Junius、魂を巡る美重音と歌

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 2003年に結成されたボストンのオルタナティヴ・ロック~ポストメタル系バンド。ローリングストーン誌において、『NeurosisとThe Smiths のハイブリッド、美とブルータリティの完璧な融合』と評される音楽性をもつ。精神科医/学者イマヌエル・ヴェリコフスキー氏の理論や人生に基づいたコンセプトを掲げ、作品を重ねて”魂”について探求し続けている。

 本記事では現在までに発表されている3枚のフルアルバムについて書いています。

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The Martyrdom of a Catastrophist(2009)

 1stアルバム。全10曲約49分収録。精神科医/学者イマヌエル・ヴェリコフスキー氏の理論と人生に基づいたコンセプトアルバムであり、氏のインタビューや講演からの引用が歌詞にも適用されています。

 オルタナティヴ・ロック~ポストメタルをベースに、重厚かつ浮遊感のあるサウンドを実現。ダイナミックな膨張性を持つと同時にスペーシーな感覚があり、その様はDeftonesとJesuの中間辺りをいくようであります。同じ時期に活動を開始し、同じマサチューセッツ出身のConstantsやCaspianも近い存在といえる。そのうえで、Joseph E. Martinezの伸びやかで艶のあるミドルヴォイスを核に置くことで、芯のある歌ものとしての機能性が高まっています。モリッシーに通ずる端正なセクシーさみたいなのも感じられます。

 聖歌隊やストリングス、ピアノなども引き連れ、壮大でオーケストラルなサウンドも実現しており、後半の楽曲ではその傾向が強まる。バンドのメロウな側面を打ち出した#4「A Dramatist Plays Catastrophist」、清廉とした光に包まれながら徹頭徹尾ドラマティックであろうとするラスト2曲#9「Letters from Saint Angelica」~#10「The Mourning Eulogy」など惹かれます。

 ヘヴィで暗い側面は少なからず持ってはいますが、アルバム全体を包むムードは荘厳かつ聖性としています。轟音による恍惚感、歌ものとしての聴きやすさを両立。ローリング・ストーン誌は”NeurosisとSmithsの完璧なハイブリッドで、残忍さと美しさの見事なバランスを打ち出している”と本作を称えています。

Reports From the Threshold of Death(2011)

 2ndアルバム。全10曲約43分収録。Prosthetic Recordsに移籍してのリリース。前作に引き続いてのコンセプト作で、“死後の魂の旅”をメインテーマに据えています。

 前作を総合的にアップデートした作品といえます。己の美的感覚をさらに研ぎ澄ましており、本作における重低音と叙情性、浮遊感の融合は、Jesuにさらに接近した安息と恍惚をもたらしています。Hydra Headのポストメタル勢に連なっていくアート性の高さを完備し、艶やかでエモーショナルな歌が見事なまでに結晶。添えられるシンセやスペーシーな音響の使い方も堂に入っており、ドラマティックな感性は貫かれています。

 冒頭を飾る#1「Betray the Grave」から時にメランコリックに、時に重く突き抜けるスタイルが示される。大地のように悠然としたアンサンブルにメロディの洪水、天からコーラスが降り注ぐ#2「All Shall Float」へと繋がり、その後も壮麗に世界は続く。轟音への没入感は深まる一方で、Josephのヴォーカルがしっかりと案内役として魂の旅路をリードしていくのが心強い。#8「A Reflection on Fire」の柔らかい歌唱表現は、うっとりとするほどに魅惑的。

 美重音とともに幻想的な情景を紡ぐ#9「Transcend the Ghost」から魂を鎮静化するクライマックス#10「Eidolon & Perispirit」の流れもまた惹かれます。”死後の魂の旅”をどっしりと耽美に奏でるこの創造性。彼等の描き出すヴィジョンは果てしなく、そして美しい。

Eternal Rituals for the Accretion of Light(2017)

 3rdアルバム。全10曲約45分収録。1stアルバムから続いた三部作の完結編となります。本作は魂が輪廻転生し、輪廻から脱却しようとする過程を描く。ハンガリーの彫刻家/ヨガ実践者であるエリザベス・ハイチの半自伝的著作『イニシエーション』を基にしてストーリーを形成。この当時、ドラマー以外のメンバーが脱退して2人体制となっていたため、ヴォーカリストであるJoseph E. Martinezがドラム以外の楽器を演奏。

 前作と比較するとメタル的なエッジの増強、暗く陰鬱な雰囲気が強まっています。ヴォーカルはミドルよりもさらに低い音域で渋く歌う頻度が増加。#2「Beyond the Pale Society」の意表を突くイントロの剛腕な旋回、#4「Clean the Beast」の驚くほどシャウトを重ねての激しさ。このようなパワフルな振る舞いを持ってして、一段階アグレッシヴのギアを上げています。重と美と知のトライアングルが極まる#3「A Mass For Metaphysicians」は、これぞJuniusと思わずうなるほどのもの。

 後半の楽曲はメロウな曲調が多いですが、さらに挑戦的な姿勢が伺えます。キュートな電子音の装飾が印象的な#6「The Queen’s Constellation」、荘厳なコーラスと甘美なシューゲイザーが溶け合う#7「Telepaths & Pyramids」、アコギを主体に最も低い域で渋く歌い上げる#8「Masquerade In Veils」。これまでに無い変化を示しながら、輪廻からの脱却を果たそうとします。

 ラストを飾る#10「Black Sarcophagus」は締めくくりにふさわしいプログレッシヴな構築美を誇る。デュオという最小編成になりながらも、志は高く。筆遣いはさらに自由に。Junius特有のスタイルを追求した結果、しっかりと前進を果たした作品。

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