DEAD ENDのヴォーカリストとして活動し、現在は主にソロとして稼働しているMORRIE氏を中心としたロックバンド。1995年に表舞台から姿を消して約10年の空白を経て、DEAD ENDでもソロでもなくこの新バンドで2005年に舞い戻る。
ヘヴィかつプログレッシヴなスタイルを貫き、自身が得てきた哲学や概念を言葉と音に落とし込み、何物にも染まらない独自の芸術が生み出されています。全4枚のアルバムを発表し、2018年に休眠(活動休止)。
本記事は活動期間に発表した全4枚のフルアルバムについて書いています。
Light & Lust(2006)
1stアルバム。全11曲52分収録。本作の主要録音メンバーはMinoru氏(室姫深)、ラルクのtetsuya氏、LUNA SEAの真矢氏。Minoru氏とtetsuya氏は作曲にも名を連ねる。他にもDEAD ENDの3名に加え、プロデュースした岡野ハジメ氏はプレイヤーとしても参加しています。
(復活前の)DEAD ENDやソロとはまた違うサウンドを提示しており、ニューメタルに寄ったスタイルを開眼。バンドという形態にこだわったサウンドを主体として妖しくヘヴィに迫ります。この低音武装はMinoru氏の貢献が大きそう。
ソロのアヴァンギャルドな作風とは一線を画し、わかりやすくはなっているものの、豊富な曲調や複雑な展開を持つ辺りはMORRIE御大の音楽だと実感。
3枚同時発売シングル#2「Red」、#4「パラダイス」、#8「風の塔」でその意思表示が伺えます。Minoru氏作曲の#2「Red」はラウドな音圧と疾走感を持つガツンといわす曲で、#4「パラダイス」は妖しいトーンと軽快な曲調が代わる代わる登場。#8「風の塔」はtetsu氏作曲とはいえ、MORRIE氏ソロとラルクが溶け合ったかのような耽美さが引き立っています。
ヴォーカルはロウ~ミドルレンジを太く響かせる歌い方が主になっており、クセの強いビブラートや耳をヒリつかせるシャウトを用いている。闇夜の使者のごとき存在感を示すうえでDEAD END『ZERO』期に近いスタイルも聞けます。
しかし、#6「天醜爛漫」や#11「春の機械」など顕著ですが歌詞は難解。夢、星、風、闇、光、生、殺、幻など曲をまたいで出てくる言葉は何を意味するか。安易な言葉を投げかけない辺りは、孤高の表現者ゆえ。”光と欲望”と名付けられたタイトルですが、闇にも大いに加担している。
INFERNO(2010)
2ndアルバム。全11曲約48分収録。引き続き岡野ハジメ氏がプロデュース。メンバーは一新され、HIRO氏(La’cryma Christi)、Shinobu氏、人時氏(黒夢)、Sakura(ex-L’Arc~en~Ciel)に変更。旧レギュラーゲストのMinoru氏は2曲の作曲と録音に参加。
前年にDEAD ENDが再結成。サウンド的には重なる部分もあるのですが、こちらの方がヘヴィな装い。なんせ#2「Cluster」の第一声がアルバムタイトルにも係る”地獄巡り”。
1stと比べても重量感が増して、幾分かストレートなインパクトは与えてきます。鑑賞ではなく向き合うという態度で対峙しないと殺られること必至。
常に模索しているというMORRIE御大の表現に変化があり、本作からファルセットを本格的に用いるようになりました(こちらのインタビューで本人も述べている)。サウンドは7弦ギター2本と5弦ベースを軸にして重厚にチューンアップ。妖しくも艶やかに、天国も地獄も行き来する構成の中に耽美と怪奇が顔を出す。
先行曲#3「Dream Caller」では漆黒のリフとHIRO節が炸裂するギターソロ、人時氏とSakura氏のリズム隊ががっちりと噛み合っている中にキャッチーなサビがある。クリーントーンのアルペジオから始まる#6「Gone By Rain」では90年代V系へ捧げる透明感と闇が共存。
爆速ヘヴィなスラッシュ・メタルを頭と尾に置き、ありえない転調を組み込む#10「Swan」は強烈なインパクトが残ります。
