【アルバム紹介】Plastic Tree、バンドの長い歴史を飄々と紡ぎ続ける

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インク(2012)

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   メジャー・デビュー15周年に発表する12thアルバム(発売は2012年12月12日)。個人的にはプラトゥリはベスト盤と前作『アンモナイト』ぐらいしかチェックしておらず、これまであまり縁が無し。それが、本作を聴いてみたところ、思わぬ完成度の高さに凄く引き込まれた。評判の通りに、様々な層にアピールできる作品に仕上がっている。

 徹底した美意識がもたらす耽美かつセンチメンタルな作風。それに揺らぎはない。ヴィジュアル系を出自にUKロック、オルタナ、ゴシック、シューゲイザーやポストロック、エレクトロニカ…etcと様々なジャンルと向き合い、柔軟に取り入れながら、そこに有村さんの文学的な詩を重ねることで独特の味わいを堪能させてくれる。

 本作に関してもそう。どことなく俯き加減の陰鬱さを醸しつつ、淡い切なさと色彩を零していく#2「インク」、印象的なピアノと透明感のあるギターがシングル#3「くちづけ」、ここまでのベクトルを滑らかに変貌させる極彩色のエレクトロ・チューン#4「ピアノブラック」と序盤から見事な楽曲が並び、物語を形作っていく。時代を見つめながら歩んできたキャリアがもたらす多彩さ、ナイーヴな感傷、流麗なメロディ。とても幻想的である。だが、親しみやすさを感じるのは、冷涼なポップ感と甘美な毒が織り込まれているからだろう。

 中盤では小気味よいパンクスにV系調味料をふりかけた#5「あバンギャルど」、アコースティックな曲調から急に砕けた感じで弾ける#6「ライフ・イズ・ビューティフル」といった曲が続き、哀感たっぷりのダークなシューゲイズ風#9「てふてふ」も取り揃えて多彩な曲調をアピール。そして、シングル#8「静脈」や#10「シオン」などで流麗なポップさを演出し、本作のハイライトとなる12分超えのインスト・ナンバー#11「218小節、かくも長き不在。」に繋がっていく。この曲を初聴した時は、思わず鳥肌が立ったほど。美しいギターが波のように静かに寄せては返し、クライマックスでは恒久の光と轟音が降り注ぐ名曲。インスト・ポストロック好きの琴線に確実に触れるだろうと個人的に思う。

 今更ながらプラトゥリにハマるのかと思いながらも、緻密に構成された世界観と長年に渡って積み重ねてきたキャリアが見事に合致したこの『インク』は、それだけの説得力を持つ秀作に仕上がっている。様々な色彩を残しながら奏でられる12曲、じっくりと味わって聴いていただきたいものだ。

echo(2014)

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 1997年にメジャー・デビューを果たした日本のヴィジュアル系ロック・バンド、Plastic Tree。UKロックやニューウェイヴ、シューゲイザーといった素養を着実に昇華しながら、キャリアを重ねて地位を固めています。

 バンド結成20周年第1弾リリースとなる7曲入りミニアルバム。2014年作。前述のようにキャリアは長いが、ミニアルバムとしての発表は初だという。さらに本作ではメンバー4人全員が作詞・作曲に参加し、収録曲の曲名が「木霊」「輪舞」など全て漢字二文字に統一されている。

 そういったコンセプチュアルな作りから、奇をてらったことに走ってるかと思えばそうでもない。柔らかいアブストラクトな音像で作品のイメージを膨らませるインスト#1「木霊」からスタートし、軽快なリズムとざっくりと刻むリフで強引に雰囲気を変える#2「曲論」へと進み、ナカヤマアキラ作曲のアップテンポでキャッチーな2曲#3「嬉々」と#4「輪舞」がキッチリと落としにかかる。UKロックやシューゲイザーの憧憬を彼等なりに昇華し、さらには独特のセンチメンタリズムが通底した近年の彼等を象徴するような曲が揃っている。

 シャープで切れ味のあるギター・リフから哀愁を帯び、中盤ではアンビエンスなパートも盛り込まれたシングル曲#5「瞳孔」からのラストの流れもとても良い。佐藤ケンケン作曲の#6「雨音」では憂いを帯びたダークな曲調ながら、サビではエモーショナルな一面も見せ、締めくくりの#7「影絵」では美しい轟音ギターと柔らかな鍵盤の旋律が春風を運ぶ。全7曲約28分という収録内容で、メンバー全員が作詞作曲に参加するという制約/実験を用いながらも、いずれもがプラトゥリらしさが貫かれているように思う。近年の彼等を知るという意味ではうってつけの一枚に仕上がっている。

お読みいただきありがとうございました!
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