1996年に活動を開始したアメリカのロック/ニューメタル・バンド。全アルバムの総セールスは1億枚以上を記録し、21世紀最も売れたバンドにして偉大なバンドのひとつとして世界から支持されています。
メンバーは、チェスター・ベニントン(Vo)とマイク・シノダ(Vo,MC, Gt, Keyなど)を筆頭に、ブラッド・デルソン(Gt)、フェニックス(Ba)、ジョー・ハーン(DJ)、ロブ・ボードン(ドラム)の6人構成。
2000年に発表したデビュー作『Hybrid Theory』が空前絶後の大ヒットを記録し(累計3,200万枚以上)、03年の2ndアルバム『Meteora』も引き続きメガヒット。ラップメタル/ニューメタルの金字塔として後続に大きな影響を与え続けています。
ここ日本でもサマーソニックの2度にわたるヘッドライナー(2006、2009、※2013はメタリカとのダブルヘッドライナー)を始め、数度の来日ツアーで観客を湧かせました。
しかしながら、2017年7月20日にチェスターが41歳で死去。それからバンドは活動休止となっています。
本記事ではこれまでに発表しているオリジナル・アルバム全7作品について書いています。
アルバム紹介
Hybrid Theory(2000)
1stアルバム。全12曲約38分収録。ドン・ギルモアによるプロデュース。タイトルはリンキン・パークを名乗る前のバンド名より。
重厚なギターサウンドに激情型シャウトやなめらかな歌メロ、テクノ~インダストリアル経由の電子音、そしてヒップホップのスクラッチやラップが自然に噛み合う。
そのハイブリッドな融合はラップメタル~ニューメタルの新鋭として世界を相手に広く受け入れられました。
また、ほぼ3分台とコンパクトに設定された楽曲は急所を的確に突く切れ味を持ち、同時にキャッチーに聴かせる巧みさがありました。
先人達が培ってきた要素を魔法のようにブレンドした”イケてる感”とヒップホップに抵抗ある人たちにも効く”歌への昇華”。そしてドラッグやアルコール中毒、孤独といった人間の弱さに寄り添う歌詞もまた彼等への共感を呼びました。
新時代の幕開けを告げた#1「Papercut」と#2「One Step Closer」、チェスターのスゴさを思い知る#5「Crawling」、現在までにSpotifyで16億回再生を突破している名曲#8「In The End」といったリンキンの地位を押し上げた名曲を収録。
また本作は全世界で3,200万枚以上のセールスを記録しています。21世紀で最も売れたデビュー・アルバムとして君臨。2020年には20周年記念盤がリリースされています。
Meteora(2003)
2ndアルバム。全13曲約36分収録。引き続きドン・ギルモアがプロデュース。タイトルのMeteora:メテオラはギリシャにある修道院共同体から取られています。
デビュー作と並ぶ代表作であり、共にニューメタル/ラップメタルの金字塔とされています。基本軸をそのままに洗練されたメロディとあふれんばかりの衝動が宿る。
平均3分というコンパクトな尺に適切な味付けとキャッチーさが見事に乗ります。けれども過剰にエモーショナルを発揮していても、暑苦しすぎないスマートさがある。
その上で湿り気のある内省的な表現が熟成し、歌メロにも磨きがかかっています。
数々の人を虜にした#3「Somewhere I Belong」、リンキンのラウドの型・最強曲#7「Faint」、クールな疾走と歌が映える#9「Breaking the Habbit」、Spotifyで13億回再生を突破した屈指の名曲#13「Numb」等を収録。
ラップ・メタルの最強レシピはここに詰まっている。前作に及ばないものの本作は累計2700万枚をセールス。音楽界の寵児となった彼等の勢いを感じさせた。
こちらも20周年記念盤がリリース。そしてわたしが人生で最初に買った洋楽CDとして、思い入れのある作品です。
Minutes to Midnight(2007)
3rdアルバム。全12曲約43分収録。タイトルは世界終末時計に由来。プロデュースはマイク・シノダと共にリック・ルービンが名を連ねます。ということで変化ありです。
わかりやすい部分でいうとラップを中心としたヒップホップ要素の減少。ヘヴィ&シャウトの爆発モード#2「Given Up」は、これまでなら入ってきただろうシノダのラップがないので、さみしく思う人は少なくない。
羽目を外した#4「Bleed It Out」のような曲はありますが、全体的にチェスターによるクリーンな歌ものに重点を置き、普遍的なロック・サウンドへと寄ったつくり。
以前のような攻撃性や衝動を伴う曲はほとんどなく、ストリングスや電子音のアレンジを活かして”聴かせる”というモードに入っています。
また政治的なメッセージを発するようになったのも本作から。先行シングルである#6「What I’ve Done」はMVで表現されているように戦争や環境問題を引き起こす人間の愚かさを描いている。
当時はリンキン・パークのU2化現象みたいに思ってた人も少なくない。これまでの2作がもたらした世界的な大成功、それによる苦悩とプレッシャー。大胆なモデルチェンジには賛否が分かれました。
A Thousand Suns(2010)
