【定期更新中】2025年に読んだ本一覧

 2024年版に続き、2025年も継続して同内容のものを新たに定期更新していきます。2025年版は読んだ本一覧とし、基本的には読了したものを全部載せていきます。近い内容のことはX(旧Twitter)に書いたりしますが、ここでしか書かないこともあるので、お時間あるときにお読みいただければ幸いです。

 ”読書のお供に”なんて言うつもりもありません。こういった本を読んでるんだと知っていただければ十分です。

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2025年読んだ本一覧①

宮崎拓朗『ブラック郵便局』

 ブラックのレベルが想像よりもはるかに上過ぎて、そのひどさに唖然となる。無理ゲーなノルマ、ハラスメントに寛容、内部告発者潰し、局長会の闇、政界との癒着。逆コンプリートっぷりがヤバい。あぶりだされていく闇を知るためにページを進める手は止まらないが、郵便局でこれから働こうとする人を止めたくなる。

郵政の取材を始めてから4年がたとうとしていた。この間に目の当たりにした出来事を思い返すと、無力感が混ざったような怒りが込み上げてきた。保険の不正販売問題で多くの高齢者が不利益となる契約を結ばされたのも、郵便配達の現場で精神のすり減るような労働管理が行われているのも、もとをただせば厳しい経営環境が背景にある

『ブラック郵便局』p235より
新潮社
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宮崎恭一『呼び屋一代』

 弊音楽ブログにいらして下さるような人には、”呼び屋”とは何かはパッとわかると思いますが、本書はザック・コーポレーションを立ち上げたことで知られる音楽プロモーター、宮崎恭一氏の半生をつづったもの。

 これから人気になるだろうアーティストを嗅ぎつける嗅覚や招聘する肝っ玉には感嘆します。ただし、著者の個人史に惹かれないと読み物としてはおもしろくない。アーティストの裏話とかゴシップとかどうでもいいと思ってますしね。また、呼び屋のノウハウ的なことが書かれているわけでもないです。

近藤康太郎『「あらすじ」だけで人生の意味が全部わかる世界の古典13』

古典を読むとは、心の中に深い穴を掘る作業だ。地面にシャベルで、なるべく深く穴を掘るとしたら、どうするだろうか。狭い半径に労力を集中し、深く掘る? だめだ。小さな半径の狭い穴で深く掘ることはできない。とてつもなく深い穴を人力で掘ろうとするなら、かなりな大口径の穴を、こつこつと、飽きずに掘り続けるしかない。広く浅く、と人はいう。実は逆なのだ。狭く掘る人は、浅い。 広く掘る人こそ、深い。古典で深い穴を掘ろうと思ったら、なんでも雑食で読まなければならない

『「あらすじ」だけで人生の意味が全部わかる世界の古典13』より

近藤康太郎『文章は、「転」。』

 よく読んでいる近藤康太郎氏の文章本。『三行で撃つ』に続いて往復ビンタ喰らいまくる内容で、自分は全然ダメだと思わされます。ですが、相変わらず読ませる/タメになるおもしろさ。”自分が書いた文中に潜む妖怪を退治しろ”とはいいますけど、その妖怪を見つけるのが自分で書いているから難しいんですよ。誤字脱字、重複表現、繰り返し、文末表現・・・etc。甘くなっちゃうし、眠いし(笑)。

音楽を、まるで死体解剖でもするように、和音の成分、リズムの構造を解説したところで、それで「音の魅力」は伝えられない。音を細かに分析するのではない。逆に、音から受けた自分の印象のほうを、細かに、丁寧に、死体解剖するように、明晰に書く。音そのものを、正確に描写しようとしても、できない。だからこそ、印象を書く。自分の心の「動き」を書く。自分の感情がどう動いたか。自分の感性が、どう変わってしまったか。

『文章は、「転」。』より
フォレスト出版
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チャールズ・ブコウスキー『ブコウスキーの酔いどれ紀行』

 1978年に当時58歳のブコウスキーがドイツとフランスを訪れた時のことをつづった紀行作品。相変わらずブレーキかけずに飲んでるし、酔っぱらってる。そして皮肉ってる。”師や教祖になりたがる作家が多すぎる(p88)”という文言はごもっとも。

人生は耐え難いものだということは紛れもない事実で、ほとんどの人間はそうじゃないふりをするように、むりやり教え込まれているだけだ。たいていの場合、大多数の人間は、すべてが正常で楽しいというふりをしながら、日々を過ごし続けている

『ブコウスキーの酔いどれ紀行』p161より
著:チャールズ・ブコウスキー, 翻訳:中川 五郎
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チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』

