作品紹介
rain falling to the sea at night/asea(2015)
2015年に産声を上げた静岡県浜松市の男女3人組(ギター、ピアノ、ドラム編成)。こちらは名刺代わりの両A面1st シングル。公式サイトでは”アンビエントロック・バンド”と自らを表現しているが、彼等が鳴らす神聖で美しいインストゥルメンタルには恐れ入りました。
いずれの2曲も”海”をテーマに掲げており、明確なストーリーに沿った形で書き下ろされたものだそう。ライヴを拝見した際には、ギターの方がSigur RosやMONOといったバンドの影響を口にしていました。その真摯な表現は、確かに先人達に通ずるものといえるでしょう。
8分を超える#1「rain falling to the sea at night」は、それこそMONOを思わせる楽曲で情緒豊か。ギターや鍵盤を中心にグロッケン、ストリングスが絡み壮大な物語を描き出す。タイトル通りに夜の海に降る雨は冷たい悲壮感を湛えたものだが、やがては激しい波音を思わせる轟音パートへと突入していくことになる。
とはいえ単なる音圧合戦に持ち込むわけではない(そういうのが得意という感じもないし)。そこではカタルシスを味わうとともに、優しさや希望がもたらされるようになっている。あまりに美しい1曲。
そして#2「asea」は、1曲目から繋がるような形で朝を迎えた印象を受ける。静かなピアノの旋律が視界をパッと開かせ、関西のアコトロニカ・ユニットのCojokのメンバー2人がコーラスとギターでゲスト参加することで荘厳さに拍車をかけていく。ゆえにクラシカルな印象すら残しますが、時間の経過とともに虫眼鏡で集めた光のような力強さを得ると同時に、聴き手の背中を押してくれるようなポジティヴさがある。
本CDに収録された2曲は、共にinyouのyoutubeチャンネルでフル試聴可能。そこではストーリーの基となる詞を掲載しており、創り手と聴き手のイメージの共有を図ることで深く没頭することができる。ライヴ補正もありますけど、inyouの誠実な表現はとても良いです。