
フランス・ガスコーニュ地方、スペイン・バスクの両陣から混成される5人組。Amenraのようなスラッジ/ポストメタル系のサウンドを実験的なスタイルに落とし込んだのが特徴。
本記事は2025年1月にリリースされた1stアルバム『EMBRASSER LA NUIT』について書いています。
作品紹介
EMBRASSER LA NUIT(2025)

1stアルバム。全7曲約34分収録。タイトルはフランス語で”夜を抱きしめて”といった感じの意。フランスとスペイン・バスクの混成軍からなる5人組で、メンバーにはLost in Kievの元ベーシストも在籍しています。
ポストメタルという大筋の方向性を持つバンド。近しいのはAmenraなのですが、もっとハードコア/スラッジ寄りのフィジカルが乗る。そして儀式的な雰囲気を持ちつつも、精神を供養するのとはまた違う感触があります。
警告を促すようなシンセサイザーが入ってきたり、#4「Presque Morts」のようなアンビエント、#6「Tous Morts」のトラップやヒップホップ的な要素を取り入れることで肉体性をぼかす変質化が散見される。この実験的な試みが新鮮といえば新鮮。#1「ÂCÂB」は電子音を取り入れたAmenraという印象を残しますしね。
とはいえÀ TERREの本分は共に8分を超す長編#3「Prophetie」や#7「L’Appel De La Nuit」に表れる。前者はゆっくりとした展開の中でのたうつヘヴィなリフとアンビエントの鎮静を絡めながら壮大な終わりへ向かう。後者は野性味を持つスラッジスタイルから精神の中枢に入り込む静パートへと突入し、その後に苦悶の叫びとノイズでぐちゃぐちゃにしながら終幕。
テンプレートにとどまらない姿勢や野心は作品に表れている。全7曲約34分と収録時間は短めながらも聴き応えは十分にあります。
