2011/02/02 MOGWAI @ 恵比寿リキッドルーム

mogwai11

 昨年のMETAMORPHOSE 2010のライヴが印象的に残っているモグワイが半年も経たないうちに早くも再来日)。今回は2年半ぶりに発表となる7thアルバム『Hardcore Will Never Die But You Will』の発売に伴ったもので、国内盤の発売日の2月2日に合わせてライヴが行われます。

 一般発売はなしで、HMVオンラインにて『ライブチケット、CD、Tシャツの3点セット!日本独占企画セット発売!! お値段9990円!』を購入すると参加できるという貴重なライヴに。しかしながら、この抱き合わせ商法には発表当初から非難が殺到。さらに当初は”一夜限り”と謳ってたものが翌日に追加公演まで発表したものだから、その批判はさらに大きなものへと発展(ちなみに握手会も発表された)。

 かなりえげつない後だしじゃんけんが続く中、自分は「絶対に行くぜ!」と思いきって発売初日に購入した2月2日の方に足を運んだ。しかし、あんな売り方でも恵比寿リキッドルームを満員御礼にしてしまうのだから、モグワイはライヴバンドとしてめちゃくちゃ認められているんだなあと感心します。

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1. にせんねんもんだい

ディスティネーション トーキョウ

 開演時間から過ぎる事15分程、急遽オープニングアクトに指名された”にせんねんもんだい”がひょっこりとステージに登場。モグワイのスチュワートがお気に入りだとか。そんな彼女たちはミニマル・インスト・ガールズ・トリオと表現すればいいのか。『ディスティネーショントーキョー』、1曲35分を越える『FAN』と2枚ほど聴いていますが、ギター・ベース・ドラムのオーソドックスな編成ながら無機質なサウンドのミニマリズムが熱を帯び、聴き手を強く巻き込んでいくのが特徴的。

 ベースとドラムのリフレインの上をジャーマン・プログレを思わせるシンセが乗る1曲目の後半部から一気に持ってかれ、続く「FAN」ではソリッドな演奏によってミニマリズムを体現。じわじわキレと熱を増していくアンサンブルに全身が思いっきり揺さぶられます。さすがに30分もやらなくて15分程でこの曲の演奏は終わる。十分に彼女たちの大きな存在感を示す曲でした。

 あと2曲ほど演奏し、十分に会場を揺らし燃やして20時前には終了。無機質に機械的に演奏する感覚が強い彼女たちだが、終了後にギターの方のMCにはやけにほっこりとさせられました。

2. MOGWAI

 20時15分過ぎごろに暗転してMOGWAIの面々が歓声に応えながら登場。新作中心と謳っていたこともあって、ライヴは新作の堂々1曲目を飾る「White Noise」からスタート。叙情的なギターを先頭に色彩感に溢れた風景を描き出していく。続くはテンポよいロッキンなインスト「Mexican Grand Prix」。

 3曲目に「Rano Pano」を披露した時点で、もしやアルバムの曲順でやるのか?と察した人も多そう。でも入るタイミングを間違えたのか、はたまたチューニングがずれてたのかはわからなかったが、この曲をもう一度やり直してたのは御愛嬌。「しっかりしてよー」の声が客席から聞こえてきたが、モグワイは化け物のような轟音を鳴らす怪物のような存在なのに、観客とは相変わらずいい距離感を作っています。

 アルバムを通して聴くのはライヴが初めて。こうして体感してみると凄く色彩感とヴァラエティに富んだアルバムなんだと感じました。ボコーダーを駆使した楽曲だったり、2人でキーボードを弾いた曲があったりと、より自由なアイデアがふんだんに盛り込まれている。張りつめた静寂と怒涛の轟音による雄弁なインストゥルメンタル・ロックを越えた先へ。特に昨年のメタモルフォーゼでも披露した「How To Be A Werewolf」は美麗なシンセと柔和なギターフレーズが心地よい。

 しかしながらバンドの力が本当の意味で発揮されたのは、また観客の心が湧きあがったのは新作完全再現終了後に始まった「Christmas Steps」から。その仄暗い旋律が静かに鳴らされ、共鳴していく楽器の音色が次第に巨大化していく。轟音ギターがおおいに咽び泣いた瞬間に稲光が全身を駆けた。ライヴでは初聴きだったが、この曲もここまで化けるとは・・・。続く「Killing All The Flies」ではゆったりと包み込まれていくような感覚に陥る。そのまま耳を傾けていると、あの耳慣れた旋律が鼓膜に入ってきた。その瞬間から会場の感性が一段と大きくなる。そして、導かれるように全身に歓喜が走る。

 代表曲「Mogwai Fear Satan」は本編ラストにて演奏され、福音のごとき轟音を響かせます。間違いなく今宵のハイライト。アンコールではセンチメンタルなギターと柔らかなキーボードが印象的な「2 Right Make 1 Wrong」で感傷を掻き立てられ、思わずその美しさに耽溺。この曲でよほふぉ昂ぶるものがあったのか、スチュワートが早とちりして「サンキュー、グッナイ!」といってしまったので、メンバーからもう1曲あるよと催促されてて笑った。気を取り直してラストは前作からの「Batcat」。トリプルギターによる津波のような轟音の応酬で怒涛のスペシャル・ショウを締めくくってみせた。

 今回の新作全お披露目は最初で最後になる可能性が高いが、それを考えると本日目撃できたことは確かに一生もの。 翌3日は通常公演が行われたが、新作の曲以外は前日と一曲も被ることないセットリストだったようで、本編ラストの「Like Herod」→「Glasgow Mega-Snake」のコンボ、そしてアンコールには問答無用の超轟音悶絶曲「My Father My King」が披露されたようで、うらやましいかぎり。今回に限っては、完全再現を新鮮な気持ちで楽しむ1日目、新旧バランス良く披露しながらも怒涛の音圧を轟かせた2日目、と絶対に両方行くべきだったと後悔している。

—setlist—
01. White Noise
02. Mexican Grand Prix
03. Rano Pano
04. Death Rays
05. San Pedro
06. Letters To The Metro
07.George Square Thatcher Death Party
08. How To Be A Werewolf
09. Too Raging To Cheers
10. You’re Lionel Richie
11. Christmas Steps
12. Killing All The Flies
13. Mogwai Fear Satan

—encore—
14. 2 Rights Make 1 Wrong
15. Batcat

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↑は終演後に会場で配られたセットリスト、メンバーのサイン入りだが当然コピー。

お読みいただきありがとうございました!
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