【作品紹介】SYBERIA『Quan tot s’apagui』

 2010年から活動しているスペイン・バルセロナのインストゥルメンタル4人組。このバンド名をなぜ名付けたのかは説明していませんが、Bandcampには”ロシアで最も寒い地域の名称は、トルコ語で「眠る大地」を意味する言葉に由来すると言われている“という記述があります。

 活動初期はCaspianに影響されたポストロックでしたが、作品ごとにパワフルさを増し、今では”POST METAL INSTRUMENTAL”を名乗っている。2019年の3rdアルバム『Seeds Of Change』ならびに2022年の4thアルバム『Statement On Death』はMetal Blade Recordsからリリースされました。

 本記事は2026年1月にリリースされた最新作となる5thアルバム『Quan tot s’apagui』について書いています。

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作品紹介

Quan tot s’apagui(2026)

 5thアルバム。全5曲約45分収録。前々作と前作はMetal Blade Recordsからリリースされていましたが、本作は当サイトで取り上げることが多いMoment Of Collapse Recordsより発売。そして、タイトルに母国語であるカタルーニャ語を用いた初めての作品となります。

 過去作から辿っていくとCaspianを師と仰ぐインストゥルメンタル・ポストロックは、アルバムを重ねるごとに強靭さを増していき、バンドで例えるならRussian Circles寄りのサウンドへと傾いていったように感じます。また前作からドラマーの変更に伴い、ブラストビートを盛り込めるようになったことは、その後の音楽性の変化につながります。本作でもポストメタルやブラックメタルの要素をふんだんに盛り込んでおり、速さと重さを団結させた苛烈さは武器のひとつとなっている。

 MVが公開されている#2「lampecs d’oblit d’uns records en vida(人生におけるいくつかの記憶の忘却の瞬き)」は特にその傾向が表れており、ヴォーカルのいないDownfall of Gaia的な様相を帯びた非常に強力な楽曲。またシリアスな映画の雰囲気を助長するシンセサイザーが全編にわたって貢献することも大きい。こちらも先行公開された#3「naixença d’una mort tranquil·la.(安らかな死の誕生)」は重量感を増したpg.lostを思わせるもので、キーボードの近未来的な演出とトライバルなリズムが印象に残ります。

 リリース・インフォには”世界の終焉を旅する暗く没入感のある体験“と説明があり、実際にアルバムタイトル『Quan tot s’apagui』を訳すと”すべてが消え去る時“といった意。前作『Statement on Death』では”アメリカ合衆国の非常に憂慮すべき問題、つまり有色人種に対する警察の暴力に人々の目を向けさせたい“というテーマを盛り込んでいましたが(参照:Metal Blade Records)、本作ではジャケットが示すような人類の荒廃、終末世界といったものを全編にわたって描いていると思われます。

 ラストを飾る#5「quan me n vagi no em tanqueu els ulls.(私が逝く時、私の目を閉じないで)」はダークアンビエント調の序盤から音数を増し、トレモロリフとブラストビートのがっぷり四つを経て、男性の渋い声によるカタルーニャ語のナレーションが2分間続き、幕を閉じる。瓦礫の街で迎える最期の瞬間。SYBERIAの険しいサウンドだけがただ説得力を持って鳴っている。

メインアーティスト:SYBERIA
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MUSIC VIDEO

SYBERIA – llampecs d’oblit d’uns records en vida, (OFFICIAL VIDEO)
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