【アルバム紹介】Vanessa Van Basten、雄弁な音楽物語

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アルバム紹介

Psygnosis(2009)

   イタリア出身のポストロック/ポストメタルユニットVanessa Van Bastenの全2曲22分のEP。凄まじい爆発力を備えた轟音と美しく柔らかいニュアンスのある叙情。鮮やかに移ろいゆく風景をその2つ艶やかに駆使して描く幽玄めいたサウンドスケープに心を瞬く間に持っていかれました。

 美しいトレモロやメランコリックな旋律が胸を締め付け、徐々に揺らぎをもたらすマーチングドラムが鼓動を高め、蒼き激情と共に震天動地の轟音を振りかざし、炸裂させる。

 静かにもたらされる昂揚感と大爆発と共に溢れ出す感情。明暗・濃淡・静動のグラデーションを見事に汲みつつ、緻密に打ち立て、劇的に抽出されるこの雄弁な音楽物語には脱帽する。

 聴いているうちに溢れんばかりの詩情に飲み込まれてしまいそう。収録された2曲それぞれが力強さと麗しさを備えた名曲であるのもポイントだろう。約9分と約14分の二つの世界がもたらす感動は本当に筆舌しがたい。

 VVBの音を聴いていて頭をよぎるのがPelicanの2ndアルバムであり、EITSの「All of a Sudden ~」といった作品。それぐらいのポテンシャルを感じさせる豊潤なハーモニーを響かせています。絶品のインストゥルメンタル作品。

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Closer to the Small/Dark/Door(2010)

   2ndアルバム。昨年のEP『Psygnosis』ではPelicanとExplosions In The Skyの邂逅ともいうべき轟音と叙情の塗り分けが印象的でした。その柔和なメランコリーと雄叫びのような轟音ギターに大いなる希望を感じるほど。

 本作はNadjaのようなシューゲイジング・ドローン的な要素が表立ってきていて、冷たくも暗い。それでいてオリエンタルな情感な質感も携えている。ずっしりとした重量感と美しくも冷たいシューゲイズ・ギターの先に艶めかしいメロウさが引き立っていく#2、#7はその辺りが顕著だろう。

 蒼白い炎を揺らめかせながらも、グルーヴはより強化されています。全体に耳を傾けても、楽曲に10分を越える曲は無く(ラスト・トラックは15分だが無音部分を挟んで2曲に分けられている感じ)、モグワイの『Mr.Beast』のように静と動の引き締まった展開でコンパクトになっています。轟音ギターの炸裂っぷり、メロディから発露する詩的な美しさは見事。

 アコギを用いて大草原の上を駆ける風のように軽やかな1~2分台のインストから、広大な景色を音で奏でていくPelican風の静と動の塗り分けが巧いインストまで揃えていて、本作は曲調の広さ・幅を感じる内容にもなっているのも惹かれる要因。

 サンプリング音やヴォーカルを効果的に導入し、さらに#3のようにサックスを用いた曲もあって、意外な引き出しの多さに驚かされたりもします。けれども展開は流麗さを損なわずに描き行く物語を深く拡張していくところがセンスの賜物。

 ダークな感性、アンビエントな揺らぎ、ドローン的感触、そういった様々な要素を含蓄しながら見事に昇華したインストゥルメンタルはひとつの造形美を表しているようにも感じた次第。

お読みいただきありがとうございました!
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