【ライブ感想】2010/03/04 ISIS & Baroness @ 名古屋クラブクアトロ

 ヘヴィロックを求道する2バンドが日本襲来。 ハードコアや哲学的なコンセプトを拠り所に進化し続ける孤高のバンドであるISIS。そしてヘヴィロックやメタルを基盤として、ブルースやサイケ、プログレ等のエッセンスを加味したサウンドで着実に認知を高めているBaroness。

 世界各地で絶賛されるライヴパフォーマンスを武器に登りつめてきた2バンドの共闘は、観客の恐ろしいぐらいの少なさにも関わらず、予想以上に壮絶なものとなりました

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ライブ感想

Baroness

 先手はバロネス。先に結論を言えば、驚愕で見事なパフォーマンス。年間200本を越えるというライヴでストイックに鍛え上げてきた力は伊達じゃない。

 ダイナミックで力強い演奏、歌と絶叫によって生み出すのは体の芯からくる熱です。その上で”泣き”がしっかりと楽曲ごとに貫かれている。破壊力と芸術性の備わった新たなヘヴィロックの創生。”ヘヴィロック+プログレ”という凡庸な例えでは到底辿り着けないデザイン性とアート感覚があります。

 特に中盤に披露された「The Birthing」でのテンポチェンジを繰り返しながらリフによる砂嵐が猛烈に襲い掛かる様は圧巻。陽気さと爽快さをも詰め込んだ「A Horse Called Golgotha」では、縦横無尽に乱舞する勇壮なリフと繊細なメロディ・ラインの蠢きが自在の緩急で衝突して、きっちりと化学反応を起こしていたのも印象深い。

 また前述した渋い哀愁を感じさせるブルージーな”泣き”のハーモニーが所々に配され、過剰なまでに劇的な展開を支えるスパイスとなって機能していました。大波小波の熱波が絶えず襲ってくる中で、時に胸をギュッと掴まれた感覚になるのもそういった繊細さにホロリとさせられるからでしょう。

 後攻のアイシスと比べると熱気のあるライヴで盛り上げてくれました。熱の高まりも、涙腺の緩みもパワフルなステージの前では当然なことなのかもしれません。芝刈り機じゃないバロネスも本物ですよ。

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ISIS

 バロネスの喧騒が冷めやらぬステージ上を見回すと、いつの間にかアイシスの面々がこれまでと変わることなく、自らの機材のセッティングをしている姿が目につきます。楽器を丁寧に調整している様子に、これからどんなステージが繰り広げられて行くのか? という期待値が高められていく。

 しかし、メンバーのたくまし過ぎる表情があまりにもアスリート然としていて、近寄りがたいと思わせるぐらいの集中力を感じさせます。ミリ単位で音を研ぎ澄まし、会場に合わせた音色を嗅ぎ分ける感覚も職人であり、壮大な音を生み出すのもこういった初動が大切であることを改めて思い知らされる。

 幕開け。最新作『Wavering Radiant』からの出典がメインですが、ツアー初日であった去年のleave them all behindと比べると、格段にダイナミックな力強さとしなやかな麗しさを増しています。重厚なリフも、たおやかな表情さえ見せるベースも、的確に先導するドラムも、深遠な雰囲気を助長するキーボードも、歌と絶叫のコントラストがくっきりしたヴォーカルも、あの作品を表現しきる上での”気”が存分にみなぎっていました。

 もちろんバロネスの様に盛り上がる感じではないですが、精神面で揺さぶられるものがある。緻密なアンサンブルから細やかに一音一音を配し、密接に結びつけ、共鳴しながらドラマティックな大爆発へと持っていく。ライヴでこそ最大限に増幅されるダイナミズムは、体感3度目ですが他バンドとは一線を画す凄まじさがあります。

 ヘヴィネスの奥深さを知り尽くしたアイシスだからこその極限値。気づけば業深い世界の前に陶酔しきっている。もの悲しいトーンのギターをループからクライマックスにて轟音と激情を放出する「Carry」は特に印象的。

 「Celestial」の最後の最後でお客さんにギターを弾かせ、エフェクターをなぶり続けたアーロン・ターナーにも強い印象が残っている。また彼の最後に放った”アリガトウ”という言葉にも。戦慄と至福。それを表現する人たちは意外と人情派の一面がある。

—setlist—
01. Hall Of The Dead
02. Hand Of The Host
03. Holy Tears
04. 20 Minutes/40 Years
05. Ghost Key
06. Wills Dissolve
07. Threshold Of Transformation
08. Carry
09. Celestial

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お読みいただきありがとうございました!
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