【作品紹介】VIBORA、バスク地方のポストハードコア

 スペイン・バスク地方のビトリア=ガステイスを拠点に活動するポストハードコア4人組。2018年から始動。VIBORAは直訳すると”毒蛇”という意味合い。

 本記事はこれまでに発表されているフルアルバム2作品について書いています。

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作品紹介

ZALDI BELTZA(2023)

 1stアルバム。全9曲約23分収録。Zegema Beach Recordsからのリリース。バスク語が用いられたタイトルの”ZALDI BELTZA”は直訳すると”黒い馬”という意。ジャケット写真はビトリア=ガステイスの南西部に位置する地域・アリスナバラのある集合住宅を映したもの。真ん中の正方形は歌詞で語られている空虚さ、憂鬱、虚無を象徴する逆フレームだと語る(参照:ROCKZONEのインタビューEverything is Noiseのインタビュー)。なおリリースインフォによると”このアルバムは不安や抑うつといった感情と、自分自身との関係性をテーマにしています“とのこと。

 ツインギター(この2人がヴォーカルとバッキング・ヴォーカルを兼任)、ベース、ドラムという編成のVIBORA。彼らはポストハードコア、スクリーモ、エモバイオレンスなどといわれる類の音楽が特徴です。大半の曲はカップラーメンができあがるまでに終わるぐらいの短さ(平均して2分半)。#2「Purasangre」や#4「Le Fleur」の苛烈さを始めとして、約23分間は即効性の高さを維持したまま駆け抜けます。

 スペイン語/バスク語でつづられた詞を甲高く叫び、クラスト寄りのリフやスピード感溢れる展開で冷静さを失うぐらいに煽られる。時たまにメタルコア風味のビートダウンやスラッジの鈍く重い圧力も組み込まれており、サウンドは常に攻撃的です。近く感じるのはConvergeなのですが、バンドはEkkaia、La Dispute、Viva Belgradoといった名前を影響元にあげています。

 しかしながら、歌詞には上述したようにスクリームで吐き出すものではない言葉が並ぶ。リードトラックの#5「DANA」にて”消えてしまっても、悪くない気がする 笑わない記録を更新し、冬に花がするようなことをする” と希死念慮を言葉にする。Everything is Noiseのインタビューでは”完全な鬱状態の時にこのアルバムを書いていて、これ以外のことが話せなかった“とも話す。 

 ゲストヴォーカルを交えた#8「Gordetakoa」では”夜は鋭く真っ直ぐに純粋に訪れ、やがて勇気を切り裂く“と叫ぶ。自己を受容するではなく、現実への諦めと抵抗の中で揺れ動き、向こう見ずなサウンドと共に次の夜を乗り越えようとする。その姿勢に聴き手も奮い立つものがあります。

メインアーティスト:VIBORA
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Egin Ez Dugun Guztia(2026)

 2ndアルバム。全10曲約36分収録。引き続きZegema Beach Recordsからのリリース。タイトルは変わらずにバスク語を用いており、英語だと”Everything we haven’t done”。日本語訳は”私たちが成し遂げていないことのすべて”といった意味合い。ジャケットはメンバーがツアーしていた際に撮影したドイツの山。今回は四角形が8つ並んでいるのは、鬱状態で視野が狭まっていた前作に比べて語る内容が増えたからとのこと(参照:ROCKZONEのインタビュー)。

 フロアが熱狂するスクリーモ/エモバイオレンス的なサウンドに軸足がある点は変わっていませんが、広がりと重層的な演出が施されるようになりました。冒頭からその変化を感じ、#1「Egin Dugun Guztia」から柔らかなメロディが冒頭1分にわたって流れます。#2「Sentir Nostalgia de Cosas~」ではConvergeの鋭さが宿ったかと思えば、後半はポストロックの領域へと近づいていく。ヴォーカルはさらに声が高くなっている印象がもありますし、つけ加えますと男性ヴォーカリスト1名と女性ヴォーカリスト2名が本作にゲスト参加していたりします(#4、#6、#7)。

 自身でシューゲイザー・ソングと呼び、途中から明らかにDeafheaven化する#5「Fotos」ではクリーンヴォイスも披露。アンビエントの世界に少しだけ踏み込む#6「Blu」もそうですが、駆け抜けることでしか切実な内面を見つめられなかった前作とは違い、安らげる瞬間を設けたり、これまでにはない要素を取り入れることで1曲の中でダイナミクスを持った作風へと仕上がっている。

 ちなみに「6:36」は遠距離恋愛について歌った曲で、恋愛関係にある2人の家の距離が6時間36分あるからとのこと(参照:Everything is Noiseのインタビュー)。それにしては、ラブソングは甘いものであるという概念をぶち壊すマスコアの混沌から穏やかな音色で包み込むギャップが凄まじくはありますが。

 ラストを飾る#10「Egin Ez Dugun Guztia」の冒頭では、数年前にシカゴでツアーに行った際に録音した”私たちは歴史の正しい側にいる“というパレスチナ支持の女性たちの声明を使用(参照:Everything is Noiseのインタビュー)。連帯を呼びかける痛烈なポストハードコアはやがて地殻を脅かすノイズまみれへとつながっていく。”私たちが成し遂げていないことのすべて”というタイトルは、社会が決めつける規範的な生活よりも主体的に生き方を選ぶことを宣言したものだという。本作における変化や主張もまた彼らの精神が反映されており、前作以上に魅力に映る。

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VÍBORA – DANA
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