【作品紹介】Blanket、変化して辿り着いた誠実な蒼きノイズ

 2016年にイングランド北西部のブラックプールで結成された4人組。2018年にリリースしたデビュー作『How to Let Go』こそポストロックの影響下にあるサウンドを鳴らすも、以降に発売されたフルアルバムでは90年代のオルタナティヴ・ロックやポストハードコア、シューゲイザーに感化された音楽へと移行。

 2026年1月に発表した4thアルバム『True Blue』はWhirrやNothingといったバンドに受けたヘヴィ・シューゲイズ色の濃い作品仕上がっている。本記事は同作を含む、これまでに発表されたフルアルバム4作品について書いています。

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作品紹介

How to Let Go(2018)

 1stアルバム。全10曲約57分収録。バンドはアルバム毎に作風が異なるというよりは、オルタナティヴ・ロック&シューゲイズ化していくのですが、このデビュー作はポストロックを中心に据えた内容です。次作『Modern Escapism』発売時のインタビューにはなるんですが、Kerrang!にて本作の頃はポストロックやアンビエントといった方向性を模索していたと語っています。

 Maybeshewill『Fair Youth』付近のエレガントさと艶やかな炸裂、そしてGod Is An Astronautの落ち着きを備えたインストゥルメンタルを基本に作品は展開。冒頭2曲からもわかる通りに、本作では特にピアノの貢献度が高く、清らかな美に献身。そしてギターを中心にしっとりと織り上げ、場面によってはストリングスアレンジを加えて楽曲をより豊かに彩ります。

 たまにExplosions in the Skyのような振る舞いもあれど、轟音ムーヴには頼らず。むしろ矛盾するようですが、”静かな激しさ”を伴ったときにこそ本作は真価を発揮しているように感じます。また完全なインスト作品にしたくなかったという意向があり、ヴォーカルが数曲入っています。ファルセットを中心に音像に溶け込ませていて、楽器的な使用という側面が強い。

 そのなかでもボコーダーの使用やハーモニーを堪能できる#4「Worlds Collide」は特に印象に残る曲です。私としては#2「The Devil Holds Fast Your Eyelids」が前述したMaybeshewillを彷彿させるエレガントで力強い音色が鳴り響いていて好み。ちなみに#8「Beacons」は翌年にSlow Crushがゲスト参加したヴォーカルトラックとして進化しているのでチェック推奨です。

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Modern Escapism(2021)

 2ndアルバム。全11曲約46分収録。前作と比較して大胆な変化がありました。ハードコアとメタルにそそのかされたのかマッチョな音が鳴るようになり、歌が必要だと自覚してヴォーカル主導の曲が大幅に増えた。まず言えることはそれです。

 本作はKerrang!のインタビューにてセルフ全曲解説しており、オルタナティヴ・メタルとポストハードコアの影響が大きかったことを公言。その大元はDeftones的なものだと感じるのですが、新機軸のヘヴィに接続しながらも前作由来の静的な美をおろそかにしていない。

 #1「White Noise」や#8「Burial」辺りでは大きな水しぶきを引き起こすリフが鳴るとはいえ、その後に水面を伝うメロディや歌に引き込まれる。また前作に収録されていてもおかしくない澄んだ美しさを披露する#4「Firmament」、アコースティックでつづられる#5「The Mighty Deep」、以降の作品への布石となるゲイズ値とDeftones値の高い#7「Where the Light Takes Us」といった楽曲も収められています。

 本作ではゲスト・ヴォーカルを迎えた楽曲があり、#2「Romance」はGostというアーティストがブラックメタル風の金切り声をさらし、#6「In Awe」にてLoatheのKadeem Franceが参加していることでも話題となりました。その点を含めて重量感を増したことに加え、バリエーション豊かであることが強み。これまた前作寄りのアンビエントなタッチが効いた前半から、光の束となっていく後半の流れに息をのむ#11「Last Light」で締めくくるのも見事です。

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Ceremonia(2024)