詞のテーマはおそらく地続きですが、前作では”おまえ”呼びだったのが、本作では”おまえ”と”あなた”と”君”が混在。対となる善と悪、光と闇、天国と地獄を組み込み、引き続き”幻”と”夢”という言葉は多用されています。
消失するという意味の#11「Vanishing」はストリングスを交えたバラードで、肉体は無くなろうと魂は永続することを謳っているようにも思える。地獄を前にして繰り広げられる重厚な音と内省的な問いかけ。
PHANTOMS(2012)
3rdアルバム。全11曲約53分収録。メンバーはほぼ継続ですが、ドラムは脱退したSakura氏とDEAD ENDの湊雅史氏、山崎慶氏、レギュラーメンバーとなったササブチヒロシ氏の4名が担当しています。
変わらずにDEAD ENDよりも振り幅のある多彩な曲調。ですが、メタリックかつマニアック度合は強まっています。
オープニングを飾る#1「Violent Rose」から解毒不可の闇の怪演。まるで舞台演劇のように多彩なヴォーカル表現、吸い寄せる透明感のあるフレーズとおどろおどろしいリフを組み合わせたサウンドは、Creature Creatureの音楽が絶対的芸術であることを突き付ける。
重と美のグラデーション表現の妙。威厳のあるダークさ。それらはアルバムを通して感じられます。MORRIE御大の脳内を創造の源に、前作とツアーを経たことによるバンドとしての成熟がもたらす凄み。#3「Phallus Phaser」の幻想と不穏をプログレッシヴの技法に乗せて描き出すのは孤高の域です。
一方でシングル曲となる#4「楽園へ」や#10「くるめき」にはヴィジュアル系のエッセンスである耽美性やキャッチーさが沁みこんでますが、異質な重みと精神に噛みつくような猟奇性がしのばされている。快い消化などできるはずもなく、思索を義務付ける音の群れ。
これまで以上に複雑怪奇な展開を続ける#7「Mirrors」~#9「Psyche」までの3曲は特にマニアックであり、闇も光も従えて魂をどこへ連れていこうとするのか。
バラード調で締めくくるお約束にならなかった#11「Andromeda」にしても、鎮静よりも混沌とした終わりで容赦なく。血も肉体も精神もこの音楽に捧げよ、それこそが真理であると言わんばかりに。そんな本作は全作品中で最も濃ゆい部分が凝縮している。
Death Is A Flower(2017)
4thフルアルバム。全11曲約55分収録。翌2018年に休眠したことで事実上の最終作です。全メンバーが継続し、サウンド・スタイルも延長戦上にあるもの。さながらヘヴィロックとプログレッシヴと演劇をかき混ぜた暗黒耐久戦。地獄を覗きに行く音楽でありますが、肉体的な狂いも魂の浄化もここにはあります。
#1「Death Is A Flower」の肉と骨を棄てて花開く異形の美に始まり、#3「愛と死の遊技場」や#6「シャドウ・エレジー」においておぞましさの淵へと落ちる人間離れしたパフォーマンスを見せます。
#2「エデンまで」や#4「虚空にハイウェイ」ではダイナミックにロックの醍醐味もしっかりと提示。変幻自在の振る舞いは後半も続く。ゆえに肉魂は天国と地獄を巡り続けることとなる。
しなやかな動きや迫力を増した舞台演劇が繰り広げられれば、メタリックなサウンドで猛然と畳みかけ、古来のV系イズムが流麗に引き立ち、予測不能な展開が過剰なスリルをもたらします。
その上でこれまでと比べて上品な大らかさがあり、存在感を増したクリーントーンとファルセットが深い美しさを添える。
ラストを飾る9分の大曲#11「夢鏡」における”在るが在ること すなわち私が私であること 〈今ここ〉に始まることもなく 〈今ここ〉に終わることもなく“という詞は、御大のベースにある独我論に基づくものと思われる(参照:ROCK AND READ VOL.83)。
誰にも譲ることができない真理の探究、絶対的な音楽表現。Creature Creatureの到達点。