4thアルバム。全15曲約48分収録。核戦争をテーマにしたコンセプト作。タイトルはヒンドゥー教の聖典”バガヴァッド・ギーター”の一節から取られています。
またその一説を後年のインタビューで引用した原爆の父・オッペンハイマーや(マーティン・ルーサー)キング牧師のスピーチをサンプリングとして利用。
前作よりも電子音による支配力が高まり、シリアスな表現にも磨きがかかっています。反対にバンドサウンドの比重が少なくなっていて、チェスターの声も素材として加工されていることが増えました。
曲によっては民族的なリズム、ポストロック/エレクトロニカの要素を注入。また意外とラップやシャウトは前作より増えているのですが、初期の雰囲気とはまた違うものです。
落ち着いた歌ものという雰囲気やロック色はかなり薄く、むしろ落ち着いて聴けない不気味さや緊張感に覆われている。
驚くのはインタールード的な小曲#7「Jornada Del Muerto」でシノダが”持ちあげて 解き放して”と日本語で言葉を届けています。
海外の批評誌ではRadioheadの作品が引き合いに出されるほど。00年代前半を無双したリンキン・パーク像を自らスクラップ&ビルドしにいく挑戦的な作品としてリスナーをふるいにかけています。
Living Things(2012)
5thアルバム。全12曲約37分収録。リック・ルービンとの共作はここまで。
本作についてチェスターがラジオで「過去にやってきたことすべてを受け入れており、過去4枚のアルバムの最高の部分を取り出して新しいレコードにまとめ上げている」と語っています(wiki参照)。
その言葉通りに”統合”という表現が似合う作品です。シャウトやラップ、躍動感が戻ってきても電子音を主体とした音作りは継続し、ここまでの集大成感があります。
4分未満の曲しか存在しないコンパクトさは初期を思わせますが、曲調はあくまで3rdや4thを経た延長上に自然なブレンドが成されている。決して回帰ではなく、やはり統合です。
エレクトロ・テイストを活かした先行シングル#3「Burn It Down」、ゲームソフトのテーマに使われた#6「Castle of Glass」、ミドルバラードの合間をラップが遊び心として挟まる#8「Until it Breaks」といった曲を収録。
国内盤の帯に書かれていた”これが新たなHybrid Theory!”はさすがに誇大広告だと思いますが、アーティスティックな姿勢とバランスを取りつつ、近年にはなかった熱気が本作には封じ込められています。
The Hunting Party(2014)
6thアルバム。全12曲約45分収録。本作よりセルフ・プロデュースです。
タイトルはロックのエネルギーと魂を取り戻すためのパーティに例えたものだそうですが、初期よりも激しく暴れて叫ぶ曲が多い。端的に表すとやんちゃでエネルギッシュ。
感触としてはメタルというよりハードコア。直近3作を踏まえるとバンド・サウンドへの回帰に嬉しさを覚える人は多そうです。エレクトロニクスを味付け程度に抑えて、とにかく肉体的な仕上がり。
そしてヒップでホップも忘れてない。しかし、過去を取り戻したというよりは新たな覚醒の方がニュアンスとして近い。
それを引き出した要因のひとつが90年代を担った多数のゲストたち。Helmetのペイジ・ハミルトンやSOADのダロン・マラキアン、そしてトム・モレロとラッパーのラキムが参加しています。
熱気や即効性を重視しながらも、クールな構成と耳をひきつけるメロディがしっかりと浸透。なかでも壮大なハーモニーが引き立つ#11「Final Masquerade」は、攻撃的なアルバムの中で存在感を放っています。
One More Light(2017)
7thアルバム。全10曲約35分収録。引き続きセルフ・プロデュース。前作を考えるとずいぶんと思い切った変化で、ロック・サウンドから距離を置いています。
初めて女性ヴォーカリストのゲスト起用となるKiiaraとの#6「Heavy」の発表、外部作曲家を招いたこと、全曲で最初にヴォーカルから録音するなど新たな試みが多数あり。
現代トレンドとなっているポップス要素を貪欲に取り込み、R&B~エレクトロを下地としたサウンドとチェスターの声が聴き手に寄り添ってくれます。
反対にシャウトやラップを魔封波し、ヘヴィなギターは入れないという制約を設けている。ボーイズグループに近いポップな取り組みですが、歌詞はやはり内省的で重みがある。
それでも表題曲#9「One More Light」にある”もしまた明かりが消えたら、誰が気にしてくれるだろう? 私は気にかけているよ”という尊いメッセージが沁みます。
作品はやはり賛否両論で、偉大なバンドが偉大なままあり続けることの難しさを示している。そして本作発表から2ヶ月後にチェスター・ベニントンが死去。以降は活動休止となり、現時点では最後のアルバムです。
どれから聴く??
興味がわいたけど、リンキンパークはどれから聴けば良いの?
やはり後続のロック/メタルに加え、ストリート勢にも大きな影響を与えた1st『Hybrid Theory』と2nd『Metaora』の2作品をぜひ聴いてほしいですね。リンキンパークの音楽がいかに凄かったか。影響を与えたか。自身で感じ取っていただきたいです。