【アルバム紹介】Fucked Up、パワフルな音と歓喜のストーリー

カナダのパンク/ハードコアシーンを代表する6人組。2008年リリースの前作『The Chemistry Of Common Life』で、カナダの最高音楽賞ポラリス・ミュージック・プライズを受賞。初出演となったフジロック’12では、これが俺たちのスタイルだというのを全編で披露し、多くの共感を誘った。本記事は3rdアルバム『David Comes to Life』について書いています。

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David Comes to Life(2011)

   3rdアルバム。全18曲約76分収録。1970年代から1980年代のイギリスを舞台にしたロック・オペラであり、”失われた愛、世界のメルトダウン、鬱、爆弾、罪悪感、狂気の物語である。主人公の暗い気分と内なる心理を追った4部構成の劇である“とBandcampの紹介にあります。

 パンク/ハードコアの痛快さを顕示した上で壮大なスケールを獲得した作品です。トリプル・ギターの重厚なサウンドを武器にけたたましく突っ走り、異様な存在感を示す巨漢Vo.ダミアン(ピンク・アイズ)の絶唱が曲の根幹を成す。

 多用した女性コーラスが汗臭い音楽性に情緒を加え、フォーキーなアレンジやサイケデリックな要素が巧みに混合されています。なかでも、カラッとしたメロディは耳馴染みがよく、ヴォーカルを除けばインディーロック・ファンからも大きな支持を得そうです。

 抜群のスピード感と迫力のサウンドでノせまくる#2~#3と加速し、力強いミドルテンポと華やかな女性コーラスが効きまくってるパーティ・チューン#4に続く流れは見事。パワフルさと親しみやすさを同居させて昂揚感をもたらすのは、アンドリューW.K.兄貴に近い感触があります。バンドの雑食性を知的な構成によってコントロールしながら、キャッチーという部分にも気を払ってうまくまとめている。

 みなぎるパワーは後半にいっても衰えず、繊細なメロディとエネルギッシュな姿勢と共に体温をあげていく。#17~#18というご褒美のような叙情的ラストには泣かされます。実際に生でフジロックでのステージを体感したこともあって、個の壮大さに感服します。ちなみに本作は、SPIN誌の年間ベストアルバム第1位に選出。

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