【定期更新中】2025年に鑑賞した映画一覧

 2024年に引き続き、2025年に映画館で鑑賞した映画の感想置き場です。2024年は23本でしたが、今年は1週間に1本ペースで年間50本ぐらいを目標に観ていきたいものです。

※ 鑑賞したのが新→旧の順で掲載

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2025年に観た映画一覧①

ジョニーは戦場へ行った

 戦後80年を考えるということで、観ていなかった名作を鑑賞。しかしながら、頭10分過ぎぐらいで一気にキツいってなりますな。戦争に行った青年。ポスターにある通りに体と感覚が砲撃によってほぼなくなるも、意識と命だけがかろうじてある生きる肉魂。病院に行ってから哀しみと絶望だけがある病室での今がモノクロで表現され、楽しかった思い出や浮かぶ空想がカラーで映し出される。でも、どんな姿・形になろうとまだ彼は人間である。

 伝聞通りに何回も観れる映画では無いぐらいに重いですが、一度も観ないわけにもいかない。しかしながら、各地で争いは今でも無くならない。

【終戦80年企画】映画『ジョニーは戦場へ行った』4K 予告編【8/1(金)公開】
著:ダルトン・トランボ, 翻訳:波多野 理彩子
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黒川の女たち

 第2次世界大戦敗戦後の満州で村人たちの命を守るため、犠牲になった女性たちの史実。とにかく重い内容です。苦しみも痛みも伴います。でも希望が見えます。観るべき作品ですし、知らなきゃいけないこと。近かろうと遠かろうと、こうした人々が重ねてきた歴史の上で今の自分たちがあることを改めて思う。なかったことにしなかった。とんでもなく辛いことがあったのにも関わらず100歳近くまで生きた。そんな当事者たちの強さに驚嘆。

 当事者の息子の方が仰っていた「開拓団は日本の縮図。反省しないまま終わっている。誰も戦争を総括していない」という言葉が心に残る。そして、この黒川開拓団をテーマにした授業を受けていた女子生徒の「自分たちが目を背けるのも問題」も発言も合わせて。

 鑑賞回は、松原監督の舞台挨拶付き。映画制作のきっかけ、当事者を看取ったことなどを話したあとにQ&Aコーナー。私の座席の前で鑑賞していた方が質問されたのですが、その方は家族4人でいらしていて、お子さん2人がどちらも10歳未満に見える。なんでも黒川近くの出身らしく、映画の出演者のほとんどを知っているとか。だから家族で鑑賞して、この史実を伝えたのかと感心してしまいました。

映画『黒川の女たち』予告編

私たちが光と想うすべて

 インド映画ですが、気分アゲアゲで景気の良い大仰な歌や踊りはないですが、静かに誰かの大切なものになる。そんな作品でした。タイトルがとにかく良いですよね。主人公2人はわりと対照的な性格(陰と陽、真面目と陽気って感じ)をしているのですが、そんな現代のインドに住む女性たちの生活、恋愛を繊細に切り取っていく。途中で”夢の街と呼ぶ人もいるけど、私はそう思わない。ここ(ムンバイ)は幻想の街だよ“っていうナレーションがかなり印象に残っている。

 ダイノジ・大谷ノブ彦氏の映画会にて鑑賞。2回目の参加でしたが、大谷さんのトークが冴えまくる。所々でユーモア入れつつ、シーンの細部とストーリーの大局の両方を丁寧に紐解きながら解説してくれて楽しませてくれました。ムンバイの人工的な光と田舎の自然光、序盤のシーンにあった入院してたおばあさんの話から終盤のおじさんでの伏線回収など。大谷さんが解釈したこの映画の”光”、確かに!と納得するものでした。また参加したいですね。

7.25公開『私たちが光と想うすべて』 予告編

サタンがお前を待っている

 ホラーではなく、社会派ドキュメンタリーです。80年代に一冊の著書『「ミシェル・リメンバーズ」』を発端にして起こった「幼い頃、悪魔崇拝の儀式の生贄に捧げられた」という告発が相次いだ北米の”サタニック・パニック”を追ったもの。

