欧・米・日の激情ハードコア・ブラッケンド・ポストメタル・ポストロック etc. 14組の有力バンドが一斉に集う アンダーグラウンド・シーンの祭典 「TJLA FEST 2015」
Tokyo Jupiter Records & LongLegLongArmsの共同プロデュースで開催決定!!
なんて黒イんだ オトナのパラダイス。そんな黒煙と黒炎が吹き荒れるTJLA FEST 2015へようこそ。
Tokyo Jupiter Recordsのkimiさん、そしてLongLegsLongArms(通称:3LA)の水谷さんは現在進行形で生きるバンドを何年も前からサポートし、日本での新たな発信/中継拠点としてシーンを活性化させてきました(詳しくは弊サイトで行ったインタビューを参照してください)。彼等が日本リリースを手掛けなければ、また日本に招聘しなければ知らないままでいたバンドがいくつに上るのでしょうか。広い視野で見れば一部でありますが、Tokyo Jupiterや3LAが及ぼした影響は計り知れません。それから彼等の活動にシンパシーを感じ、志を共にする者たちも次々と現れました。そんな男達の想いの結晶となったのが、アンダーグラウンド・シーンの祭典と銘打ったこの【TJLA FEST】であると思います。
実は水谷さんと1年半ぐらい前にサシで話す機会があった時に、「Tokyo Jupiterさんとは一緒にフェスやりたいね!なんてことを話してます。」と仰ってたのは、よく覚えています。まさかその発言がわりと短期間で実現することになったのは驚き。両者ともに去年も海外バンドの招聘を行ったばかりであるのに。それこそkimiさんや水谷さんの人柄や人徳はもちろんですが、その上で彼等が築き上げてきた人脈がここ(TJLA FEST)へと導いてくれたのかもしれません。
下記に発表されたラインナップ/タイムテーブルを掲載しますが、両日にDownfall of Gaia、The Caution Children、Years Passingの国外勢がボスとして控えています。国内勢からはポジション関係なく攻めしかやりたくないバンドばかり。いずれの日も3LA側のバンドが多いといえるでしょうが、”アンダーグラウンド・シーンの祭典”と銘打つだけのメンツが揃っています。申し上げておくと僕は初日のみの参戦で、OVUM以外は初見。けれども、2人が選定したラインナップへの信頼は厚い。
TJLA FESTの開幕切込部隊として送り込まれたのがsekien。魔法のiらんどと姫路を街起こしする3人組・sekienは、ジャパニーズ・ネオクラァァァァストを名乗るのも納得のリフとビートの強烈さで持って観客をぶち上げます。そこに日いづる国より的なメロディが馴染んでるわけなんですが、キレと熱量で勝負をかけるような潔さがカッコいい。離れて見ていたので気つきませんでしたが、ベースの弦を切るぐらいの熱演だったとか。このように開幕を飾ったsekienのライヴは、ここからTJLA FESTの深部に進むための覚悟を決めろ !と突きつけているような感じがありましたね。
3LAからアナログとしてリリースされたKhmerとのスプリット盤の片割れのAfter Foreverは、約2年ぶりのライヴ。メロデスとスラッシュ・メタル等の影響を露わにしつつ、最終的にハードコアで締めあげたサウンドが爆発します。しかし、途中のMCにて、息が完全に上がった状態で「老化が激しくて、続けて曲をやれません」という人間味が溢れる部分も(笑)。音楽的には激しいのは間違いありませんが、ステージ上の4人からは久しぶりの感触を楽しむような素振りも見受けられます。かつての名曲も披露していましたが、終盤に演奏したスプリットからの「belief」や「exist」という電光石火の衝撃には悶絶。またTwitterの辺境地を騒がせた「水谷さん あれいない?」というMCは、本日の最優秀MC賞を受賞(多分、異論なし)。このエアやり取りは次回のTJLA FESTでも期待したい。というか恒例行事にして欲しいものです。
続いては、大阪のSTUBBORN FATHER。前日にDownfall of Gaiaと共演しているのも関わってそうですが、完全に殺りにきているパフォーマンス。蛍光灯のみの照明によるステージはさながら暗黒儀式を思わせ、カオティック・ハードコアやらポストメタルやらをショットガンのように打ち込んでくるので痛烈無比というほかありません。抑えきれないものが次々と暴発して、人々を巻き込んでいく感じ。やたらと前に出てきて客席に”覚悟”を問いているかのようなヴォーカルの人が印象的でした。最後(だったと思う)にはその方がダイブして、SUTBBORN神輿状態を完成。本日一番の殺気を彼等から感じました。
本日の出演者の中で唯一、ライヴを体験しているバンドのOVUM。といっても見るのは1年半ぶりでベースが再び交代していました。しかし、本日は自分の知っているOVUMではありません。普段ならギタリストの2人が大半の時間を座って演奏していますが、一度も座らずにずっと立ったまま演奏。そして、EITSやMONOといった系譜からの昇天のインストゥルメンタルからの脱皮(曲も聴いたことないものでした)。完全にとはいえませんし、その色は残っていますが、リフが一段とメタル色プラスで重くなっていてツーバスも随所に入ってきています。こうしたグルーヴの強靭化を行いつつも、今までの繊細なメロディがアクセントとして機能する構成にもなっているかなと。先月見たGlaschelimもそうだったけど、鋼鉄の装備を整えていく不思議さを覚えつつ、カッコいいから全然いいやとなっちゃう(笑)。
