【ライブ感想】2013/06/06 James Blake @ 名古屋ダイアモンドホール

 斬新かつ衝撃的なデビュー作で、世界に求められる存在となったジェイムス・ブレイク。ここ日本でも2011年10月の東名阪ツアーや昨年のフジロックで大きな爪痕を残し、20代前半という若さながら既に確かな地位を築いています。そんな彼の2度目となる名古屋公演は、前回からキャパを広げたダイアモンドホールで開催。名古屋で1000人強クラスの会場を埋める海外アーティストは、少なくなってきているのが現状なので人気の高さが伺えます。

 開演時間から10分ほど押した19時10分、JBとライヴ・メンバー2人の計3名が登場。ピンと張りつめた緊張感の中で「Air & Lack Thereof」でスタートさせ、冒頭の美声が象徴的な「I Never Learnt To Share」で会場中をあっさりと引き込んでいく。しなやかな電子音と歌声のループ、体にドスンと響く重低音。これぞジェイムス・ブレイクというべき世界が早くも広がりましたた。独特の揺らぎと奥行きのある音像は心地よい陶酔を誘う。

 セットリストは全世界を魅了した傑作の1stアルバム『James Blake』、この春に発表した2ndアルバム『Overgrown』を織り交ぜて進行。『Overgrown』では、自身の歌の魅力をより引き出した作品として評価されているようだが、実際に生で体感するとかなりライヴ映えする曲が多い。

 それは低音の効いたリズムがもたらす強烈な振動に全身を揺さぶられた「Digital Lion」、「Voyerur」が印象的だからでしょうか。シンガーとしての進化をみせつける「Overgrown」にしてもスタジオ音源とは別の魅力を浮かび上がらせる術は、あの若さにして職人気質。ライヴを通すことで、すごみがより伝わってくる。

 けれども、遠い世界にいるようなジェイムス・ブレイクが曲間のMCでは、下界に降りてきたように会場とコミュニケーションを図ったりしていて、そのギャップには驚かされました。前回の来日ツアーの時は、こんなにしゃべってませんでしたが、それもライヴをこなしてきたことでの成長なのでしょう。

 後半ではアレンジの加わった「Unluck」から「Limit To Your Love」の流れが秀逸。ライヴ・メンバーを紹介した後に演奏した本編ラストの曲は「Retrograde」で、ぼんやりと光る深海の底から届くような美しい歌声が、静かに会場中を魅了。”アリガトウゴザイマス”と深々とお辞儀をして、一旦ステージを後にする3人には万雷の拍手と声援に包まれていました。

 大きな期待に応えて、アンコールは2曲。シューゲイザーばりの音の洪水に包まれる「ザ・ウィルヘルム・スクリーム」を演奏し、前回の来日時と同じジョニ・ミッチェルのカバー曲の「ア・ケース・オブ・ユー」で締める。「ワン・ツー、イチ・ニー」と呼吸を整えてから、しっとりとした鍵盤の旋律に寄りそう様な優しくも力強い歌声が会場中に響きわたる。それは静かな幕引きではあったが、彼の持つ芯の強さと情熱を感じる人も多かったことだろう。

 徹頭徹尾、全くブレなかったジェイムス・ブレイクの世界。計り知れない才能を丹念に磨いてきた彼だからこそできる、実に見事なライヴであった。

—setlist—
01. Air & Lack Thereof
02. I Never Learnt To Share
03. To The Last
04. Lindisfarne
05. I am Sold
06. CMYK
07. Our Love Comes Back
08. Digital Lion
09. Unluck
10. Limit To Your Love
11. Klavierwerke
12. Overgrown
13. Voyerur
14. Retrograde

—Encore—
15. The Wilhelm Scream
16. A Case of You

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