケンローで始まる本作はそこから外れる曲が多い。中盤辺りはミドルテンポ曲を連発し、スピード重視の曲も初期ほどの勢いはないです。

 代わりに4thアルバムの4曲目に配置したことや曲調からメタリカの名曲「One」を彷彿とさせる渾身のバラード#4「そこに、あなたが…..」、ヘヴィネスとドスの効いたコーラスでサザエさん症候群を憂う#8「日曜日」といった曲が光る。

 一撃必殺の曲はなく、味わうタイプの曲が多い。アコースティック調の#12「刺身と山葵」といい、これまでにないバラエティを広げた作品となっています。

 でもファンが求めるのはアイアン・メイデン風味のツインリードが強烈な#2「頬白鮫の悲劇」、しびれる股間に衝撃波の#13「世直し GOOD VIBRATION」でしょうね。

 バンドは翌年8月に開催された日本武道館2DAYS公演にて一度、解散しました。

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The Maintenance(2004)

 SEX MACHINEGUN名義で発表されたANCHANGのソロアルバム。全10曲約40分収録。

 『IGNITION』の流れを汲むアメリカンなモダンロック~グルーヴ・メタルのスタイルを継続していますが、ソロならではの自由さを発揮。

 民族的なリズムとスパニッシュ的なギターアプローチにのせる#3「高年齢化社会」で驚きを与え、#5「チャーシューメン」~#6「米 食べろ」~#7「豆板醬」の食べ物ムーブ3連発が控え、メタルmeetsパンク的な#9「大逆転」がノリよく出迎える。

 これまでになかった挑戦がそこかしこにあるのは確かです。だからといってマシンガンズと距離があるかといえば、そうではなくメタル度は低くてもANCHANG度は高いから安心はできる内容。

 なかでもアニメ”こちら葛飾区亀有公園前派出所”に起用された#10「語れ、涙」が一番しっくりくる。

 それにしても#2「爆乳ダイナマイト」や#8「Flyaway」、後に放送されるテレ東のバラエティ番組・ゴッドタンの未来を予言したタイトルに驚く。フライアウェイ様。

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HEAVY METAL THUNDER(2005)

 5thアルバム。全11曲約50分収録。解散から早々と復活。第4期マシンガンズは演奏力が歴代最高クラスと言われるほどの実力者がそろいます。

 ANCHANGの他メンバーはCIRCUIT.V.PANTHER(Gt)、 SAMURAI.W.KENJILAW(Ba、※cali≠gariの研次郎氏です)、 SPEED STAR SYPAN JOE(Dr)が名を連ねる。

 作風としては前作のモダンロック~グルーヴ・メタル主体だったところから、速さ重視の正統派ヘヴィメタル路線に回帰。

 表題曲#1「HEAVY METAL THUNDER」が”I Believe Heavy Metal Power”という言葉とともにアンセムとして轟き、やけっぱちで肉を高速でかきこむ姿が浮かぶスラッシュメタル#3「焼肉パーティ」、ジャーマンメタル色の濃い#9「出前道一直線」と強力な楽曲がそろいます。

 NOISY氏がいなくなってしまってコミカルさはどうかと言えば、そこまで心配いらず。サンバロック的な#4「ブラジルカーニバル」、ストリングスとANCHANGのハイトーンを披露する#5「サスペンス劇場」と王道を守りつつラインナップを増やした内容です。

 再結成一発目としては充実の1枚。帯には”超重量鋼鉄稲妻痺”と書かれていた。ちなみに#7「踏み台昇降運動」はライヴでも実際に踏み台昇降運動しながら演奏していた。

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MADE IN USA(2006)

 6thアルバム。全12曲約52分収録。アメリカ・ナッシュビルで初の海外レコーディングを敢行した作品です。前作がヨーロピアンなら本作はもろにアメリカン。どっしり感重視の内容です。

 疾走感のある#1「サボテン兄弟」でスタートしますが、速さよりも(音の)太さの方がインパクトとして残るのが本作を表しています。

 シングル曲#9「愛人28」のようにマシンガンズらしい曲もあれば、開放感あるアメリカンロック#11「REACH FOR THE SKY」という新たな一面をみせたりしますが、全体通してはっちゃけた感じはしません。

 色味が抑えられていてギターソロに派手さはなく、歌詞も正直言えば昔ほどおもしろみがありません。代わりにごついアメリカン・ロックという統一感を覚えます。

 それでも#2「JUNK FOOD」はブラックアルバム以降のメタリカを感じさせる佳曲ですし、元メガデスのジミー・デグラッソが参加した#4「ZERO」は”(貯金)残高ゼロ~”と哀しげな旋律に乗せて歌うさまに惹かれます。

 本作を持って第4期マシンガンズは終焉。ANCHANGと他3人という形で分裂。ANCHANGは新たなメンバーを探して第5期となるマシンガンズ再開へ向かい、他3人はインスト・バンドのELLEGUNSを結成することになります。

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どれを聴く?

マシンガンズはどれから聴けば良いの??

1stアルバム『SEX MACHINEGUN』かライヴアルバム『Burning Hammer』がオススメです。どちらを選んでもこれぞマシンガンズ!という魂あふれる作品です。「みかんのうた」が聴きたければ後者。

プレイリスト

おまけ

わたしが10数年ぶりにみたマシンガンズの”フリーダム名古屋’19″での映像をアップしている方がいたのでシェア

お読みいただきありがとうございました!
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