【アルバム紹介】PIERROT、狂いと毒の詰め合わせ

1994年~2006年まで活動を続けた日本のヴィジュアル系バンド。デビュー当時は、DIR EN GREYと双璧を成すほど人気を誇ったバンドであり、解散するまで常にチャートTOP10に楽曲を送り続けました。本記事では5作品を紹介しています。

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作品紹介

パンドラの匣(1996)

 1stアルバム。全10曲約52分収録。キリト氏、アイジ氏、潤氏、KOHTA氏、TAKEO氏という2006年の解散まで続く不動の5人編成は本作より。PIERROTの原点にして代表作のひとつ。1曲目から「自殺の理由」と名付けられていることから、親に紹介できないヴィジュアル系に属すのは間違いないところです。

 PIERROTの核となるスタイルは本作で既に確立されており、妖しさを容認するダークさと90年代ヴィジュアル系から受け継ぐメロディアスな性質がせめぎ合う。MALICE MIZERほどではないにしてもギターシンセを用いてるのも特徴で、曲調のアクセントと幅を広げる役割を担ってます。

 そして宗教的とも終末的とも社会風刺的とも評される歌詞。音楽的には正多角形のレーダーチャートでバランス型だと感じるのですが、カリスマとか世界観といったバロメーターが突き抜けている印象。詞やストーリーを読み解く必要性があり、言葉を追う内に深みにはまっていってしまう。

 曲名のわりに90年代ヴィジュアル系のスタイルをよりアクが強く表現された#1「自殺の理由」、いかがわしい闇と血を手なずける#5「ドラキュラ」、王道な疾走メロディアスチューン#9「SEPIA」。加えてヴィジュアル系三大丘のひとつ#8「メギドの丘」も本作に収録しています(ライヴではあまり演奏されませんが)。

 収録曲10曲のうち5曲がインディーズ期の楽曲を再録したベスト盤『DICTATORS CIRCUS -奇術的旋律-』に収録されており、ライブで欠かせない人気曲がそろっています。またCDのブックレットの終盤には”最後に残ったものは希望ではなく 絶望”というパンドラの箱の神話を皮肉った言葉を残している(というわけでパンドラの匣は太宰治ではなさそう)。

アーティスト:PIERROT
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CELLULOID(1997)

 2ndミニアルバム。全6曲約30分収録。キリト氏がギタリストだった『気狂いピエロ』以来となるミニアルバムです。”セルロイドという架空の生命体が人格を得て、様々な人間に憑依し、人間という生き物とはどういったものなのかを第三者的な立場から語りかける“という設定がある(wikipedia参照)。

 そういったコンセプト設定もさることながらインディーズ期のミニアルバムにして、PIERROTのキャリアを代表する楽曲がずらりと並びます。作風としては『パンドラの匣』の延長上。その上で明らかな音質の向上、そしてアイジ氏と潤氏によるツインギターを中心とした立体感のある音像が進化を物語ります。

 左右のチャンネルから妖しくも奇怪なギターフレーズが次々と降ってきて、精神を蝕んでくる。これを支えるリズム隊の仕事ぶりも見事。その上でキリト氏の詞は人類を嘲笑しているのか、皮肉っているのか、はたまた救済を与えているのか。いろいろな解釈の余地を残せど、#2「Adolf」のようにヒトラーを題材に歌詞を成立させられる存在はなかなかいない。しかも同曲はヴィジュアル系のフリの代名詞とされる曲であったり(ANDROGYNOSでピエラーとの一体感に度肝を抜かれました)。

 収録曲の中では特に#3「脳内モルヒネ」が中毒性ある曲。冒頭を飾るギターシンセが錯乱状態を推進するかのように鳴っているのに、楽曲自体はサビを中心に驚くほどキャッチー。軽い気持ちで薬味をしたら、もう戻ってこれないと警告はしておきましょう。

 そしてラストを飾る#6「HUMAN GATE」はライヴで終盤に披露されることが多かった名曲。LUNA SEAでいうと「WISH」のイメージに連なり、前5曲がこの曲のフリなのかと思えるぐらいにメッセージ性の強い楽曲に仕上がる。和の情緒を融合させた「鬼と桜」も重要曲。

 ダークではあるものの聴きやすいメロディやキリト氏の求心力を餌にして、気づけばラーに入信している可能性も・・・。後のシーンに与えた影響を考えても重要な作品。こちらの収録曲6曲中4曲がインディーズ期の楽曲を再録したベスト盤『DICTATORS CIRCUS -奇術的旋律-』に収録されています。

メインアーティスト:PIERROT
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FINALE(1999)

 2ndフルアルバム。メジャーからは1stとなる。オリコン・チャート5位を記録。「終わりは始まり」という逆説的なコンセプトを元に制作され、デビュー・シングルとなる#11「クリア・スカイ」を始めとしたシングル4曲を含む全13曲が収録されています。

