【アルバム紹介】MIYAVI、世界を相手にするサムライギタリスト

 ヴィジュアル系ロックバンド、Dué le quartzの元ギタリストであり、現在はソロアーティスト兼俳優としても活動する。”サムライ・ギタリスト”の異名を取り、スラップを多用した特徴的なギター・プレイを軸に世界各国で名を馳せせます。2022年に結成されたTHE LAST ROCKSTARSのメンバーのひとり。

 本記事では7thアルバム『WHAT’S MY NAME』~10thアルバム『Fire Bird』について書いています。

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アルバム紹介

WHAT’S MY NAME(2010)

 7thアルバム(インディーズ2作+メジャー5作)。EMI Music Japan移籍第一弾で”再デビューアルバム”と謳った作品。久しぶりに聴いてみたら、敏腕ドラマーBOBO氏(54-71)を引き連れた2人体制での制作になっていて驚きます。

 エレアコをベースのスラップ奏法で叩き弾く独創性は最大の武器ですが、MIYAVI氏は歌も非常にエモーショナル。

 そこに鋭くも重量感を備えた正確無比なドラミングのBOBOさんがぶつかり、重なり、結合してすさまじい破壊力と熱気を連れてきます。2人の火花散るギリギリの攻防がどの要素をとっても一級品。

 灼熱のセッションを思わせる強烈な楽曲(シングルとなった#2,#14など)が本作のイメージを決定づけていますが、ヒップホップやファンク色を独自の視点で切り取った曲、ちょいと過去を思わせるスロウテンポのバラード等を挟むなどでバリエーションは広め。

 一発録りによって予想以上の勢いをもたらしているようにも感じますし、ヒリヒリとした焦燥感も伝わります。

 これまでのキャリアから己を見つめ直す、と同時に音楽家としての飽くなき探究心が、シンプルながらもリアルな衝動をもたらしてくれる渾身の作品。

 型を逸脱する事を恐れぬ心・凄まじい情熱にも頭が下がるし、”日本人がやるべき音楽”を意識・追及した本作はジャンルやシーン、それに国を越えて聴かれてほしいものです。

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MIYAVI(2013)

 8thアルバム。本格的に世界デビュー進出作となるセルフ・タイトル。

 BOBO氏(54-71)との2人編成で血沸き肉踊るようなサウンドが印象的だった『What’s My Name』から、KREVAやYUKSEK等の対戦型コラボレーション・アルバム『SAMURAI SESSIONS vol.1』を経て大胆にEDMを取り入れた作風。

 先行シングルとして発表した#9「Ahead of The Light」や#10「DAY 1」は、ダンサブルな躍動感を増したことやエレクトロの煌いた装飾が、新たなファンを掴む武器。

 しかしながら火花散らす楽器陣のアンサンブルが好きだった身からすると、エレクトロ要素が目立ちすぎてて以前ほどのグルーヴ感が無くなった様に本作は感じます。

 BOBOさんのドラムが引っ込み過ぎじゃないかと思えてしまい、2人の掛け合いが最高の興奮を生んでいた前作から比べると、体に直に訴えかけてくる感じではないかなあと。

 ただワールド・ミュージックやR&Bっぽい新しいアプローチが機能しているのは確かであり、#4「Secret」や#5「Cry Like This」辺りはブラックミュージックの影響も感じさせます。

 それでも、サッカー応援ソングっぽい#2「Horizon」の躍動感は強烈だし、#7「No One Knows My Name」は本作でかなりのインパクトを誇る。世界で戦うために彼は挑み続けます。

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The Others(2015)

  9thアルバム。前作から再び変化。グラミー受賞のプロデューサーを迎えてのLA録音と、”世界で戦えるカッコいい音楽”を模索して形にしていく意欲に本作はあふれています。

 今回で言えばダンス&グルーヴィなロック~パーティ・チューンの炸裂。シンセを控えめにして、その分をR&Bやファンク等の要素で補強し、 ギターをテレキャスターに持ち替えて攻めます。

 #1「Cruel」から#4「Alien Girl」までの流れだけでも変化が著しい。グラミー感のあるロックに照準を合わせていて、#5「Let Go(2015ver)」もアメリカンな装飾とグルーヴで盛り上げます。

 彼の代名詞であるスラップはあえて登場回数を減らしてますけど、シンプルに体を揺さぶるサウンドは新しいMIYAVI流オレ様スタイルをしっかりと刻んでいます。

 特にその傾向が表れた表題曲#9「The Others」は、テレキャスの鳴りとメッセージ性の強さが感じ取れますね。

 The MusicのVo.ロブ・ハーヴェイが参加した#8「Unite」は踊れる要素を押し出していますが、サウンド的には一番これまでのものに近いかも。#6「Odyssey」で久々に日本語詞が飛び交うのも新鮮。

 ただ、やっぱり前作に続いて『WHAT’S MY NAME』ほどの衝撃はないと感じるのが本音です。あの作品は本当に衝撃的すぎたので。ボーナストラック的な位置づけで電気グルーヴの「Shangri-La」のカバー収録。

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Fire Bird(2016)

  10thアルバム。“NEW BEAT, NEW FUTURE”をテーマにし、これまた大胆な変化だこと。本作ではスラップギターにこだわってなければ、自身の歌にも固執していませんし、BOBOさんがドラムを叩いてない曲もあります。

 EDMを取り入れた前々作『MIYAVI』が近い作風ですが、女性ヴォーカルを過剰気味に投入。そしてMIYAVI氏自身はギタリストに比重を置き、テレキャスターを鳴らしまくっています。

 歌を重視せず、ギターで自由に歌ったり叫んだりというインパクトは確かに強いです。全体的にはダンス・ミュージックとしての機能性が近作でも一番に高く、電子音とギターの絡みはグルーヴィで情熱的。

 表題曲#2「Fire Bird」はMVで手塚プロダクションとコラボしていますが、本作の特徴が集約した1曲になっています。

 快楽的なビートは心地よく、それにブラック・ミュージックやR&B的なテイストがクールに表情を整える。

 #6「Afraid to Be Cool」はその辺りが顕著かと。ラストトラックの#10「Hallelujah」はいい意味で和洋折衷の味。世界を相手取るために変化を続けるミヤヴィズム、決して立ち止まりません。

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プレイリスト

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