1994年にアメリカ・テキサス州ヒューストンにて結成された4人組バンド。活動期間はわずかに4年。その中で90’s EMOの代表格と言われるまでの功績を残します。
1stアルバムでは初期衝動の中で不安定に揺れる歌心と感情的な叫びがあり、2ndアルバムでは叙情的なアプローチを強め、彼等の音楽を味わい深く彩ります。
スタイルの変遷はあれど、共通しているのは溢れんばかりのエモーションです。どこからそんな絞り出すんだと言いたくなるぐらいに、彼らから放たれる感情の奔流にこちらも心動かされます。
それまで音楽レビューでしか見たことなかった「エモい」という言葉は、日本でも2018年にいつの間にか市民権を得ました。そのエモいとは何かを知りたければ、Mineralを聴けということになるんですよ(強引)。
90年代、00年代、10年代と世代間による「エモ」の解釈はさまざまに分岐されますが、それでもMineralは格別であるということを残した2枚のオリジナルアルバムが物語ります。
1998年に解散しましたが、2014年に再結成。以降は来日公演も2015年、2019年と行っています。わたしは2015年2月の名古屋タイトロープでその伝説を目撃。2月の寒い中でフロア中は熱気と涙で溢れたとか。90’s EMOに属すバンドの中では一番好みです。そんな彼等の作品を追います。
アルバム紹介
Power Of Failing(1997)
1stフルアルバム。わたしは、2ndアルバム→1stアルバムと遡るように作品を聴きましたが、こちらの方が彼等の初期衝動が爆発している印象は強いです。その上で彼等らしい感傷的なメロディが流れます。
感情の激流を余すことなく音に詰め込み、がむしゃらに楽器を掻き鳴らし、咽び泣いているような歌と叫びが聴き手の心を動かす。オープニングを飾る#1「Five、Eight And Ten」は蒼いフィーリングとポストハードコア寄りの荒々しさ、美しいメロディが組み合わさったことでの衝撃は計り知れません。
そこからエモ史に燦然と輝く大名曲#2「Gloria」への流れは、本作の評価を決定づけるほどに素晴らしいものです。個人的にはこの「Gloria」がMineralの中では一番好きな曲。ZIGGYじゃない方のGLORIAとは決して言わせない曲ですし、ぜひ聴いて心を熱くしてほしい。
また、切迫感と疾走感があるのも1stならではの特徴といえます。#6「If I Could」における内省的なサウンドと何かを訴えかける様なヴォーカリゼーションにはこみ上げてくるものがありますし、初期衝動全開で本作において#2と並んで核として機能している#7「July」もまた印象的な楽曲のひとつです。
後のポストロック的なアプローチにも似た美しい静寂から轟音ギターを鳴らす#3「Slower」もまた味わい深い。#8「Silver」でもそうですが、本作で垣間見える静から動への表現描写は、洗練されたメロディとスケール感を纏う事で次作『Endserenading』にて完成系を見ます。
わたしは2ndの方が好きですけど、共に甲乙つけがたい名作。流石にエモの伝説的バンドであり、”エモの美学”たるものを伝えてくれます。
Endserenading(1998)
1年ぶりとなる2ndアルバムにして最終作。数多の人々にその存在を知らしめた名盤の1stでは、荒らさと初期衝動を感じさせる作風でした。
こちらの作品では、静の部分に重きを置いて洗練された美しさを湛えています。それこそいち早くポストロック的なアプローチを試みたと言えるかもしれません。
比較的ゆったりとしたテンポの中、アルペジオを丁寧に丁寧に紡ぎ、感傷的な歌を心の内に響かせる。#1「Lovelettertypewriter」~#2「Palisade」の流れからしてグッと引き込まれます。暮れなずむ夕陽を見ながら、じっくりと聴き込みたい哀愁のエモといわんばかりに。
ギターが激しくバーストしたり、力のこもった絶叫が出てきますが、前作ほどの勢いと激しさによる押しの展開は少ないです。落ち着きと洗練の果てといった作風で、大人の味わいを持っていると表現できそうです。
静から動への転換が特に見事な#4「Unfinished」は名曲といって差し支え無し。聴けば聴くほどに心の奥に染み込んできます。そして、胸が締め付けられるほどに切なすぎる#10「Thelastwordisrejoice」による締めくくりは、あまりにも感傷的。
本作でMineralの活動は終了となりましたが、彼等の残した功績はあまりにも大きいもの。今もなお、2枚の作品を通して多大な影響を与えている偉大なバンドです。
解散後は、The Gloria RecordとPop Unknownへと派生していく・・・のですが、2014年に復活しています。2015年、2019年と来日公演も敢行。
Complete Collection: 1994-1998(2014)
先のオリジナル・アルバム2作品にボーナストラックを加えたCD2枚組全30曲を収録した、完全コンプリート作。本当に題名通りなので、ぶっちゃけるとこれを買えば良いです。90’s EMOの真髄を心ゆくまで味わえる作品なので。
DISC1に『Power Of Failing』、DISC2に『Endserenading』。それぞれに5曲ずつボーナストラックを収録。シングルやスプリットに収録されていた曲、1stアルバムの「Parking Lot」、「Gloria」、「If I Could」の別バージョンなど。
これでもかと泣きのメロディと歌の反復が染みる「Rubber Legs」、ゆるやかにギターバーストしていく「M.D.」や「Februry」と後期の曲がいずれも良曲。
写真、全曲の歌詞やメンバーによる解説も付いた16ページのブックレットも付属しています。やっぱり、これを買えば全て満たせます。