 3rdアルバム。全10曲約36分収録。Church Road Recordsへ移籍しての発売。レーベルインフォによると、”ポストロック、シューゲイザー、オルタナティブ・ロックの要素をシームレスに融合させた進化の証。Cave In、HUM、Swervedriver、Rideといったバンドからインスピレーションを得ています“との記述があります。またこちらのサイトに本人達の全曲解説が載っていますが、他にもFoo FightersやSuperheavenといったバンド名をあげている。

 出足の#1「Nuclear Boy Scout」と#2「Ceremonia」はその言葉通りにCave Inやフーファイを思わせる力強いサウンドに引っ張られ、声を荒げる場面もあり。ポストハードコア、オルタナティヴ、グランジの影響を前作以上に感じ、#4「Kaleidoscope」や#9「Euphoria」にしても分厚い壁のような音から透明感のあるフレーズまでもが足並みをそろえている。

 ”私たちが捉えたかったのは、インディーロックバンドが大音量で演奏しているような感覚“と前述したレーベルインフォで発言していますが、以前の作品よりも汗をかくパワフルなロックという印象は強いですね。それにしても、Blanketは制作時に聴いてた音楽からの影響を惜しげもなく反映しすぎな気もするんですが、だからこそ変化を楽しめるバンドでもある。

 アルバムを出すごとに楽曲と収録時間がコンパクトになっているのもポイントで、本作は大半が3分台を占めています。#3「Porcelain」や#7「The Lucky Ones」等でシューゲイザーの要素も補完されてはいるのですが、まだ調味料レベルといったところでしょうか。その上でバンドの血脈にあるポストロック/アンビエント的な色合いを短いインタールード#5「A Sea of​​ Bliss (reprise)」や#8「「A Sea Of Bliss」、最終曲#10「Final Call」にて再臨させて全体のバランスがとられています。

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True Blue(2026)

 4thアルバム。全8曲約30分収録。90年代厨が引っ張られるタイトルがまず良いですね。本作についてはリリースコメントで”アルバム全体を通して明るい日々、少しのノスタルジア、そして小さな静かな瞬間に美しさを見出すことについて歌っている。映画ノマドランドからサンプリングを使ったんだけど、それがしっくりきた。根底にあるのは何か正直なもの、つまり生々しい感情を追い求めていたということです“と述べている。

 フルアルバムリリースのスパンは2年とこれまでで最も短く、作品自体もEP並の30分とかなり短い。音楽的には引き続き90年代からの影響ダダ洩れですが、本作で主導権を握っているのはWhirrやNothingが筆頭のフィラデルフィアのヘヴィ・シューゲイズ。オルタナティヴ・メタル的なエッジの角が取れ、エフェクトの魔法を駆使してまどろむような音色を生み出している。

 前述した『ノマドランド』のセリフをサンプリングした短い導入曲#1「The Swallows Reflecting In The Water」からの#2「Hole In My Head」で変化は如実に表れます。寄せては返すノイズの波と不明瞭な歌声。続く#3「Levitate」でも甘美さと重みを備えたギターサウンドがうねっている。以降の楽曲もヘヴィ・シューゲイズ路線でまとめており、It’s Not A Phase Podcastの動画インタビューにて全体を通して一貫性のある作品だと語っているのもうなずけます。

 Glareを思い出すような切なさに満ちた#5「Leaning On You」、そしてExploring BirdsongのLynsey Wardを迎えた#6「Summer Skin」では男女ヴォーカルのハーモニーに酔いしれたかと思うと、終盤にまさかの叫びが入ってきて意表を突かれます。そんなBlanketなりのゲイズの追及は#8「True Blue」で一旦完結へ。タイトなリズム隊がもたらす疾走感の上で軽やかなギターが彩ったかと思うと、激しいディストーションに揺さぶられ、最後はアコースティックの感傷をもって終わる。誠実な蒼きノイズ。彼らの全カタログの中で最も入りやすい作品です。

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MUSIC VIDEO

BLANKET – TRUE BLUE (OFFICIAL MUSIC VIDEO)
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