 この記事は読んだものが新→古い順に並んでいるのですが、これでブコウスキーは今年に入って3冊目です。

 著者の分身であるヘンリー・チナスキーの20代の生活編。職にありついては辞めを10回ぐらい作中で繰り返します。その辞める理由が気分、嫌な奴、女性、酒、そして盗みといろいろ。その日暮らしムーブ過ぎるし、相変わらず酒と女関係、たまにギャンブルのエピソードに事欠かない。

 だからこそ生きていく/生き延びる可能性は誰にでもあるといいたいのか。ただ、彼は決して流されない。

必要なのは希望だ。希望がないことくらい、やる気をそぐことはない。おれはニューオリンズでの日々を思い出した。書く時間欲しさに、一日五セントのキャンディ二本で何週間も暮らした。でも、空腹がおれの芸術を高めることはなかった。かえって邪魔になっただけだ。人間の魂の根本は胃にある

勝手に生きろ!』P76より
著:チャールズ・ブコウスキー, 翻訳:都甲 幸治
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金谷啓之『睡眠の起源』


 眠りは生命維持装置なのか。睡眠が睡眠圧と体内時計で調整されていること、眠りの遺伝子の話、意識とは何かといった内容等、おもしろかったです。1964年に11日間264時間断眠したというギネス記録を打ち立てた若者の話も載っていますが(脳への深刻な影響は出てないそうですが)、やっぱり眠るのは大事ですよ。

睡眠とは何か – それは起きている間に蓄積したものを解消する行為、なのだろう

睡眠の起源』P177より

私たちヒトは、命の充実を、起きている時間に求めようとする。私たちの考える〝幸せ”は、覚醒中に体験する出来事がほとんどだ。なりたい職業に就いて活躍したり、旅行で行きたかった場所を訪れたり、家族との大切な時間を過ごしたり、素晴らしい芸術作品を目の当たりにして感動したり。覚醒中にどんなことを見聞し、何を感じ、何をするか。意識下の経験に、生きる意味を見出している

睡眠の起源』P176より
著:金谷 啓之
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チャールズ・ブコウスキー『詩人と女たち』

 自らの分身であるヘンリー・チナスキーが一人称で語る私小説。50歳を過ぎた詩人男性が酒飲んで、ひたすら表れる女性と次々と性的関係を結ぶ。全部で515ページありますが、400ぺージぐらいはその話。だけど、その中に物書きとしての矜持や哲学的な言い回しがたまにでてくる。

わたしは酒をグラスに注ぎながら、これこそが飲酒の問題点だと思った。何かひどいことが起こると、忘れようとして酒を飲む。何かいいことが起こると、お祝いだと称して酒を飲む。そして何も起こらないと、何かを起こそうと酒を飲む

詩人と女たち』p295より
河出書房新社
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チャールズ・ブコウスキー『死をポケットに入れて』

 氏が亡くなる2~3年前の日記をまとめたもの。というよりはエッセイ。競馬場に行くと言葉が出てくるという謎のライフハックを始め、女性と酒の話も尽きませんが、書くことや死についての哲学に惹かれます。

わたしは誰と競い合っているわけでもないし、不朽の名声に思いを巡らすようなこともまったくない。そんなものはくそくらえだ。生きている間に何をするかが問題なのだ。行動と挑戦の中にこそ栄光はあるのだ。死などどうだっていい。大切なのは今日、今日、今日なのだ。まさに然り

死をポケットに入れて』p119より

わたしたちは紙切れのように薄っぺらい存在だ。わたしたちは何割かの確率で訪れる運に頼って一時的に生きているにすぎない。このかりそめだという要素こそ、最良の部分でもあり、最悪の部分でもある。そしてこのことに対して、我々は何ら手出しができない

死をポケットに入れて』p121より
著:チャールズ・ブコウスキー, イラスト:ロバート・クラム, 翻訳:中川 五郎
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ハン・ガン『菜食主義者』

ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)―3人の目を通して語られる連作小説集。

著:ハン・ガン, 編集:川口恵子, 翻訳:きむ ふな
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窪田新之助『対馬の海に沈む』

 JA対馬で起きた22億円超の横領事件。そのJA対馬で”神様”と称えられた営業マンが対馬の海に身を投げた。人口3万人弱の離島・対馬で、そんなわけあるかいなと懐疑的に思われる営業成績をあげ続けたカラクリとは。巨大組織の闇。おらが村の秘密。衝撃的かつ面白いです。

いまだに自らの罪をさらけ出し、罰を受けようとする者はいない。それどころか故人を腐すことで、自らの身を守ろうとする人たちがいる。「死人に口なしとは、このこと」という言葉を、取材を始めてから何度聞いただろう。深く重い沈黙が、国境の島と巨大組織を覆っている

対馬の海に沈む』より
著:窪田 新之助
¥2,310 (2025/04/19 17:16時点 | Amazon調べ)
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お読みいただきありがとうございました!
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