 時代が変わろうが、ネットやSNSがあろうがなかろうが、人間は信じたいものを信じる。デマが巻き起こす集団ヒステリー。本当かどうかもわからない”真実”に目覚めてしまう。それは今も続いている。先述した本の出版にはキリスト教も資金提供して噛んでおり、当時ブームが起こっていたためマスコミ/ワイドショーもどんどんたきつける。こうした背景もパニックを加速させた。

 人間を狂わすのは愛、権力、金。これが本当のサタンか。そしてやっぱり悪魔の音楽といわれるヘヴィメタル(1分ぐらい言及するシーンがある)。

【本予告】『サタンがおまえを待っている』8.8[Fri]公開

顔を捨てた男

 『サブスタンス』と同様に薬で美しい容姿を得ることに成功し、新たな人生を謳歌できるようになった主人公。仕事、名誉、そして女性。かつて手に入れられなかったものも手にできたのですが、突如として過去の自分の顔と似た醜男が表れ、順調だった新たな人生に狂いが生じていく。

 外見か中身か。その問いを突き付ける作品ではありますが、これまでに自分を形成してきた過去はなんだかんだ切り離すことはできない。終盤は何あのターボってぐらいに転落アクセルを踏み込む。醜男に言われてしまう最後のセリフも皮肉が効いてて良いです。

【7.11公開】映画『顔を捨てた男』本予告_A24×主演セバスチャン・スタン | 理想と現実が反転する不条理劇

フォーチュンクッキー

 アフガニスタン移民でアメリカに逃れる前は祖国の元米軍基地通訳だった女性が主人公。勤務先であるクッキー工場(この名前がフォーチュンクッキー)や精神科医とのカウンセリングを通して、彼女の痛みや孤独が浮かび上がる。祖国に対する罪悪感を持つ中でも前へと踏み出していくのですが、フィルムが捉えるそのまなざしは優しい。味わい深い作品。

 クッキー工場の中華系オーナーが言っていた『美徳は中庸にあり』が印象に残っている。原題:フリーモントはアメリカ・カリフォルニア州の都市。移民の多い街で、作中にも出てくるようにアフガニスタンや中華系の方々が多いとのこと。

映画『フォーチュンクッキー』予告編|2025年6月27日(金)公開

無名の人生

 東北の団地にひっそりと暮らすいじめられっ子の孤独な少年が、ある転校生と出会い、かつての父親の背中を追ってアイドルを目指すところから始まる物語。と序盤に認識はしたけど、それは本当に一部分に過ぎず。昨今に社会問題となった出来事を風刺しつつ、主人公となる語らない男はいくつかの名前と共に人生を振り回される。全10章100年。自己とは何か。名前が人生を規定していくのか、否か。ラストはとんでもないところまで飛躍するSFでたまげました。アニメを独学で学び、1年半をかけて個人制作した鈴木竜也監督の執念を感じる作品。

『無名の人生』予告編

サブスタンス

 年齢を理由に番組降板を告げられた50歳女優が、もう一度輝きたいと禁断の新薬「サブスタンス」に手を出す。試してみると若さと美貌を備えたもう一人の分裂を生み出し・・・。ルッキズムやエイジズムというテーマは一貫していたと思いますが、確かにかわいいは暴走していた。そして終盤15分ぐらいでトップギアに入ってからはグロテスクの暴走、血の海、とびっきりの醜。まさしく地獄絵図でした。こんな着地するのかよと。

↑観に行くと本当にこうなります。とんでもないものが映ってる感覚。

教皇選挙

 タイムリーにも現実世界でもコンクラーベ(教皇選挙)が行われている時期に観ました。事前にXで”ジジイが揉めてる映画が何でこんなにおもしろいのか!”みたいな情報を拝見したのですが、たしかにずっと揉めてる。あと120分ある物語のうち、ジジイ占有率が110分ぐらいあってスクリーンが華やかにならない。それでもおもしろい。目が離せない。

 聖職者とはいえ、私利私欲や権力という魔物に蝕まれている。コンクラーベの中でそういったスキャンダルで失脚していく人間多数。清廉潔白な人間など存在しないのだと言わんばかり。”野心とは神聖をむしばむだ”という言葉が印象に残りました。

監督:エドワード・ベルガー, Writer:ピーター・ストローハン, 出演:レイフ・ファインズ, 出演:スタンリー・トゥッチ, 出演:ジョン・リスゴー, 出演:イザベラ・ロッセリーニ
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