Archaique Smileのメンバーの方がOVUMの手伝いでこの日来てたので話を聞いてみたら、演奏したのはほとんど新曲で、ラストにVirgin Babylon Recordsから発売された『ONE MINUTE OLDER』に収録された「Hell Yeah」。驚きと衝撃が走るライヴでとても良かったです。
ここで海外組から、ようやくのYears Passing。Suis La Lune/ Sore Eyelids のヴォーかリストであるHenningさんのソロ・プロジェクト。TJLAに向けてのメッセージにあるように日本大好きマンでありまして、昨年には初めて日本観光に訪れています(某バンドのライヴを見たとkimiさんから聞いてます)。ヨーロッパの貴公子感溢れる端正な顔立ちから、ギター一本をエフェクターで操作して、陶酔してしまう美しい音の層を構築。たまに自らの声も重ねながら、幽玄的なムードも演出。実際はほぼ座って機会いじりという感じで、離れてみていた僕は何やってるかよくわかりませんでしたが、神秘と癒やしの場がここにでき上がっていました。連れてきた彼女も妖精の生まれ変わりのごとき麗しさ。ああ、神様。ちなみに前週は桜台POOLにて、日本のハードコア・バンドのsans visageの力を借りてSuis La LuneとSore Eyelidsの曲を披露しています。
Coffinsはweepreyのベーシスト・あたけ氏が新メンバーとして加わっての新体制での初ライヴ。世界を渡り歩くデスいメタルに初っ端からモッシュが起こります(これまでのアクトにモッシュはなかったので余計に印象的でした)。ヘヴィゲージ満タンにして重戦車走らせる4人の猛者たちにスイッチ入れられ、フロアは狂乱。圧し潰すようなドゥーミーさ、かと思えば疾走するところはそれこそオールドスクールなロックっぽい感触あり。アリエールでも落ちない頑固なドス黒さを吐き出すヴォーカルといい、再び会場を点火させるパフォーマンスが強烈過ぎました。それは風格故のもの。
実に6年ぶりの来日となるフロリダの5人組バンド、The Caution Children。エモとポストロック/シューゲイザーの衝突合体を実現した昨年発表の3rdアルバムは見事でした。ライヴにおいてもアトモスフェリックなギターによる眩惑、全体のアンサンブルが生み出す疾走感や迫力というのを感じられます。
とはいうものの主演男優は、赤ボーダーの長袖シャツをまとったヴォーカルのニックで間違いない。もはや見た目が小アダモちゃんのよう。たるんだ体に溜め込んだエモ汁プッシャーな感じで、泣き叫ぶかのような声と挙動不審な動きで客席の注目を一身に集めます。曲中勝手に座り込んだり、下手のギタリストに顔と体を密着させて一緒に叫んだり、いいタイミングでカメラマンにシャッター切るように促したり。以前にSXSWの動画を貼って「絶対に笑ってはいけないThe Caution Children」みたいなことを書いたけど、太平洋を越えた先にあったエモの進化形的な振る舞いに、自分はおそらく30回ぐらいケツバットされているぐらいに笑っちゃいましたね。
選曲は3rdアルバム中心で「Psalms」やラストに「Letter To My Child」。新曲を演る予定があったそうですが、この日はメンバーの体調の関係で無し。それでもステージ上の画も音も動きもインパクトがありすぎてお腹いっぱいでした。でも、翌日はこの日をさらに上回る奇行の数々だそうで、見てみたかったなあ。
初日のトリはMETAL BLADEと契約するドイツの4人組であるDownfall of Gaia。ネオクラスト、ポストブラックメタル、ブラッケンドハードコア等を統合化したかのような暗黒サウンドは、ライヴにおいても衝撃的でした。The Caution Childrenとは違い、オレたちは余計な動きはいらんのじゃ!と持ち場で自分の仕事を全うしてその加算・積算によって会場を制圧するような印象でしょうか。緊張感が途切れることのないステージの演奏が物語っていました。
トレモロ・リフを主体に弦楽器隊3人が代わる代わるヴォーカルを取るスタイルは驚きだったけど(映像確認してなかったので)、パワーとスピードを備えたドラムが凄い。ブラストを含めた瞬間の切れ味はもちろんですが、目まぐるしい展開と数々の山場がいくつもある長尺の曲を見事にコントロールしています。アスリートみたいだという意見を結構目にしたけど、確かにそんな印象は強い。ストイックに鍛え上げたフィジカルとスピードに攻撃的音楽の探求・追求が結びついたからこそ、Downfall of Gaiaは世界で戦えるのでしょう。最新作となる3rdアルバムを中心にアンコール含めて全7曲、圧倒されました。
ちなみに日本ツアー後のオーストラリアではコアラを抱くノルマもしっかりとこなしています。
TJLA FESTについて「強烈なシンパシーや興奮を覚える音楽を、実体験できる場を築きたいという試みです」というのは主催者のメッセージのひとつ。4つの海外バンドを招聘し、国内バンドがさらに彩った2日間は、その言葉通りに来場者の確かな実体験として新しい感動を生んだと思います。個の強さが交錯したこの現場でこそ感じられる”なにか”を。それが次へとつながる想いとしてそれぞれに芽生えていれば嬉しいもの。偉い人の言葉を改変すれば、「偉大なフェスは、 情熱的な人々からしか生まれない」と。主催者は早くも先を見据えて進んでいると思うので、これからの継続開催に期待したいです。