 そのシングル曲の影響で意外とキャッチーな印象が強く、全体としても幅広い曲調で、PIERROTというバンドを多角的に表現しているように思う。インディーズ期の毒気と混沌にうなされる#7「MAD SKY-鋼鉄の救世主-」、#13「Newborn Baby」といったダークでハードな楽曲から、アップテンポな#4「カナタヘ...」、メジャー感を伴った#11「クリア・スカイ」、それにバンド最大のヒットとなった儚い耽美さを持つ#10「ラストレター」等のヴィジュアル系の王道をいく楽曲まで。

 ヒットを飛ばしていたとはいえ、この頃はデビューしたばかりということもあってレコード会社の大人の支持に従っていたのか(笑)、メロディの立った曲を中心にして、様々な間口に対応可能な作品に落ち付いている。しかし、この辺りの全体の組みたて・構成の巧さ、コンセプチュアルな仕上がりはなかなかのものです。なかでもクリーン・トーンを主体としたバラード調の#8「SACRED」、壮大な展開を聴かせる#12「CHILD」といった曲のインパクトが大きい。

 ただ本作は、ピエラーからはバンドの濃い部分を味わえないということで、結構辛口な評価が多い印象。ただ、十字架のアイメイクをしてようが、のど越し爽やかな曲が多いので入門編として推せると思います。

メインアーティスト:PIERROT
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PRIVATE ENEMY(2000)

 3rdアルバム。メジャーらしい多様性とポップネスを表現した前作から比べると、本作はかなり毛色が違い、随分と内省的でダークです。 それこそインディーズ期にも迫るほど、音や歌詞はコアで過激な方向へ。

 先行シングルである#2「CREATURE」や#5「AGITATOR」で顕著だが、過剰な攻撃性と扇情性が精神にも肉体にも効いてくる。壮大に白銀世界を奏でる#8「パウダースノウ」のようなセンチメンタルな楽曲もあるとはいえ、メジャーに移籍したからもうちょっと大人しくしているのかと思えば、彼等も我慢はできなかった模様です。

 ささくれたギターリフと社会を風刺する詞によるアグレッシヴな#3「ENEMY」、地獄へ一緒に堕ちていこうとするミッドテンポのヘヴィ・チューン#9「ゲルニカ」、ドラム缶を用いて金属的な音感を獲得したのに加えてサックスも悪戯に鳴る#10「FOLLOWER」とアルバムの中核を担う曲も主張は強い。加えて、ストーカーや少年犯罪、宗教団体などを風刺したメッセージ性の強い歌詞には、並々ならぬ説得力があります。

 トータルバランスやとっつきやすさは前作が遥かに上だと思います。けれども、聴けば聴くほどにハマったら抜け出せない中毒性はこちらの方に軍配が上がるはず。メジャー期で最もコアな表現が詰め込まれた作品であり、PIERROTらしい狂いと毒の詰め合わせ。た僕としては当時によく聴いてたこともあり、切なげ疾走曲#14「神経がワレル暑い夜」が一番好きですね。

メインアーティスト:PIERROT
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HEAVEN 〜THE CUSTOMIZED LANDSCAPE〜(2002)

 4thアルバム。

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ID ATTACK(2003)

 5thアルバム。

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DICTATORS CIRCUS -奇術的旋律-(2003)

 ベストアルバム。全11曲約54分収録。メジャーから発表したシングルを中心としたベスト盤ではなく、インディーズ期の楽曲を網羅したものをベスト盤とするのがPIERROTの特徴です(ちなみに前者のベスト盤も2005年にリリースされています)。”奇術的旋律”とは初期に用いていたバンドのキャッチコピー。

 全11曲の内訳は『パンドラの匣』から5曲、『CELLULOID』から4曲、シングル『Screen』から1曲。そしてボーナストラック扱いの#11「「トウメイ」故「人間」也。」は95年デモテープの楽曲です。

 全曲再録。原曲に準拠しつつ、ライブでの演出やギターの音色を一部変えるなどして洗練されています。逆に若かった当時にしか出せない混沌は薄まっているとはいえますかね。この辺りは思い入れが強ければ強いほど賛否は分かれるもの。

 しかしながら、#3「脳内モルヒネ」はイントロの音が低くなって少し気味悪くなり、#6「鬼と桜」は前奏となるSEを加えてより大仰に、#10「HUMAN GATE」はライヴのアンコールで締めくくられるイメージが浮かびます。

 セットリストを意識したような曲順となっているのが特筆すべきところで、楽しめます。PIERROTの入門にはもってこいの作品。

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FREEZE(2004)

 6thアルバム。オリジナルラスト作。

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DICTATORS CIRCUS FINAL(2015)

 ライヴアルバム。

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プレイリスト

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